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離脱のブレイクダウン (ザッピング考その2)

前号の本コラムで述べた(主)デマンドと(副)デマンドによる離脱現象に対する考察の「続き」です。前号のコラムと併せてお読みいただければ、よりご理解頂けるかと思います。

また、広義のユーザビリティーには、デザインやレイアウトあるいはイメージカラーと業種やショップコンセプトとの整合性など「(直感的な)分かりやすさ」なども含まれますが、以下の本文で使うUI(ユーザーインターフェイス=単純に“使いやすさ”とお考え下さい。)という言葉は、概念を明確に区別する上で狭義の(分かりやすさなどの面を除外した)入力/クリック・タッピングのしやすさや商品やサービスの選びやすさという意味でお考え頂ければと思います。

前号のコラムで、「ザッピングを含む離脱対策が進まない最大の要因は(副)デマンドと(主)デマンドを混同しているところにある様に思う」と述べましたが、その前に一番大切なことを申し上げておきたいと思います。例えば離脱の中のザッピングは通勤通学や待ち時間の暇つぶしだから「これは仕方がない」という判断の下で対策自体を諦めてしまっていないか?」という点です。

もちろんUI面での改善などについてはナビゲーションの改善やレスポンスの時間短縮、あるいはカゴ落ちユーザーへのリマインドメッセージなど諸々の施策をされているかと思います。しかしながらこれらの施策はあくまでUI面での改善です。ECサイト内において充分に”回遊”して頂いているユーザー=複数の商品ページをご覧頂き/あるいは商品をカートに入れたあとに離脱したようなユーザーに対してはUIの改善はもちろん有効な施策になります。複数ページを充分に回遊して頂いたということは、少なくとも閲覧した商品やショップコンセプトなどに対して一定の“興味”を持って頂いたということを示しているはずだからです。

まずは回遊後に“離脱”した理由を考えたいのですが、商品自体の課題(=価格や機能面/レシピやメンテなど何らかの不明点など およびニーズに合致する商品自体の有無)を除けば、狭義UIの改善=決済や納期あるいはギフト包装などの不備不明点の明確化や入力利便性の向上が鍵になってくるのは間違いないと思います。回遊後に離脱したユーザーをリアルで例えるならば、店舗の扉を開けて“入店して”商品を見廻ったあとに(その時は)何も買わずに店を出て行ったお客様と言えるでしょうか。

ちなみに商品自体の課題は、/・・・袖丈の長さ 直してもらえるのかな・・・/玩具だけど実は故人へのお供えものなんだよね。ご霊前のノシはやっぱ無理かな・・・/ダイナースのカード使いたいんだけどな・・・/冷蔵品と冷凍品 同梱してもらえるのかな・・・/新しいベッドは欲しいんだけど今持ってるベッドはどう処分すれば・・・/etc.

お客様の様々なニーズは実に多岐に渡るので売り手から見て汲み取れるものと汲み取れないものがあることは承知の上なのですが、リアル店頭の接客=商品説明および質疑応答に相当する商品説明コンテンツの中で 食べかた 保存のしかた 洗い方 コーディネートの仕方 楽しみ方 あるいは参考レシピなども含め 「〇〇の仕方」についての記述はUX(ユーザーエクスペリエンス=商品自体および商品の選択から決済や配送、また問い合わせの対応などを含めた総合的な満足度の評価とお考え下さい)的にも広義のUI的にも充実させるべき重要課題だと笹本は考えています。

様々なご意見があると思いますが、コトバと画像こそがインターフェース=情報伝達機能の基本ではないかと思うのです。まずは基本を充分に吟味した上で、次にこれを充分に活かすべくの商品選択や決済などのステップ遷移や入力関連、およびレイアウトなどの利便性を考えるのが望ましいのではないでしょうか。

入店して充分に“回遊”して頂いたお客様=商品やショップコンセプトに一定以上の興味を持って頂いたお客様の離脱に対する施策は商品力および商品ラインアップの向上とUIの改善で対応することとしましょう。もちろん今後も継続してUIの向上に努めるべきだと思うのですが、でもUIの改善だけではザッピングなどの直帰を含む離脱への対応にはならないと思うのです。またUI面については今まで様々なECプレイヤーが様々な仮説を立てて様々なデータ検証を行い、これらから導き出された様々な施策は一定の効果を上げているかと思います。一方で様々な離脱対策を積み上げてきているにも関わらず、いまだ9割以上の来訪者が静かに去って行く状況にあることも事実です。とすればUIの改善で「離脱“全体”」を防ごうとしていること自体に若干の無理があるのではないかと・・・。検証データが取りにくく多分に試行錯誤が含まれるTRYになるため、現段階としてはあくまで仮説&考察の段階に過ぎないのですが、以下は仮説&考察を具体的施策に落とし込んでいく手前の「考え方の切り口」として申し上げたいと思います。

ますは“離脱”を同一の事象と捉えているところに一つの大きな見落としがあるのではないでしょうか。アクセスログや購買率の各種データはありますが、離脱は離脱としてひとくくりのデータになりがちです。でも考えてみれば仮に購買率1%であれば99%の来訪者が“離脱ユーザー”であるわけです。99%を占める“潜在顧客”をひとくくりの“属性”や“デマンド“でかたづけてしまって良いのだろうかと思うのです。ECサイトの業種や商品特性などにより様々な考え方があるとは思いますが、最初の切り口としては【 離脱ユーザーのブレイクダウン 】から考察を始めるべきではないかと考えています。

