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コロナ禍で明確になったD2Cブランドの存在意義と価値とは。そして、体現するメッセージとコミュニケーション

「D2C」。この言葉を聞いたり、目にしない日はないのではと思うほど定着した言葉。ご存知の方が多いとは思うのですが、改めて「D2C」についての説明を。「D2C」は「Direct to Consumer」の略で、企業が商品を企画・製造し、直接消費者に商品を販売するビジネスモデルです。アメリカで「D2C」という言葉が登場したのは、約10年ほど前の2010年頃と言われています。

有名なD2Cブランド
・Allbirds:
アメリカ・サンフランシスコ発のスニーカーブランド。サステイナブルな素材から作るスニーカーは「世界一快適な靴」とアメリカのTime誌に評される。

・Glossier:
Vogueでスタイリストとして活躍する傍ら、絶大的人気を誇るブロガーでもあったエミリー・ワイス氏が創業したニューヨーク発のスキンケアコスメブランド。ピンクのパッケージがトレードマーク。

・Warby Parker:
オンラインストアから出発した眼鏡ブランド。ECに向いていないと言われていた眼鏡という商材を、ミレニアム世代をターゲットに「自宅試着」を売りにし事業拡大。

・Everlane:
アメリカ・サンフランシスコで創業したファッションブランド。商品の原価だけでなく、原価にかかる人件費や材料費といった内訳までをも公表し、「Radical Transparency(徹底した透明性)」を追求している。

上記D2Cブランドを見て分かるように、D2Cで有名なブランドはアメリカ発のブランドが多く、また商品カテゴリも絞り込まれて展開しているものが大半です。そしてこれらのブランドの多くは、大量生産・大量消費を前提とした物の売り方やマーケティングに嫌気が差し、魅力を感じなくなったミレニアム世代をターゲットにしています。大量消費・大量生産時代は、スマートフォンの登場を契機に終焉を迎えました。いつでもどこでもインターネットに接続できるスマートフォンの登場は、消費者の検索行動から購買行動まで、消費行動に大きな変化をもたらしたことは言うまでもないですが、マーケティングや販促・広告といった購買行動に関連するテクノロジーも同様に急激に進化しました。その結果、消費者一人ひとりへのアプローチ方法や情報が多種多様になり、消費者に届く情報はパーソナライズしていきました。大量生産品に飽き、パーソナライズされることに慣れた消費者の潜在的なニーズは、D2Cブランドの登場によって顕在化され、D2Cの市場拡大を加速させました。

デジタルネイティブをターゲットにしたDNVBも登場
最近ではD2Cに加えて、「DNVB(Digitally Native Vertical Brand)」という言葉も登場し、よく見かけるようになってきました。DNVBはD2Cの一種で、幼いころからスマートフォンなどのデジタル機器に囲まれて育ったデジタルネイティブをターゲットとしたブランドです。DNVBブランドは、SNSを中心としたメディアを用いて、ブランド価値を発信している点が一番の特徴です。大量生産・大量消費時代とは異なり、短期的な利益ではなくブランドとしての価値の創出に重きを置き、長期的にLTVを伸ばしていくことを重視しています。

D2Cの真価を体感できていますか?
「D2CやDNVBの概念については理解しているものの、では具体的にどういったところがD2C/DNVBらしさなのだろうか」そう思うことはないでしょうか。D2Cブランドの難しい点は、勉強のために一見さんが試しに商品を購入してみても、1回の購買体験では、D2Cブランドの良さがなかなか伝わらない点だと思っています。というのも、D2Cブランドの魅力は、日頃のInstagramの投稿やストーリーズといったSNSを通じたコミュニケーションの積み重ねから培われるブランド力が多分に影響するからです。今回はD2Cブランドの真価・良さを理解するために、このコロナ禍においてD2Cブランドがどのような対応をしているのか、どのようなメッセージを発信しているのか、を調べてみました。以下にピックアップしてAllbirdsとGlossierの事例を記載します。

