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ECも注目すべきリアルで付加価値を高めるべき理由

リアルはいかにして価値を高めるかのヒント
リアル拠点もその役目を転換する時がきていて、各所にその工夫の跡が見られます。まずは「ザ・スーツカンパニー」。もう一つは「東急歌舞伎町タワー」。

まず「ザ・スーツカンパニー」は先日、記者会見でそれまでの方向性を変えていく事を明らかにしました。僕が向かったのは銀座店ですが、驚いたのはそのサイズ。以前もこの場所に「ザ・スーツカンパニー」があったものの、面積は約半分。もともと2フロア構成で約240坪ありましたが、112坪(1フロア)に縮小していました。 「ザ・スーツカンパニー」といえば、スーツという「お硬い」イメージからの脱却を果たしました。2プライスのわかりやすい価格をライトに提案して風穴を開けましたが、それも20年ほど前の話。今、その転換を余儀なくされています。

表向き、屋号を「スーツスクエア」に一新するといっていますが、全く違う形での提案を目指しています。新たに店内を埋めるのは「ザ・スーツカンパニー」だけではありません。同ブランドの成長に合わせて、立ち上がった「女性向け」や「オーダーメイド」などの新ブランドもあります。合計4ブランドが一つの店舗に集約されるから「スーツスクエア」。店自体は、幅広い層に呼びかけて多様性を謳い、顧客体験を深掘りする空間へと転換します。

ECの要素をテコにリアルの深掘りに繋げる意味
フロア面積が減少し、複数ブランド展開すれば、勿論、店内の商品数は減ります。だから、至る所にデジタルサイネージを設置しています。ここでECと連動させて、タッチパネル式で商品の種類をそこで把握して、提案に繋げます。

またこの裏側では、ECと各店舗での在庫を一つで捉える必要があります。一つになった在庫を起点にリアル、ネットに関係なく振り分けていけば、必要に応じて受け取ることができます。リアル店舗はその意味で、受け取り拠点になりますが、今までのように「売る場所」ではなくなったのです。だから、自ずとスタッフは試着や接客を重視して、体験価値を向上させる事に意味を見出すでしょう。逆説的ですが、そうなると別にフロアの面積が広ければいいのではないということになります。

実際、成果が出始めていて、トライアル店舗である大宮の「スーツスクエア」はEC比率は全体の40%程度。つまりECに寄せるのではなく、リアルを活用してECにできない付加価値を提供していく。そしてレジの場所を問わない。そうすることでECの実績が上がって、結果、会社全体として、生産性高く売上を伸ばすことに寄与したわけです。

一部の先行するブランドからすれば、今更感もありますが、青山商事のような老舗の大企業がやり始めたことに着目すべきです。既存の「ザ・スーツカンパニー」のお店は、この発表を機に4ブランドを入荷し始めて、2年かけて、全て「スーツスクエア」に転換します。

とことん振り切ることの意味
もう一つは「東急歌舞伎町タワー」です。エンタメに振り切っていて、成功するかどうかはまだ未知数ですが、これもリアルの価値を再定義する動きでしょう。上の階は、高級ホテルなど、富裕層の豊かな楽しみを追う空間になっています。健康志向の人たちには、プール付きの会員制のジムが用意され、レストランに入れば、ランチですら2,000円以上です。

エンターテイメントは、価格があってないようなもの。だから何を提案するかで、価格競争に巻き込まれずに済みます。僕は同施設内の「109シネマズプレミアム」という映画館に入ることで気づきを得ました。

ここでは映画を見るのに、4,500円必要です。一瞬「高い」と思う人もいるでしょうが、案外、理にかなっています。そもそも普通の価格の「109シネマズ」が全国にあります。あわせて「シネマポイント会員」も用意されていて、1000円払えば、加入できます。この会員であれば、先ほどの4,500円は4,000円になります。この会員は系列映画館であれば、火曜が一律1,200円になるなどの特典があります。「ならばいいだろう」と思って、僕は会員になり、4,000円で体験してみました。

体験の深掘りをどうやってするかで差がつく
「109シネマズプレミアム」の入り口は豪華なラウンジで、開演時間までソファでくつろげます。カウンターに行くと無料でポップコーンが手に入り、コーヒーなどのソフトドリンクは飲み放題です。

考えてみてください。映画を標準価格で見れば1,900円。ポップコーンや飲み物を購入すれば、チケット代と合わせて、3500円程度にはなります。高いというほどではないでしょう。寧ろお金を先に払うか後で払うかだけで、ここまで体感が変わる。語弊を恐れず言えばケチるほど実は損をする。

自分自身も振り切れば、そのジャンルでは体験価値を高められます。推し活ではありませんが、好きなものに限っては「部分的“富裕層”」になればいい。SNSの台頭で多様性が叫ばれる時代ですから、個々の個性を重んじればこその答えかもしれません。

より深掘りして、満足度を追う時代。だとすれば、リアルを「ものを売る場所」「映画を見る場所」と考えてはいけないのです。ECも「ものを売る場所」と考えて、売っているとリアルで厳しい状況に追い込まれているお店と同じ目に遭いそうです。コアなお客様をとことん満足させる術を、考えていきましょう。

今日はこの辺で。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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