ブレイクダウンと言っても「仮説としての大別分類」で構わないと思います。例えばA)商品単品を見て直帰あるいは商品一覧ページを見たが各商品ページには至らなかった離脱者を仮に“ザッピング/ザッパー”と定義しB)一定以上の商品ページを回遊して頂いた離脱ユーザーとリピートセッションからの離脱者を仮に“観察者/比較検討者”と定義しC)カゴ落ちユーザーを“カゴ落ちユーザーとして定義してみるという具合です。

前述でB)一定以上回遊後の離脱ユーザーをリアル店舗に例えるならば“店の扉を開けて入店した”けどそのまま店を出た人という表現をしましたが、仮にA)ザッパーをリアルに例えるなら店の前を通った時にチラッと店頭の商品に目をとめてそのまま通りすぎたウインドショッピングのお客様(?)になるかと思いますし、C)カゴ落ちユーザーならレジに行列ができていて(面倒になって/もう一度サイフと相談すべきかなと思って/持ってるカードが使えないことが分かってetc.)商品を買わずに店を出たお客様(?)になるかと思います。

リアル店舗の場面で考えればそれぞれ対応策が異なるのは明白だと思うのですが、なぜかECだと便宜上分類しただけのデータの分類名ex.離脱率/直帰率などをそのまま鵜呑みにしてひとくくりの属性として捉えてしまいがちかと・・・。結果としてアタリマエのことを見え難くしてしまっている様な気もします。(ちなみに全てのご商売の永遠の課題 「なぜお買い上げ頂けなかったのか」 という理由は、ごく一部を除いてはデータから推察することが難しく、買わなかったご本人から聞き出す以外に方法がなく、仮にその理由を聞くことができてもごく一部の人や一部の地域のご意見に過ぎないのか大多数の離脱ユーザーが感じる重要課題になるのかの判別も難しく・・・ということで文系のセンスを働かせて仮説/想定/推察を繰り返しながらの試行錯誤になるはずです。これが事前に分かれば商品や店舗の開発に失敗は有り得ないワケで・・・。)

離脱ユーザーのブレイクダウンは前号のコラムで述べた(主)デマンドと(副)デマンドのユーザーを分けて考えてみるなど様々な切り口があると思います。上級者と初心者、スマホユーザーの中でPCを持っている人といない人、法人向け商品からの離脱と個人向け商品のからの離脱・・・etc. 少なくとも「それぞれ異なる離脱の対応策」が必要になってくることはご理解頂けるのではないでしょうか。

ブレイクダウンから具体策への一例を挙げておきます。法人向けからの離脱であればex.社用で使う20万円の品物。個人で立替するのはちょっとキツイし、代引きで送ってもらうことはできるけど事務所に現金あったかな?経理に現金ある?って聞いておかないと・・・ということで社長は買えるけど総務のお姉さんは買えないかも・・・。与信リスクはあるけど全ぺージ共通のヘッダーに「請求書払いにも対応致します。」と記載してみるというTRYを検討するとか。あ、カートに入れば「銀行振込」という選択肢があることは明記されていますが、“離脱”ユーザーへの対応策ということをお忘れなく。カートに入る前に静かに去って行くお客様への対応策です。

なおTRYを“実装”する際は、これをヘッダーに記載するとデザインが/ショップコンセプトが/スペース的に他の何かを削らないと/など優先順位の取捨選択が必要かと思います。

離脱ユーザーの大別ができたら次に(各種データから抽出が可能であればなお嬉しいのですが、)ex.ザッパーをいくつかの“仮説属性”に分けて考えてみてはいかがでしょうか。例えばホントの単なるヒマつぶしザッパーとインタレストは高いけど「今は買えない」ザッパーに分けてみたり、移動中/外出中の人とそうでない人に分けて考えてみるとか・・・。ローミングを繰り返す&回線(電波)が途切れる&GPSで路上や公園&ファミレスのWiFi経由などは移動中の人かと。外出中のユーザーの中で再来訪が移動中ではなく、かつ休日&昼休み&就寝前&出勤前であればヒマつぶしザッパーではなく「今は買えない」環境にいる高いインタレストを持つユーザーである可能性が出てきます。

つまりA)ザッパーからB)観察者へコンバージョンさせる切り口になるかも・・・。もしも一定以上の割合で観察者へのステップアップが期待できるなら通勤など移動中のザッパーは大歓迎作戦 検索広告の予算を電車の中吊り広告になどのTRYを検討するとか、UUはスマホが9割なのでPCサイトは軽視してきたけど、ショップや商品の認知流布はスマホーじっくり選べるPCでのクロージングをマジメに検討してみる・・・など対応策の仮説も色々出てくるかと思います。ザッパーは全員ヒマつぶしで対応策なしのごとく、なんとなくの帰結を疑うことから始めてみてはいかがでしょうか。ウインドショッピングのお客様には、まずは入店して頂くことが先決ですよね。

JECCICA特別講師

JECCICA特別講師 笹本 克

全国各地で有名ネットショップを輩出。自治体・関連団体にもEC関連の講演や講師を務め、DeNA、Yahoo!Japanショッピング事業部へのレクチャー、ドリームゲート起業講座の他、コンサルサイトの累計約600社、多業種でのコンサル実績も豊富。


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