JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

最新セミナー・イベント情報
お申込みはこちら

デジタルを宝の持ち腐れにしないために

リアル以上にリアルなデジタル
どれだけデジタル化が進もうとも、所詮、僕らはリアルを起点に物事を考えざるを得ないが、そこでいかにしてデジタルを味方につけるかが大事なのだと思っている。

先日、僕はヤプリという会社のリアルイベントに訪れた。彼らはノーコードでアプリを作れるプラットフォームを手がけているのにリアルイベント?と思った。

入るなり「こちらの診断を答えてもらえますか」とスタッフに促され、直感でサクサクと質問に答えるうちに「あなたに相応しい香りはオリエンタル」と表示された。

「こちらです」と案内された先は「LIBERTA perfume」というブランド。香水がずらりと並んでいて、そこで、先程の診断結果に基づき出された「オリエンタルの香り」を僕に差し出すのである。聞けばこの「LIBERTA perfume」は香りのブランドなのに、リアルのお店がない。アプリ上、多くの人が選んでいくそのアルゴリズムで、相応しい香りを導き出すことで商売が成り立っているのである。単純に片っ端から香りを選んでもらう、若干リアルでの非効率なチョイスの仕方とは一線を画していて新しい。

骨格など人間のリアルを引き出すアプリ
また、ヤプリのスタッフからプッシュされたのは「骨格診断」。骨格に基づき、それぞれに見合った服のサイズやフォルムを提案するという技術で、この裏側にはNIAiNOというサービスが働いている。
その名の通り「似合いの」でテクノロジーでお似合いを実現させるテクノロジー。利用者の全身や手などの体のパーツの画像を読み取ればAIの力で相応しいものを導き出すというわけである。その直感を引き出す要素はアプリの強みそのものである。
その先ではパンが並んでいた。パンのネームプレートの横にスマホをかざすと、ポップアップでそのパンの紹介が出てきた。そのパンはパンフォーユーという会社のもので地元のパンを美味しさそのままに全国に送り届けるサービスを手がけている。
つまり、その地元のパンのこだわりはスマホをかざすだけでパッと浮かび上がって紹介され、パンへの愛着とともに購入へと至るわけである。

いずれもその体感はその会社やブランドの文化と紐づいていて単純に「ものが売られていてただ買う」という次元の話ではない。アプリを通してその文化に触れつつ商品を堪能して購入に至るという一連の流れに未来を感じたのだ。

店として何がしたいのかが問われている
これは最近の自社ECが受け入れられている流れに近いと思った。買うことを前提にするのではなく、そのブランドの価値観を享受することで購入へと至るというわけである。

だからその場所には「Nagi」というブランドもあって僕は思わずうなづいた。「Nagi」も先進的なブランドで、女性向けのインナーを手がけている。生理を考慮した商品群で、かつ日本製にこだわるなどの強い理念を感じるからだ。それらはネームプレートの横でスマホをかざすと、思いとともにこだわりがポップアップで示され心に染み入る。

僕は何が言いたいかというと、もはや「ものを売る人」にもこういう世界観が求められる時代に入ってきたのかもしれないということだ。正直、商品を買うだけなら商品と値段を置いておけばいいだろうが、そうはしていない。
スマホを通して僕らは商品に込められた想いに触れて、よりリアルな体験を深いものとして受け止め、それがそのままショッピングの質も上げているのである。

これは大量生産とマスメディアで画一的に、ただ商品を並べてまとめて売るだけの発想をしてきた人には大変辛い世界なのではないかと思う。

店として何をしたくてその商品を扱っているのかという部分が深掘りできていなければ、これらのテクノロジーの進化も宝の持ち腐れとなるに違いない。これが冒頭に話した、リアルを起点としながらも、デジタルを味方につけて、自分たちの付加価値を高められるかが大事だと思う所以である。

自社ECも表現の幅が広がりリアル的に
先程、この流れは自社ECが浸透するのに近いと書かせてもらった。
まさに今自社ECで脚光を浴びるShopifyもまた「Shopify Unite」といって、Shopifyの機能に関するアップデートの発表会がなされたけど、それに近い印象だ。Shopifyが示したのはもはや、従来僕らが考えるネット通販の世界ではない。「定期購入の機能がつきました」などという次元ではなく、全く違う「商い」そのものの自由化であったわけだ。
ノーコード、ローコード、カスタムコードを駆使しながら、あらゆる要素を組み合わせて、EC上で自由にその表現の幅を広げることができるようになって、お店はお客様に新しい体験をもたらすことができるようになっている。

先日、フラクタの代表取締役 河野貴伸さんと話していたら、例えば歌手がライブ配信で音楽を聴かせながらカンパをしつつ物販も行うといった世界もそう遠くないのではないかと話していて、もはやそれは物販の世界ではないなと思ったわけである。

勿論、全部がそんな時代になるわけではない。けれど、今まで小売をやってきた人はそういう人たちも相手にしていかなければならないということなのである。

アプリ然り、Shopify然り「買う」という行為が限りなくエンターテイメントに近づいている。その時、お店には何が求められるかというと言えば、そのお店の世界観なり、考え方、お客様にもたらしたい価値である。たとえ今売れていても今一度、そこを考え直すべき時に来ていると僕は思うのだ。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


 - JECCICA記事, お知らせ, その他, コラム, ニュース

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

Copyright© JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 , 2021 All Rights Reserved.s