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AI時代にECのCRMはどこまで自動化できるのか? 〜自動化すべき業務と、人が担うべき「ブランド体験設計」の境界〜

最近、EC事業者と話していると必ず出てくるテーマがあります。

「CRMって、AIでどこまで自動化できるんでしょうか?」

生成AIの普及によって、メール文面の作成や顧客分析、さらには配信タイミングの最適化まで、AIが担える領域は急速に広がっています。 その一方で、「CRMは本来、人がやるべき仕事ではないか」という声も根強くあります。

実際のところ、ECのCRMはどこまで自動化できるのでしょうか。

結論から言えば、CRMの多くの作業はAIやシステムで自動化できるようになっています。 ただし、顧客との関係を設計する部分は、人が担うべき領域として残り続けるでしょう。

重要なのは、「AIか人か」という二択ではなく、役割を分担することです。

CRM担当者の仕事はなぜ忙しいのか

以前、ある健康食品ECのCRM担当者からこんな話を聞きました。

その会社では、毎週CRM施策を検討する会議が開かれていました。
議題はシンプルです。

「今週は誰に何を送るか」

例えば、

  • 初回購入後30日の顧客
  • 定期購入を解約した顧客
  • 60日未購入の顧客

など、対象セグメントごとに施策を考えていきます。

しかし実際のCRM業務は、施策を考えるよりも準備作業に時間がかかると言います。

担当者は次のような流れで作業していました。

  1. 購買データから対象顧客を抽出
  2. 配信リストを作成
  3. メール文面を作る
  4. 配信設定
  5. 結果の集計
  6. レポート作成

CRMの仕事のはずなのに、気づけば作業の大半が配信オペレーションになっていたのです。

担当者はこう話していました。

「本当は顧客を分析したり、LTVを上げる施策を考えたりしたいんです。でも毎週の配信準備で時間がなくなってしまうんです」

これは多くのEC企業で見られる状況です。

自動化できるCRMは想像以上に多い

そこでこの会社が取り組んだのが、CRM業務の自動化でした。

具体的には、顧客行動に応じた配信をシナリオ化しました。

例えば、

  • 初回購入7日後:レビュー依頼
  • 初回購入30日後:リピート提案
  • 90日未購入:休眠防止キャンペーン
  • カート放棄:リマインド配信

こうした施策を一度設計すれば、顧客の行動に応じて自動で実行されます。

さらに最近では、AIが次のような作業も支援するようになっています。

  • メール文面の生成
  • セグメント分析
  • 配信タイミングの最適化
  • レポート作成

つまり、CRM業務の中でも作業的な部分はかなり自動化できるようになってきました。

実際、この会社ではCRM業務の工数が大きく減りました。

しかし興味深いことに、CRM担当者の仕事は減りませんでした。
むしろ別の仕事が増えたと言います。

自動化で生まれた「考える時間」

CRMの作業が減ったことで、担当者が最も時間を使うようになったのは顧客分析でした。

例えば次のような問いです。

  • LTVが高い顧客はどんな特徴があるのか
  • 初回購入から離脱する顧客はどこで減るのか
  • 人気商品とリピート商品の違いは何か

これまで時間が取れなかった分析に、ようやく取り組めるようになったのです。

すると、いくつか興味深い発見がありました。

例えばそのECでは、
2回目購入までの期間が45日以内の顧客はLTVが3倍高いということがわかりました。

そこで「初回購入から45日以内に2回目購入を促す」シナリオを強化しました。

その結果、リピート率が改善したと言います。

つまり自動化によって生まれたのは、CRMを考える時間でした。

CRMは「効率化の仕事」ではない

ここで重要なポイントがあります。

CRMは単なるマーケティング施策ではありません。
顧客との関係づくりです。

以前、ある食品ECの担当者がこんなことを言っていました。

「CRMって、顧客との会話に近いんですよね」

どのタイミングで声をかけるのか。
何を伝えるのか。
どんなブランド体験を届けるのか。

こうした設計は、ブランドの人格が最も表れる場所でもあります。

ECサイトのデザインや商品ページも重要ですが、CRMは顧客と継続的に接点を持つコミュニケーションです。 だからこそ、ここにはブランドの考え方や温度感が色濃く出ます。

もしこの部分までAIに完全に任せてしまうと、どうなるでしょうか。

AIは多くのブランドのデータをもとに最適化を行います。 その結果、効率的なコミュニケーションは生まれますが、ブランドごとの個性は薄れていきます。

つまり、CRMのブランド体験までAIに委ねてしまうと、ブランドは徐々に均質化してしまう可能性があります。

CRMは単なる販促ではなく、ブランドと顧客の関係を育てるコミュニケーションです。 だからこそ、この部分は人が設計する価値があるのです。

AI時代のCRMの理想形

AIが進化したことで、CRMのあり方も変わりつつあります。

これからのECでは、自動化できる業務は徹底して自動化することが重要になります。

例えば、

  • 配信オペレーション
  • セグメント作成
  • レポート作成
  • 文面の下書き

こうした業務はAIやツールが担えばいいでしょう。

その代わり、人が取り組むべき仕事があります。

  • 顧客理解
  • シナリオ設計
  • ブランド体験の設計
  • LTV向上戦略

つまりAIの役割は、CRMを代替することではなく、CRMを強くすることです。

AIが作業を引き受けることで、人は顧客理解や戦略設計といったコア業務に集中できるようになります。

CRMの価値は「人が考える部分」にある

ECのCRMは、これからますます高度化していくでしょう。

AIによって自動化は進み、
CRMの運用負荷は確実に減っていきます。

しかしその一方で、EC事業者にとって重要になるのは

どんな関係を顧客と築くのか

という問いです。

これはAIだけでは決められません。

だからこそ、AI時代のCRMで重要なのは

自動化することではなく、
自動化によって何に時間を使えるようになるか

なのだと思います。

AIに任せる仕事と、人が担う仕事。
その役割分担ができたとき、
ECのCRMは本来の価値を発揮するのではないでしょうか。

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客員講師

中村 隆嗣

得意分野/CRM

2014年(株)メディックスに入社し、大手製薬会社や外資系アパレルブランド等メーカー直販ECのコンサルを手がける。2018年にアクションリンクを立ち上げ、2023年ファブリカコミュニケーションズにジョイン。現在に至る。

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客員講師

中村 隆嗣

得意分野/CRM

2014年(株)メディックスに入社し、大手製薬会社や外資系アパレルブランド等メーカー直販ECのコンサルを手がける。2018年にアクションリンクを立ち上げ、2023年ファブリカコミュニケーションズにジョイン。現在に至る。

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