D2Cブランドがコロナ禍で発信しているメッセージ

Allbirdsは医療従事者へ靴を寄付するキャンペーンを実施
Allbirdは多くのメッセージをInstagramで投稿しています。CEOからのメッセージのほか、医療従事者へ靴を寄付するキャンペーンに関連する投稿もあります。

https://www.instagram.com/allbirds/

Allbirdが実施した医療機関・従事者に靴を寄付するキャンペーン「We’re Better Together」は、3月下旬時点ですでに$500,000相当の靴を寄付しているそうです。アメリカのECサイトでは靴の寄付のほか、「buy-one-give-one」という対象商品を一足購入すると、医療団体に一足寄付できるオプションも追加しました。単に企業として金銭や商品を寄付するのではなく、顧客と一緒に社会の課題を解決していこうとする姿は、体験を通してブランド価値を創出することに重きを置く、D2Cブランドらしさではないでしょうか。この寄付キャンペーンを実施したことにより、多くの人々に、Allbirdsが持つ社会的責任感の強さや、ブランドの哲学や理念を伝えられたと考えられます。また、リアル店舗を一時閉店しなければならなく、売上的に苦境に立っているAllbirdsのキャンペーンに顧客が参加することは、顧客にとっても貴重で意義のある体験となるはずです。その結果、ブランドに対する特別な感情・記憶が生み出され、さらに帰属意識を高めるのではないでしょうか。

キャンペーンURL
https://www.allbirds.com/pages/better-together

GlossierはCEOのパーソナリティが伝わるレターを発行。「SNSで繋がろう」とより強固な関係構築を提案
Glossierでは今年2020年の3月と4月の2回、創業者兼CEOであるエミリー・ワイス氏からのレターをGlossierのECサイト上で掲載していました。従来型の企業やブランドだと、こういった情報は公式文書形式で書くことが多いと思うのですが、エミリー・ワイス氏からのレターは、CEOからの飾らず素直な心情と考えを表明するもので、顧客とブランドとの距離感が近く感じるものでした。そして「私たちはこう思っているから、こうしませんか」という提案を発信しているのも印象的です。

1回目のレターで私が印象に残ったのは「不確実性の高い状況下で今まで以上に繋がりや団結力が必要とされているので、今こそSNSでつながり、団結していきましょう」と呼びかけている文章です。Instagramでも同様のメッセージを画像として掲載しています。D2Cブランドを調べて気づいたのが、こういった企業としての公式な情報・メッセージをInstagram上で積極的にアップしているブランドが多いことです。逆にWebサイトやECサイト上ではまったく情報を掲載していないブランドも多くありました。一般的なブランドだと、出せる場所には全ての情報を掲載する方針が多いので、新鮮というか驚きでした。SNS上での双方向のコミュニケーションを大切にしているというのがDNVBらしさなのでしょう。

いかがでしたでしょうか。一つのテーマに絞って追求すると、また違った側面が見られ、理解が深まるのではないでしょうか。私は今回色々なブランドを比較してみて、D2Cブランドの特性・真価の理解に近づいたように感じます。また、今回D2CブランドのECサイトをざっと一通り見て、Shopifyで構築されているブランドはやはり多いことなど、当初の想定とは違う発見もありました。D2Cブランドはブランドの価値創出が一番重要なはずですが、D2Cブランドが群雄割拠となった結果、デザインやレイアウトが似ているものが増えてきており、当初の目的と正反対のことが起きていそうな気配も感じました。

muraishi

JECCICA客員講師 村石怜菜

株式会社パルコ・シティ シニア・コンサルタント。

日本女子大学被服学科卒。大手専門店企業で接客販売・店舗運営を経験した後、Eコマース支援企業で数々のファッションブランドのECサイトの構築や運用に携わる。現在は、ファッション専門店や商業施設へのECコンサルティングを得意としている。また、クライアント企業のオムニチャネル戦略の計画・実行を支えている。


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