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注目を浴びるタイのフィンテック決済と越境EC

2017 年10 月初旬に、タイのバンコク(Bangkok)で行われた、グローバル・ナレッジマネ
ジメント大会にて、タイにおけるスタートアップ企業が活躍する典型的なイノベーション
事例として、メッセージサービスの「LINE・タイランド」が紹介されました。筆者が経営
するジェイグラブからも関係者が参加しましたが、地元のプリペイドカード会社の「ラビ
ット」と組んでスマートフォン決済(サーバー型電子マネー決済でラビット・LINE ペイと
呼ばれる)に出るなど非常に目立つ動きをしています。同社は2016 年には野菜、料理など
の食品や、コンビニエンスストアで販売している商品を配送込みでその場で注文できるオ
ンデマンド・サービスのアシスタントアプリ「LINE MAN」の提供をタイで開始しており、
決済はラビット・LINE ペイが利用できます。2000 万ドル以上の資金を調達した「Lalamove」
という物流スタートアップと提携して、バンコク周辺地区1 万店舗以上の飲食店に注文が
可能です。また2017 年末にはバンコクの鉄道にも導入されます。

一方で、スマートフォン決済のライバルはEC 決済に強い通信キャリア系CP グループの電
子マネーである「トゥルーマネー」です。このトゥルーマネーを運営するAscend Money に
は中国のアントフィナンシャル(電子マネー アリペイの親会社)が出資しています。同じ
CP グループに属するタイ・コンビニエンスストア大手のCP オールでは、トゥルーマネーと
共に2016 年から中国観光客向けに中国電子マネーの「アリペイ」、さらにアリペイのライ
バルでもある「ウィーチャットペイ」の決済が可能になっています。また、CP オール社で
はQR コード決済を導入しています。

そのアリペイは既にアリペイ・タイランド社を設立しており、中国観光客などを中心にス
マートフォン決済のための電子マネー決済サービスを提供しています。タイ国内でも早晩、
シンガポール、マレイシア、インドネシア、フィリピンのように国内消費者向けのアリペ
イ電子マネー・サービスを開始するとみられています。

タイでは富裕層にはクレジットカードが普及していますが全体で約20%程度です。しかし、
若者の債務不履行が増加したため中央銀行が利用限度規制を強化したり、クレジットカー
ドの銀行引落しも必ずしも普及していないなど、東南アジア各国同様に便利な電子マネー
が成長する余地が大きいと言えます。

しかし、現在最も注目すべきはタイ政府と銀行協会が立ち上げたプロンプト・マネー(送
金には銀行口座と紐が付いた国民ID カード番号や保有携帯電話番号を活用)と呼ばれるス
マートフォンベースの送金・決済サービスでしょう。(5、000 タイバーツ、約16、500 円ま
では送金手数料が無料、10 万バーツ、約33 万円では10 バーツ、約33 円)タイ政府は
Thailand4.0 の計画の下、タイにおけるキャッシュレス社会の実現を目指しています。まず
2016 年6 月には政府の後押しのもと、銀聯カード(ユニオンペイ)、ビサカード、マスター
カードのクレジットカード3 社が統一QR コード決済を実現するQR Code Standard を開始
しました。これにはタイの銀行協会も参加しています。そして2017 年に立ち上がったプロ
ンプト・マネーにも統一QR コード決済が適用される予定です。2017 年2 月には消費者間の
送金からサービスが始まり、春先にはビジネス決済・送金へと広がり、2017 年末までに統
一QR コード決済による店舗やEC 決済への拡大が予定されており、そうなりますと銀行協
会によるデビットカードのスマートフォン版と言った立ち位置になってくるでしょう。タ
イのスマートフォン普及率が70%を超えると言われている中、大変な画期的サービスにな
るかもしれません。そうなれば、銀行協会の外で成長する各種電子マネーとの競争が注目
されます。

日本国内でも東京オリンピックの2020 年までにみずほフィナンシャルグループ、ゆうちょ
銀行、複数の地銀が連合で、仮想通貨J コインを普及させようとする動きがありますが、
タイのプロンプト・マネーの動きは、仮想通貨のようなブロックチェーンこそ使ってない
ものの、今後の日本国内の参考事例となるかもしれません。
最後に越境EC に直接、関係する話として日本人起業家によるタイ発の電子決済サービス
「Omise」が注目されています。役割としてはほとんどペイパルと同じですが、
ペイパルがスマートフォン決済においてタイの現地銀行が開発している決済サ
ービスとの連携が遅れている中、「Omise」の「OmisePayment」が伸びています。
現地の消費者がスマートフォンから越境EC で商品を購入する場合、必ずしもペ
イパルやクレジットカードでは対応できない国やエリアがあると言う点を覚え
ておいてください。

出展画像:marketingoops (3 เหตุผลท )ี SME ควรใช ้ LINE MAN より)


ジェイグラブ株式会社 代表取締役  山田 彰彦
<モデレーター略歴>
イーベイ・ジャパン創業メンバーとして参画後、ヤフー株式会社でヤフオク!事業部の企画運営、不正対策、B2C事業、海外事業など一貫してEC事業に携わり、
2010年ジェイグラブ株式会社を創業。中小機構越境EC専任講師、中小企業庁ミラサポ専門家、越境EC復興支援プロジェクトなど全国で講演やセミナー、勉強会などを行っている

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