小売の雄は既に時代に即していた
世界の小売ランキングに見る世界企業の凄み
つい先日のことであるが、デロイトトーマツという会社が世界の小売業ランキングをいうデータを出していて、要は、2018年度(2019年の6月まで)のデータをまとめて上位250社をまとめたものである。(出所:Deloitte Touche Tohmatsu Limited. Global Powers of Retailing 2020. 2019年6月30日を期末とする事業年度について各社のアニュアルレポート、 Supermarket News、Forbes Americaの大手非上場企業および他の資料をもとに分析。 )
これを紐解いて興味深いのは、上位にランクインしている会社は皆、チャネルにこだわりなく、顧客単位で見ていることだ。最新のテクノロジーをうまく取り入れつつ、時代における最適化を考慮して、その上で強みを発揮しているのである。当然、データを出した時にはまさか今のような新型コロナウイルス感染症が拡大しようとは思わなかっただろうが、とは言え、世の中の仕組みが替わろうとしている最中、貪欲に“進化”を果たし、好業績を維持していることに注目したい。
テクノロジーで強みを最大化させる世界企業
ちなみに、一位はウォルマートで、2018年の小売売上高成長率は2.8%。背景として、オムニチャネル戦略の一環としてeコマース売上高に注力。2018年度は54億米ドルを投資し、eコマースの売上高を40%増やしている。ご存知だとは思うが、eコマースで購入した商品を「グローサリーピックアップ」など、車から降りなくてもネット注文した生鮮食品を受け取れるようにしていたり、実店舗での受け取りを可能にするなど、受取配達拠点の拡大に投資した。eコマースの利用者を増加させる際に、自分たちの強みを生かして、伸ばすあたりが流石で、ネットが普及する中でこその結果を、彼らは出しているのだ。
二位はコストコで、この会社で言えば、生産管理という部分。ベンチャー企業のテクノロジーを活用していて中でもZest Freshは注目に値する。まず野菜など、農作物の傾向をデータ化。それを基に農作物が十分な鮮度で小売のもとへ適切な数量、出荷させるように調整して、廃棄物を削減している。これに基づけば、とある農家の野菜をこれまでは10日後に出荷していたけど、実は8日で出荷するのがベターなどと現場が気付ける。売り場での廃棄が減少し、顧客にそのまま還元されて顧客満足度が向上、売上が上がっているわけだ。
三位にはネット通販でおなじみ、Amazonがランクインしている。最近はウォルマートとは逆にリアルへの進出に積極的。最近では「Amazon Go Grocery」というサービスを始めている。所定のお店に到着後、ゲートで、QRコードをスキャンして店舗に入り、欲しいものを棚からそれをつかんで、外に出る際購入が完了している「Amazon GO」の仕組みを生かし、その生鮮食品は近隣の生鮮食品専門店などから集める。自らのお店でテクノロジーを追求した最適化をはかりながら、従来のリアル店舗の価値もそこに共存させるべく、模索しているあたりが流石である。
テクノロジーは核があって形をなす
それと比較してはいけないのかもしれないが、先日、三越伊勢丹が決算を行い、2020年3月期 決算発表を行っていて、後手に回っている印象が強い。2020年3月期の業績に関しては、売上高は1兆1191億円でこれは前年比-6.5 %など、明らかにしているが、中でも2〜3月期は「新型コロナウイルス感染症」でインバウンドの減少となり、影響は甚大。今や4月以降は休業となってダメージは広がっていて、決算の中で、ECの強化を宣言したが、遅きに失した感もなくはない。ただ、テクノロジーの活用そのものが大事なのでは無く、顧客から求められるニーズや強みを最大化させる為にそれを活かせるかである。
ちなみに、同時期に、楽天も決算発表を行っていて、連結売上収益は3314億4300万円、前年同期比 +18.2%であるものの、楽天モバイルや、物流への投資などで、税引前利益が358億円のマイナスとなっている。ただショッピングEコマース流通総額が4月は前年同期比 57.5%増となり、楽天トラベルなどの伸び悩みを埋めて、最低限のリスクヘッジはできているが、油断ならない。何故なら、今までの流通に、利用者が増えただけのことだからだ。
世間の話題が圧倒的に「新型コロナウイルス感染症」一色になっていて、生活様式の変化を余儀なくされている。上記の通り、ネット通販は有利で流入しているのだから、そこで一喜一憂すること無く、商品の購入単位ではなく、俯瞰的に顧客がどういう趣味嗜好を持ち、価値観を持っているのかを考え、リピートしてもらう準備をしておくべきではないかと思う。それが冒頭、話した世界の小売の雄たちがやっていることなのだから。
JECCICA客員講師 石郷 学
(株)team145 代表取締役