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BtoB-ECに商機あり

BtoB-ECの市場規模は400兆円以上
経済産業省電子商取引市場調査によれば、2022年のBtoB-EC、すなわち企業間ECの市場規模は420兆円、EC化率は37.5%にも及びます。BtoC-EC同様、毎年その規模は拡大しており、2022年には前年比12.8%という伸長率です。物販系BtoC-EC市場規模は14兆円ですので、BtoB-ECはざっと30倍の規模になります。また物販系BtoC-ECのEC化率は9.13%ですが、BtoB-ECのEC化率はそれをはるかに凌ぐ37.5%という高い値です。にもかかわらず、BtoC-EC市場規模は毎年大きく取り上げられますが、それと比較するとBtoB-ECについては大きなスポットが当たっていません。

BtoB-ECの市場規模はEDIの流通総額のこと
そのようなBtoB-EC市場ですが、この市場についてはEDI(Electronic Data Interchange)を対象としたGMV(流通総額)の推計値と言う点に留意しておく必要があります。詳しくは各自でネット検索していただければすぐわかりますが、企業間の受発注情報のやりとりについては、1980年代から始まっています。つまりインターネットが普及する以前からISDN回線などを利用して企業間で受発注情報がやりとりされていたのです。EDIについては単に注文するということだけではなく、検品、返品、買掛、支払い照合、出荷等の業務のやり取りがEDIシステムを通じて行われます。それらを円滑に行うために、EDIINET AS2、OFTP2、JX手順、全銀手順、SFTPなどのプロトコルが採用されています。私の感覚では、EDIは企業間のECというよりも企業間の受発注から納品にいたる一連の業務を自動化するITシステムの一部と理解した方がしっくりきます。したがって、BtoB-ECの場合EC化率というよりはITによって自動化されている受発注・納品業務の率という理解が正確であると思います。

市場規模が大きくなってしまう理由
もう一点留意しておきたいことがあります。BtoB-ECの市場規模が大きくなっている理由は、製造~卸~小売という流れのなかで、それぞれの企業が売上としてカウントしている点が挙げられます。まさに売上の複数カウントです。さらに言えば、卸売業の世界は一次卸→二次卸→三次卸といったように商流が多重構造になっていることは既知の通りです。日本は小売市場規模が約150兆円であるのに対し卸売市場規模は約400兆円もあります。小売市場規模に対する卸売市場規模の大きさをW/R比率(Wholesale/Retail比率)と言う数値で表現することがありますが、米国は1.7倍程度である一方、日本は2.5倍以上あり、日本の卸売市場規模の相対的な大きさを理解できます。つまり日本の場合、卸売業界内での商流の多重構造によって、商取引市場規模やBtoB-ECの市場規模が大きくなりやすい特徴があると言えます。

EDIとは異なる「BtoB小売系」EC
さて、BtoB-ECについてはEDIのGMVと書きましたが、BtoB-ECに関し忘れてはならない存在があります。それはASKUL、たのめーるといったBtoB-ECです。ASKULについては同社発表情報によるとアカウント数は500万に達しています。オフィスで使用している方々は多いのではないでしょうか。またこれらはオフィスサプライのBtoB-ECですが、いわゆるMRO(maintenance, repair and operations)商材を取り扱うモノタロウなど、BtoB-ECは必ずしもオフィスサプライに限ったものではありません。たとえば住宅設備、店舗設備、業務用食材、医療介護、理美容など様々な分野のBtoB-ECが存在しています。オフィスサプライを含めこれらのBtoB-ECの市場規模は前出のEDIと比較すると規模は大きいわけではなく、私の推計ではざっと数兆円の前半と言ったところです。私はEDIと区別するためにこれらを「BtoB小売系」と表現しています。

BtoB小売系に商機あり
EDIは原材料の調達から完成品、そして卸を経由して小売に商材が渡るといったように、商材そのものに関するサプライチェーンが対象となっています。一方でBtoB小売系はそれらとは一線を画しており、仕事の現場で使用するモノを対象としたBtoB-ECです。この点が大きく異なります。ASKUL社やMonotaRO社の決算発表データを見れば売上が伸びていることがわかります。両社の決算発表データから、ひょっとすると伸び代は大きいかもしれないと私は予想しています。おそらくEC化率もEDIのように37.5%のような高さではないでしょう。実は意外とFAXやメールでの発注であることが多いと耳にします。またEDIにも共通して言えることだとは思いますが、企業間取引の場合、全国に営業所を構えている企業が多く、人を通じたアナログな注文が多いような気がしています。企業間取引の場合は当事者企業間での信頼性が重視されますので、アナログな注文が今でも主流なのかもしれません。しかしながらDX化の推進および人手不足と言う点からBtoBでもEC化の必要性が高まるのではないでしょうか。私自身、特にBtoB小売系に大きな商機を感じており、関係者の方々の積極的な取り組みを期待しています。

BtoB-EC市場規模およびEC化率の推移(単位:兆円)

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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