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「伝える」と「伝わる」のあいだにVol.29 言語化より、余白を。

「他人の言葉で自分の感情を塗りつぶされないように」
「他者との関係では過度な言語化で失われるものもある」

という呟きをX(旧Twitter)で見かけた。「昨今、言語化言語化と言うけど、果たしてそこまで必要か?」という話の中で出てきた言葉で、どちらにも頷いた。

★他人の言葉の海に溺れる
SNSに長く居れば居るほど、言語の祝福と呪いは両方受ける。
的確な言い回しでさまざまな物事を表現したりオススメしたりしてくれる人たちのおかげで、新しいものに出会えることは数限りない。インフルエンサーと呼ばれる人たちの口コミが商売になるのも、同じことだろう。

でも、それに慣れてしまうとどうなるか。
例えば自分の感想をSNSに書こうとする時、いったん誰かの感想を読みにいってしまうクセがつく。自分の感想が的外れではないか不安なのだ。外れていなければ安心して書き綴るし、何なら場の空気を若干読んだトーンにしてしまう。
または、みんなの感想を読んで回って満足して「そう、それ!」で終わってしまう。自分の感想、どこいった。

★「好き」同士も、同じじゃない
同好の士(今どきに言えば「同じ沼の民」)で推しについて語らうのはとても楽しいけど、一見同じテンションに見えてもその実、味わい方や速度深度、方向性はそれぞれ違う。
だから「あなたとは共有できるから」と怒涛のごとく「好き通信」を浴びせられると、気持ちが冷めてしまったりするのだ。

誰かがSNSで延々と自分の「好き」を述べるのはいい。見る見ないはこちらの自由だから。でもそこに宛名がついて直接届くと重たくなる。無理やりキャッチャーミットを渡され、球を受け続けているような気持ちになるのだ。

とはいえキャッチャー一辺倒かというとそうじゃない。私自身も、聞き上手でほどよい相槌を入れてくれる友人にどしどしLINEを送りつけたりした経験はある。
基本的には「好き」の言語化が得意な人と話すのが好きなのだ。逆に感想が「面白かった〜」で終わる人と話すと、「そこをもっと深堀ってくれよ!」と地団駄踏みたくなる。
結局、「もっとくれ」と「鬱陶しいな」は、その時のタイミングや個々の許容量による。それがいつも一定じゃないから簡単に逆転する。難しい。

★余白は多い方がいい
お互いの感情を細かに言語化して交わし合いたい時は確かにある。
でもそれは、「点」のほうがいいのだと思う。少しばかり足りなくて、再び自ら出向きたくなるくらいがちょうどいい。
それが「線」になり、ベルトコンベアが敷かれてしまうと一気にぐったりするし、その場のノリやミームの癖に慣れらされてしまって、自分の感情も言葉も見失ってしまいがちだ。

結局、誰の心の中にも「余白」が大事だということだ。

そこを他人の言葉で埋めようとして(または勝手に埋められて)しまうのは、精神衛生上よくない。まだ自分の言葉で埋める方がいいし、言語化できなかったとしても別にいいのだ。
基本的に、余白は余白のまま、ふわふわと漂わせている方がいい。かたちにならないもの。決めつけられないもの。これから新しく入ってくるもののために、ゆるゆると空けておくのだ。

自分の余白に敏感になったら、他人の余白も尊重したい。こちらの言葉で相手の余白を埋めてしまわないように。また、相手からたくさん言葉が出てこなくても、強要しないように。急かさないように。

★あいまいで、ゆっくりで
「ネガティブ・ケイパビリティ」というワードが最近よく耳に飛び込んでくる。急いで答えや理由を求めず、不確実なものや曖昧なもの、理解しづらいものは、そのままいったん受け止めること。焦らず決めつけず居ること。
時代的にも、そういう姿勢が必要な時期に来ているのだと思う。何がなんでも言語化!結論!確認!共有!じゃなくていい。

今は、自分がぼんやりしてる間に、どこからか言語化も正解もハックもサッと出てくる。強い言葉で「これしかないぞ!」と断言する人も登場する。

でもそれは、他ならぬ「わたし」の人生に、本当に必要なものなのだろうか。

★そしてビジネスにも
この話は、一見ビジネスにはまったく当てはまらなそうだ。何しろ商売においては「言語化」「他人の意見をたくさん聞く」「多くの人に絶え間なくアピールする」は、奨励されているから。
でも本当はみんなもう、ヘトヘトなんじゃないか。絶え間なく注ぎ込まれる言葉と情報、自分も事あるごとにそれを発信しなければいけないことに。

無理やり詰め込まず、余白をじゅうぶんにとること。多くを語りすぎないこと。絶え間なく「お得情報」を注ぎすぎないこと。イイものだからとぐいぐいアピールしすぎないこと。理想の枠にはめようとしないこと。誰かの意見を軸にしすぎないこと。いいものとダメなものを決めつけすぎないこと。

お客さま相手にも、ビジネス上の人間関係においても、そういうことが大事になってきているかもしれないと、私は思う。

JECCICA客員講師

コピーライター 近藤あゆみ

Lamp 代表
博報堂コピーライターから(株)ネットプライス・クリエイティブディレクターを経てフリーに。企業のMMVやネーミング、サイトディレクションなど手がける。恋愛コラムやブログも人気を博す。


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