CRMで差をつける!顧客中心の視点がもたらす成果と実践ポイント
本コラムでは顧客中心のメッセージ配信がなぜLTVやリピート売上の向上に欠かせないのか、考え方と具体的取り組みに加え実践に向けたポイントを解説します。
CRMは今後のECで避けて通れない重要課題
EC事業を継続的に成長させていくために、繰り返し購入いただけるリピーターのお客様を獲得していくことは避けて通れない重要なテーマです。
EC市場の規模は拡大を続けていますが、EC事業者数も年々増加し続け、少子化による人口減も影響し今後も引き続き競争環境は激化していく見込みです。
新規獲得の環境も年々厳しくなっており、今まではひたすら広告予算を確保して新規顧客を獲得し続ければ事業成長できた時代もありましたが、ここ数年は新規獲得に加えいかにLTVを増やすかが注目され、CRMの分野があらためて見直されています。
もはや商品やサービスの質が高いことは顧客にとって当たり前の前提条件であり、いかに競争優位性を持ったうえで顧客と末永い関係を作っていくかが重要なテーマとなっています。
しかしながらまだまだ多くのEC事業者において、新規獲得だけで手一杯となりCRMまではなかなか注力できていないのが実情ではないでしょうか。
取り組んでいる施策といえば一斉配信メルマガやステップメール、クーポンやポイント施策などEC創成期から約20年以上ほとんど変わらない施策に依存しているケースが多く見受けられます。
一方でamazonやメルカリ、zozoタウンといったEC業界の各主力プレイヤーは着々とデータを活用した的確な顧客コミュニケーションを実現させて顧客から支持を得ています。
自社のメッセージ配信が顧客中心の視点で考えられているか、判断するにはいくつかのポイントがあります。
顧客中心の視点でメッセージ配信できているかを判断する5つのポイント
お客様は毎日、オンライン・オフライン問わず様々な手段で大量のメッセージを受け取っています。
そんな中であなたの配信するメッセージが埋もれてしまわないよう、顧客中心の視点でのメッセージ配信が何よりも重要となります。
あなたの配信するメッセージが顧客中心になっているかどうかを判断するには以下の5つのポイントがあります。
1. 顧客の役に立つ内容になっているか?
ショップ側が伝えたい内容を伝えるだけの一方的なメッセージになっていないかは注意が必要です。
常に顧客ベネフィットを意識しましょう。
2.顧客視点のメッセージになっているか?
主語はショップではなくメッセージを見るお客様です。
例えば「200ポイントプレゼント」ではなく「200ポイントもらえる」など、
そのメッセージが自分のためのものだと感じてもらう必要があります。
3. 顧客の行動にあわせた内容になっているか?
顧客の購買や商品閲覧、カート投入など行動や状況にあわせた内容になっているか、
購買についても初回の購入なのか、しばらくぶりの購入なのか、何度も購入されているのかなど購買行動に応じたメッセージが重要です。
4. 配信するタイミングは適切か?
顧客の行動や状況にあわせタイムリーに配信できているか、
例えば購入直後の配信や商品閲覧後の配信など適切なタイミングで伝える必要があります。
5. 顧客の共感を得られる内容か?
