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楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol.74 【以前はカリスマ店員も今はインフルエンサー!】

それは「渋谷109」から始まった
「カリスマ店員」と言えば、やはり渋谷109を思い出します。女子高校生から絶大な支持と信頼を集めるブティックの女性店員を「カリスマ店員」と言って、店頭で彼女たちが着る服そのものが、その日の売れ筋になるほど影響力は絶大でした。

買い物だけではなく、同じ年代の顧客と店員が「友達」のように会話しながら、顧客はカリスマ店員のファンとなり「あの人が言う事、あの人のスタイルは間違いない!」という心理から、モノに加えてカリスマ店員が発言する「ストーリー」に価値を感じ、お小遣いを貯めて渋谷109を訪れ、お気に入りの洋服を買っていたと感じます。

あの人が言うなら間違いない!
1976年に原宿で、アメリカ西海岸のカジュアル衣料店としてスタートした「BEAMS」ですが、今ではセレクトショップの代表格として知られています。そのBEAMSを運営する株式会社ビームスは、2022年2月に「ビームスの太鼓判。Selected by “BEAMS”」を掲げ、世界中にあふれるサービスの中から、ビームススタッフ個人がセレクトした様々な「モノ」や「体験」を、とっておきのストーリーとともにお届けするオンラインショップ「B印MARKET」を展開しています。

ビームスは、それまでにも宝島社から累計発行部数約30万部を越す書籍「BEAMS AT HOME」シリーズなどを通じて、スタッフのライフスタイルを発信してきました。

B印MARKETは、それまでは書籍で発信した情報コンテンツを、B印MARKETのサイト、そしてビームススタッフのSNSを介して「インフルエンサー」として情報を発信。ビームスの取扱商品の中から選んだ自身のお勧めや、自身が見つけてきた商品を、自分自身のライフスタイルを通した体験と、使った感想をストーリーとともに提供しているオンラインショップです。

ビームスがお墨付きの「個人商店」
「B印MARKET」は、端的に言えばビームススタッフの「個人商店」です。ディレクターやバイヤー経歴があるスタッフをはじめ、ビームス社内でも高い審美眼を持っていたり、次世代を担うスタッフが個人商店オーナーとなり、その目利きによってキュレーション(インターネット上の情報を、特定の視点を持って収集、選別、編集することで新しい価値を持たせ、それを共有すること)された、様々なモノやサービスを提案しています。また社内外から「インフルエンサー」をスペシャルセレクターとして迎え、お勧め商品をストーリーと共に提案しています。

ビームスというブランドの傘下に、自分自身のライフスタイルを通じて実際に使い、ワクワクする価値を感じた商品を、自分自身の「個人商店」として提案し、販売が出来ることは、ビームススタッフの働くことへのモチベーションにも繋がります。

顧客は商品の背景にあるストーリーを買っている
私は2000年代以降に、多数の通信販売事業の企画コンサルに関わって来ましたが、その際に私の師匠だった方が、通信販売は「売るな、語れ!」が鉄則とおっしゃっていました。通信販売は、売り手と買い手が「一対一の双方向」で繋がるので、セルフ販売が浸透した店頭では伝えられない商品の情報が伝えられることが大きな利点です。

「何故、その商品を開発して通信販売で売っているのか?」、「この商品を使う事で、貴方のこんな悩みを解決してくれる!」、「この商品を使う事で、今まで体験したことがない、こんなワクワクしたライフスタイルを体験出来る!」といったような、その商品の背景にある顧客にとって「納得感と価値」あるストーリーは、顧客ニーズを満たす琴線に刺さり、結果として顧客は購買するという流れです。

やはり時代が変わっても「人間や商売の本質」は変わらない
「カリスマ店員」が話題になり始めた頃や、私が通信販売事業のコンサルをスタートした頃には、まだ「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)」は、普及していませんでした。当時は個人の感想を投稿する「ブログ」が、インターネット上での口コミを形成する情報発信と受信ツールでしたが、文字情報が中心でしたし、そのジャンルのマニアには支持されましたが、拡散性はそれほどありませんでした。

そういう意味では、2010年以降にSNSが広く普及し、「インフルエンサー」という言葉が認知され、先のビームスのケース同様に「あの人が言うなら間違いない!」という消費者の情報に対する価値観は、今では若い世代のみならず、中高年世代にも拡がっています。

こうしたトレンドを見て最近つくづく思うのは、マーケティングは時代を一周して原点回帰。言い換えれば「江戸時代」に戻ったのだと感じます。江戸の日本橋で美味しい「お団子屋さん」が評判になり、江戸の町民に口コミが拡がった。そして集まるお客さんの笑顔が見たいので、お団子屋さんの店主は一生懸命に美味しいお団子を焼いて提供した。

今に言い換えれば、店主は「カリスマ店員」であり、お店は「B印MARKET」であり、口コミはアナログからデジタルに変わり「SNS」になっただけのことで、やはり人間の本質、商売の本質は変わらないことを痛感する今日この頃です。

JECCICA客員講師 鈴木 準

株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント


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