アパレルの返品
アパレルをEコマースで購入することは、サイズや色合いの観点から以前はそれほど一般的でありませんでしたが、Statisticaのデータによりますと、2021年2月のアメリカにおけるアパレルおよびアクセサリーの小売総売上高に占めるEコマースの割合は、なんと37.9パーセントを占めるほどに成長しています。その理由として、オンラインでアパレルを購入することにそれほど抵抗がなくなったことに加え、新型コロナウィルスによるパンデミックの影響で、実店舗での購入が難しかったことも考えられます。また、ブランド側が返品を容易に受け入れるようになったという側面も、試着もせずにオンラインで購入するという敷居を低くしていると思います。現在ではほとんどのブランドが返品を受け付けていますが、果たして返品された衣類はどこに行くのでしょうか。
電化製品などは、箱が開けられていたり、箱の中の梱包がきれいになっていなかったりするのを店舗で見かけ、明らかに返品物だなとわかるのも多いです。Amazonでは、すでに使用されている形跡がある商品が送られてきたこともあります。返品された衣服も同様に、きれいにたたまれ、店舗の在庫や棚に戻ると思われる方が多いかもしれませんが、実はそうでもないようです。
ほぼ完璧な状態で返品されたものは、在庫として戻ることもあるかもしれませんが、衣類の多くは仲介業者や再販業者のネットワークに入れられたり、慈善団体に寄付されたり、再販に適さない場合はリサイクルされたりするようです。さらには、そのプロセスにおいて発生する膨大な二酸化炭素排出量を考慮して廃棄されることもあるようです。一部の高級ブランドは、知的財産やブランド価値を守るために、返品された衣類が再販業者などのネットワークに渡らないように、あえて廃棄することを選択しているところもあるそうです。最近は、そのまま廃棄されることによる環境への悪影響を削減するため、返品された衣服を回収、修理して、再販する新興企業もでてきています。
アパレルの返品はオンラインでの販売の25パーセントを占めており、かなり驚異的な返品率となっています。また、返品処理のために小売業者は元の価格の39パーセントもの費用がかかる可能性があるというデータもでております。そのため、返品理由の大きな一つであるサイズに関する課題点を解決するため、AIソリューションや仮想現実などのテクノロジーを駆使して、少しでも返品率を減らすよう対応するブランドも増えております。また、最近の傾向として、返品期間の短縮、返品時の手数料徴収など返品ポリシーの変更を行うブランドも増えています。現在は、ZaraやAbercrombie & Fitchなど、小売業者の約40パーセントが返品手数料を請求しています。
今まではあまり深く考えずに衣類の返品をしてきましたが、廃棄の可能性など返品後のプロセスを見ると、少しでも返品を減らす努力をしなければと改めて痛感しました。
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。