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タイパ消費“Everywhere”

前々回の私のコラムでは「ネット時代に即した消費行動の4つのキーワード」と題した内容をお届けしました。その4つのキーワードのひとつはタイムパフォーマンス消費いわゆる「タイパ消費」です。今回のコラムはそのタイパ消費についてもう少し掘り下げてみたいと思います。

タイパ消費とは
タイパ消費のおさらいです。タイパ消費とは、タイムパフォーマンスを重視した消費行動を指します。Z世代特有の消費行動スタイルとしてしばしば話題になっています。青山学院大学の久保田教授はタイパ消費の種類を次の2つと説明しています。1つは単に時間がないケースでの消費行動。いわば時間効率性に重きを置いた消費行動です。もう一つは“時間はあるが目的達成のために無駄な時間を費やしたくない”と考える消費行動です。前者を時短型、後者はバラエティ型と同教授は解説しています。タイパ消費の具体例として挙げられるのが映画の倍速視聴です。短時間で映画を鑑賞したり、お気に入りのシーンまで飛ばしたりといった行動がそれに該当します。

タイパ消費に対する批判
タイパ消費について調べていると“映画を2倍速で見るとは製作者に対して失礼でありけしからん”とのネガティブな見解を述べている方々がいることが分りました。同じような批判はひょっとすると書籍にもあてはまるでしょうか。読み手からすると読書は時間を要しますし、必要な部分だけつまみ食いで知識を付ければそれでよいと言ったこともあるでしょう。一方著者としては書籍の内容全体を見て欲しいという思いがあるでしょうし、あまりタイパ消費的につまみ食いして欲しくないという願望はあるのではないでしょうか。本コラムはタイパ消費の善悪を論じることを意図していません。立ち位置の違いからタイパ消費に対するポジティブな意見とネガティブな意見が両方あることは、それはそれでよいことと思います。

タイパ消費は購買行動にもあてはまる
タイパ消費は何も映像視聴に限った話ではありません。買い物する際に有益な情報をできるだけ時間を掛けず手短に入手し意思決定することもタイパ消費に含まれると私は捉えています。化粧品を選ぶ際、あれこれと時間をかけて調べたり試してみたりすれば自分にぴったりのアイテムに出会えるかもしれません。しかし時間をかけようと思えばかけられなくもない中、あえて時間をかけるのではなく例えばSNSの投稿を参考にすることで時間を節約する行為はバラエティ型のタイパ消費に該当します。また仕事や家事などで時間的余裕がない中、ミールキットを購入して買い物の手間や調理の手間を省く行為は時短型のタイパ消費に該当すると言えるでしょう。尚、タイパ消費は単純に時間を無駄にしたくないということだけではなく、時間を節約しつつ失敗したくないという心理が含まれている点が特徴的と考えられます。

ECはそもそもタイパ消費
そもそもECは店舗に行かなくて済むという点でタイパ消費と言えます。もっともこれは買うものが元々決まっていて、それまで実店舗で買っていたものをECに切り替えるという意味でのタイパ消費です。欲しい商品を探すという行為ではどうでしょうか?インターネットがない時代は、雑誌で調べるとかただひたすらに実店舗をチェックしてまわるといった行動をとっていたことでしょう。ですがECであればサクッと探せてそのまま購入できます。まさに時間と労力を節約できます。一方EC上では膨大な商品が販売されており、情報も渦巻いています。このなかから自分に合う商品を、AIを使ってレコメンドしてくれれば時間と労力の節約になります。ECは本質的にタイパ消費であり、個人の時間の使い方が多様化してきていますので、そのような観点でECがもっと見りあがってくれればと願います。

ライブコマースもタイパ消費?
最近流行のライブコマースですが、30分から1時間の尺が一般的なようです。その時間ずっと視聴するのはタイパ消費と逆行しているように一見感じます。ところが中国でライブコマースが爆発的に普及した背景を調べてみると、そのひとつに「信頼しているフォロワー(インフルエンサー)がお勧めしているコスメを買えば、あれこれ時間をかけて悩まずに済む」といった時短的なメリットを挙げている評論を見たことがあります。なるほどもしそう感じる消費者が多ければ、ライブコマースはむしろタイパ消費だと言えるかもしれません。

タイパ消費は新しい考えではない
話の毛色が少し異なりますが、ITの世界でソフトウエア品質の評価に関する国際規格としてISO/IEC9126というものがあります。この中に効率性に関する品質評価項目があり「資源効率性」「時間効率性」という特性で構成されています。ここでいう時間効率性がまさにタイパ消費の概念に似たものでしょうか。何を申し上げたいかと言いますと、タイパ消費的概念は実はあらゆるところに存在しており、決して今に始まった話ではないということです。映像視聴について特徴的に取り上げられているように思われますが、購買行動(ECを含む)やソフトウエア開発において、時間効率性というものが重要であることは上述の通りです。

タイパ消費に関する議論の本質は?
以上のように、タイパ消費は時間効率的な概念であります。そしてどの分野においてもそれは重要なテーマとなっています。本コラムでお伝えしたかったことは「タイパ消費“Everywhere”」である点です。そしてタイパ消費がトレンドワードになっている状況下、「時間効率性とは何か?」というある意味原点に戻った思考や議論があらためて重要ではないかと私は考えます。上述のようにライブコマースも見方を変えればタイパ消費ととれます。私個人はEC業界に身を置いていますので、タイパ消費に関する議論が盛り上がり、何らかの有益なサービスや機能が新たに登場し、それに伴ってEC市場が活性化すればよいのではないかと思っています。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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