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「お客さまに寄り添う」はシステムで解決できるか。

RIZAPの取り組み

どんなに「お客さま、ひとりひとりに寄り添うこと」をモットーとしていても、お店の売上が急激に伸びると対応が追いつかず「忙しすぎて社内パニック」を引き起こすことがあります。私もECを立上げて間もないころ、お客様からのメール返信が常態的に3日も滞るなどの問題を抱え、システム改修や外注コールセンター増強を繰り返すものの、最後は社内の属人的作業に戻ってきてしまい、何をやっても焼け石に水、という辛い事態を経験したことがあります。
あれから10年、そんな自身の苦い思い出も残る古巣、健康コーポレーション(現:RIZAPグループ株式会社)が、クラウド型の顧客管理システム導入を発表するというニュースを聞きつけました。
偶然にも、その発表の舞台となるカンファレンス「Trailhead Live Tokyo 2017」は、弊社もソーシャルメディア・マーケティングでお手伝いさせていただいている「セールスフォース・ドットコム」様が主催、私もプレスシートで参加していたので、写真も交えてレポートさせていただきます。

「顧客に寄り添う」3つの機能

クラウド型顧客管理サービスであるセールスフォースには、様々な機能が用意されています。今回、RIZAP社が採用したのは、1)サービス・クラウド、2)マーケティング・クラウド、3)アインシュタイン・アナリティクス、の3つの機能。具体的にどのように実装したのかが、過去セールスフォース・ドットコムの事例紹介では見たことがないくらい具体的に解説されていました。

1)サービス・クラウド

「結果にコミット」のCMでおなじみとなった「RIZAP」には、現在約1万2000人の顧客がいらっしゃいます。その各個々のお客様の自宅でのトレーニング時間やスタジオでのメニュー、体型の変化・体質などを、800名の担当トレーナーをはじめ、コールセンターや管理栄養士、店舗マネージャーがデータ共有することで「お客様に寄り添う」チーム体制づくりを目指したそうです。

セールスフォース画面で共有される顧客データ

マーケティング・クラウド

なかなか決心がつかないお客様がいらっしゃるとします。そのお客様にとって自社がベストな選択だとしたなら、しっかりと背中を押して差し上げることは、お店の重要な役割だと筆者は考えます。デジタルマーケティングにおいても、そうした「潜在顧客」に適切な啓蒙的コンテンツやゴールをデバイス上に用意することで、役割を果たすことができます。すでに契約完了した会員のお客様であっても、当初のゴールを維持・改善していただくために、ケアが必要です。

RIZAPは非会員・会員、この2つのお客様に向けて、1)のサービス・クラウドで蓄積したお客様属性にあわせて、適切なタイミングで、店舗・入会コース・サプリ・食品等をお薦めし、また、更に同社のサービスである、ゴルフ・英語・料理へも誘導することを、マーケティング・クラウドで可能としていました。

右:顧客データに基づき適切なバナー広告を表示
左:広告クリック後に、チャットボットで近くの店舗に予約完了

店舗スタッフが顧客ログを元に対応

顧客データからジャーニー計画を立案

顧客に最適化したフォローメールを作成

3)アインシュタイン・アナリティクス

アインシュタイン・アナリティクスは、「顧客関係管理」に特化されたセールスフォース・ドットコム専用の人工知能サービスです。特に「ディープラーニング」などの技術で世界的に著名なリチャード・ソシェ(Richard Socher)氏を中心としたチームで構成されており、時間軸を逆算しながら「顧客の真の意図を予想する」という手法は画期的で、人間がやるよりシステムに任せたほうがお客様に満足していただけるケースを多く持つ技術です。IBMのワトソンとも連携しており、天候予想に基づいた顧客別メッセージ配信も可能になっています。
しかし、こうした仕組みを利用するにはまず、自社の「データ収集と整理」と「提供サービスの適量化」が重要です。すで提供できているサービス以外にも、これからのしくみ作りに活かしてゆく目論見もあるようです。

フォローメールの配信タイミングは人工知能が判断

契約に至ったら、個別ケアとアドバイスで寄り添うための、iPadツールで管理。

各店舗の売り上げを1.2倍にする業務管理もアナリティクスで管理。

システム効率化で失われた「何か」を見直す。

「システム化して社内は効率化されたけど、昔のようにお客様ひとりひとりの様子が見えなくなってしまってね・・・」
先日、別のシステムを導入されたクライアント様からそんな言葉がチラリとこぼれました。もともと、このシステムには1対1の顧客関係管理の機能は開発要件に盛り込まれていなかったので仕方がないのですが、セールスフォース・ドットコムの具体例に見られるように、一昔前では最終的には人力に頼らざるを得なかった顧客サービスも、社内データや機械学習を活用することで、お店がそそぎたい「お客様への愛情」を伝えることは、技術的に可能となりつつあります。
今回、RIZAP、旧健康コーポレーションが、起業当初からの「日本全体を健康にしていく」というお客様への想いを、一人ひとりに届ける取り組みを模索しはじめたように、eコマースシステムによる儲けのしくみ「数値化・無人化・効率化」の一方で、その両極にある「情の要素・ヒト・ひと手間」を、人手が足らないからと諦めず、システムが改善できることを再認識できた出来事でした。


久しぶりの来日となったセールスフォース・ドットコム会長兼CEOのマーク・ベニオフ氏「ではわたしも会員に・・・」の一言で最後に会場をわかせていました。

宮松利博プロフィール写真

株式会社ISSUN 代表取締役 宮松利博

営業時代に開発した顧客管理システムで営業業績を伸ばし1997年にシステムを売却。2000年、EC立上げ初年度で月商1億円に急成長するも数年後に上場失敗。新たなECを3年で年商20億円に成長させ、2006年株式上場。同年に保有株を売却し海外視察の後、2011年「小よく”巨”を制す」を掲げ株式会社ISSUNを立上げ、WEB/ECの運営・制作・コンサルティングで、業界No.1に成長するクライアントを多数抱える。

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