メッセージによって顧客に行動を促すには顧客の心を動かす必要があります。
そのためには配信担当者は心から顧客のことを考えて伝えることが重要で、惰性で配信したり短期的な売上だけを狙った偽りのメッセージはすぐに見抜かれます。
顧客の役に立つ情報を継続して続けることで開封率やクリック率、売上といった数字は自然とついてきます。
LTV増加に直結した顧客中心のメッセージ配信例
顧客にあわせた的確なコミュニケーションは確実にLTVを増やします。
例えば以下のようなメッセージ配信は取り扱いジャンルを問わず非常に効果的です。
1.カゴ落ち
カゴ落ちした顧客への、お買い忘れがないかどうか確認の通知
2.閲覧後離脱
商品を閲覧しただけで離脱してしまった顧客へ、他の関連商品も含めたおすすめの通知
3.レコメンド
顧客ごとの過去購買履歴や閲覧履歴によって生成されたおすすめ商品のご案内
4.ランキング
全体や顧客が興味を持っているカテゴリの売れ筋商品のご案内
5.ポイント明細
顧客が保有するポイント数と有効期限のご案内
6.ポイント有効期限
ポイント有効期限が近いことの通知
7.新着
新着商品があったことの通知
8.お値下げ
顧客が注目している商品がお値下げされたことの通知
9.残り僅か
顧客が注目している商品が残り僅かになったことの通知
10.再入荷
顧客が注目している商品が再入荷されたことの通知
これらの施策は非常に効果的なためAmazonなどの大規模ECでは全自動で実現されている一方、自社ECでこれを実現しているのは、先進的な取り組みを行う一部のECサイトに限られています。
実行した場合の成果は非常に顕著で、メルマガ経由の売上が1.2倍〜3倍程度まで増えるケースが多く、伸び幅はそれまでのメール配信の取り組みや取り扱い商材によって前後します。
こういった顧客ごとの配信を定期的なメルマガ一斉配信と組み合わせることでさらに効果は高まります。
メール経由の売上はサイト全体の10%〜50%程度を占める場合が多く、LINEやSMSなど他のプッシュ型のメッセージ配信と比較して最も構成比が高いので、非常に効果的といえるでしょう。
実現するためにはスクラッチで自社開発するかCRMツールの導入による自動化が必要です。
しかしながらCRMツールを導入してもうまく活用できずにメルマガ配信ツールになってしまうケースにはいくつかの要因があります。
CRMの推進を阻む3つの壁
CRM推進を阻んでいる壁は主に以下の3つがあげられます。
1.時間の壁
EC担当者は1人で複数の業務を兼任しているケースが多く、施策プランニングやクリエイティブの制作、システムへの実装、効果分析までやろうとすると時間が足りず、解決するには専任のCRM責任者が外部のコンサルや制作会社など複数の専門家を束ねてマネジメントする必要があり、多くの事業者ではそれがCRM推進の壁になっています。
また意外と見逃しがちなのがCRMツール導入後の運用工数の軽視です。具体的な内容や必要工数を明確にしないままCRMツールを導入し、失敗するケースが多く見られます。
2.ノウハウの壁
CRMの知見がなく何をどうしたらよいのか分からない、もしくは施策案は出せても具体的な実現方法に落とし込めなかったり、施策の優先順位の立て方や評価方法が分からないなどノウハウの壁が存在します。CRMの知見がある人材は市場ニーズがありなおかつ希少性も高いので採用も難しい状況です。
3.システム環境の壁
ノウハウや時間があってもそもそものシステム環境的にデータを活用した施策や分析の実行が難しい場合があげられます。
カートシステム単体ではできることに限りがあるため、外部のCRMツールの導入やスクラッチでの開発が必要になってきます。
CRMの推進には顧客の課題発見、それを解決する施策のプランニングだけでなく、どんなデータをどう活用しそれをどうシステムに落とし込めば実現できるのか、
どんな施策を優先しどのような順序で進めるのか、実現後の評価はどんな指標をどんな切り口で見ていくのかを描き、顧客だけでなく関係する協力者とも向き合い推進していく力が必要になります。
まとめ
CRMとはいえ、本質は常に生身の人間が相手の商売です。
そのためデータを見つつもその先にある人を想像する必要があります。
テクノロジー起点でなく顧客起点のメッセージ配信を常に心がけ、テクノロジーと人の想像力によるハイブリッドな取り組みを進めることが、顧客からの信頼を得て末永い関係構築につながります。
自動化できることは徹底的に自動化したうえで、人がやる価値があることに時間をつかうことが競争優位性につながるので、そのためにCRMツールの利用を考えてみてはいかがでしょうか。

JECCICA客員講師 中村 隆嗣
株式会社ファブリカコミュニケーションズ
アクションリンク プロダクト責任者
2003年に北国からの贈り物へ入社。本店/楽天/Yahoo!/Amazon/ぐるなびなど全店のマーケティング戦略責任者として数々の賞を受賞。2014年株式会社メディックスに入社し、年商2500億規模の大手製薬会社や外資系アパレルブランドなど、メーカー直販ECの事業コンサルティングを手がける。コンサルティング先で多く見られたCRMの課題を解決すべく2018年にアクションリンクを立ち上げ、2023年ファブリカコミュニケーションズにジョイン。現在に至る。