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楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol㊳ 新しい時代に再び求められる「コンセプター」とは?

新たな価値を生み出す人
私は先月に、音声のSNS、Clubhouseで「バブルカルチャー」をテーマに、同世代の方々と議論しましたが、その会話で出て来た懐かしいワードである「コンセプター」に関して今回はお話しします。
コンセプターとは、新たなコンセプトを考えて分かりやすく視覚化・言語化し、世の中に提案する人です。そのベースとなるコンセプトの意味は「新しい概念」であり、端的に言えば「新しい価値」と言えます。

日本のコンセプターのルーツ
コンセプターは欧米では、非常に重要な職業として認知されています。新たな事業や製品開発を行う際には、モノやサービスの特徴を伝えるのではなく、顧客ニーズを満たし、笑顔を届けるため、「誰に?どんな価値を提供するか?」を分かりやすく整理し、製品開発からプロモーションまで一貫したコンセプトをベースに行います。

日本でコンセプターという職業が紹介されたのは、1980年代のバブル期にかけてです。その中でも坂井直樹氏は有名で、1987年に日産自動車から販売された「Be―1」のコンセプトで注目され、国内外メーカーの製品開発時に、斬新なコンセプトを提案していました。

DXをライフスタイルにどう生かすのか?
Be―1と同じく、1980年代に西武百貨店の広告キャンペーンで、コピーライターの糸井重里氏が「おいしい生活」と提唱し、CMやポスターのイメージキャラクターに、当時インテリのアイコンでもあったウディ・アレンを起用しました。
私はこの広告を最初に見た時に衝撃が走りました。売る気がまったく感じられない、なんとも意味不明な広告だったからです。しかしキャンペーンは大成功し、新たなライフスタイルを提案する西武百貨店は支持されました。いま冷静に見つめ直すと、糸井氏が書いたコピーは「勤勉で質素に生きてきた日本人の堅実な意識」に対して「もっとリッチに生きようよ」というアンチテーゼだったのかもしれません。

今、DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代と言われていますが、DXとは何か、高度な科学技術の側面だけを知るのではなく、人間の想像力を生かしDXを使うことで、どんな新たなライフスタイルが導かれるのか、それはどんな価値を生み出して人間を笑顔にするのか、分かりやすいコンセプトとして言語化し、提案する必要があると思います。そこに新たなビジネスが生まれます。
糸井氏が「おいしい生活」と提唱したように、ライフシフト時代のDXを活用した新たな暮らしを「〇〇生活」のように言語化することで、人をワクワクさせる、そんなコンセプターが再び求められると感じています。

ユニークなコンセプトを抽出するポイント
今までにない、新たなコンセプトを抽出するポイントは、「常識を疑い、かなぐり捨てること」です。先ほどのBe―1は、当時自動車業界の主流であった、馬力競争やハイテクデバイスに対するアンチテーゼとして、四角いカーデザインを丸くした、ほのぼのとしたレトロな印象がありました。
かつてアメリカで活躍した建築家ルイス・サリヴァンは、「機能性を求めれば、おのずとそれは良いデザインになる」という思想から、デザインと機能性との密接な関係を示し、「形態は機能に従う」と提唱しました。しかし自動車業界とは全く無縁の、テキスタイルデザイナーであった坂井氏は、そんな原則をかなぐり捨てた革新的アイデアでBe―1のコンセプトを提案。その功績はヨーロッパの自動車メーカーに、新たなリバイバルデザインの潮流を産むことになります。

バブルの財産は革新的クリエイティブ
1980年代後半に訪れたバブル期は、世の中が浮かれすぎて、その後の日本経済が失われた時代の根源と言われ、「バブルは悪」というイメージが強い気がします。
しかし、あの時代は溢れかえるモノや情報の中で、いかに顧客をワクワクさせるか?というテーマに対して、様々なアイデアに投資をして「理屈はわからないけど、めちゃ面白いね!カッコいいね!」というモノやサービスがたくさんありました。こうした「クリエイティブバブル」は、その後のGAFA企業にも大きな影響を与えたと言われています。
日本のバブル期の財産は、こうしたクリエイティブ、つまり「創造力を生かした仕事」が思いっきり出来たことだと思います。

アフターコロナ、そして人類未体験の人生100年時代には、経験とは裏腹に蓄積される「こうあるべき」、「こうでないと売れない」、「根拠となる数字が必要」といった、様々な「固定観念」を捨てて、「人間が人間の笑顔を創る」ことが、新たな世界を切り開くことにつながると確信します。

「常識を疑い、かなぐり捨てること」から、人間を笑顔にする新しいコンセプトが生み出される!

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 鈴木 準

株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント


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