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ECサイトで起きた事件簿

EC業界は、新たな販売チャネルとして急成長してきました。今ではさまざまな商品がネットを通じて購入できるようになりました。ただ、その一方で業界を取り巻く環境もどんどん変わってきました。急成長したために法律が追いつかず、ガイドラインも不透明なまま、ブラックなのかホワイトなのか、グレーなのか分からず、暴走してしまった事件も多くあります。今回は私が経験してきた事件をご紹介いたします。

ある日、会社に電話が掛かってきました。
「社長、新宿警察署からお電話です。」管理部の女性がわざわざ走って伝えに来ました。
小さな声ではあるものの、新宿警察署というキーワードに、同じフロアのスタッフ皆が耳をダンボにしているのが分かります。
「もしもし、川連一豊です。」わざと落ち着いた声で話してみる。
「あっ、社長さんですか?新宿警察署の◯◯です。」
「はい、私が代表の川連一豊です。」どうでも良いのですが、私は必ずフルネームで答えます。
「実は、お宅が契約しているカ◯◯◯◯スは御社のサーバを使ってます?」
「えっ?はい、サーバを契約していただいて使っています。」
この瞬間、ついに来たか・・・と感じました。
このECサイトK社は以前からうちのサーバを使用していて、つい先日もその該当するサーバがDOS攻撃を受けたばかりで、当時の2chにも、サーバを契約している会社(当社)を攻撃したという犯行声明も出ていました。つまりそのくらいK社はユーザーに対してモラルに欠けた行動を起こしていました。
新宿警察署は、落ち着いた声で、
「まあ、御社がどうのこうではなく、まずは状況だけお聞きしたかっただけなので・・・。また連絡します。」とわずか2分程度の会話でしたが、初めて警察と話をしたこともあり、かなり緊張したなと覚えています。
昔から契約していたK社は、メルマガを1日4回も全配信するECサイトで、どこで集めたかわからないメールアドレスをサーバに入れて、メルマガを配信しまくっていました。
今では、特定電子メール法がありますので、このようなことは起きないのですが、当時はまだこのような配信をしても特に罰せられることはありませんでした。
残念ながら、すぐにK社に連絡をして状況を説明してサーバの解約依頼をしました。法律には違反していないものの、間違いなくモラルに欠けたことを他のサービスでやっていると間接的に私も知っていましたし、度を越していることは間違い有りません。K社の責任者はすぐに了解してくれました。その後、K社がどうなったかはよく分かりませんが、連絡もお店も無くなってしまいました。

その社長は、豪快な方で私と会うと、いろいろ指摘してくれました。
「川連、おまえはもうちょっと良い服着たらどうだ?情けない」とか
「ここは俺が全部払うから、次回は川連、お前が全部払え!」と言っていましたが、私がお金を払うことは一切ありませんでした。
ECで100億円以上販売していたN社の社長は、文字通り豪快でしたが、細かな気遣いもされていました。
しかし、そのお店がある日、突然ECサイトを閉じてしまいました。すぐに関係者や周りの知人に聞いてみたところ、警察が入って調べられているということでした。あとで分かったのですが、ポイント詐欺だったようです。

今はテレビやネットを見れば、どこもポイント!ポイント!で、ポイントが付かないECサイトはダメだ!と判を押されてしまいます。当時、100億円以上売り上げていましたから、ポイントでの入金や支払いもかなり多かったと思います。どのような手口でポイント詐欺を行ったかは分かりません。ポイント詐欺をしなければならないほどのことがあったかも分かりません。ただ、これはEC関係の法律というより、犯罪として代表の方が捕まったことになります。
このお店は、今はもうありませんし、優秀なスタッフの方々も今はどこにいらっしゃるかも分かりません。
今の私の会社では、提案書にも契約書にも、お客様側に法律遵守するようにと、必ず入れるようにしています。せっかくサービスをたくさん使ってくれていても、ある日いきなり契約が無くなってしまうのも困るからです。

この他にも、ECに絡む事件はとても多いです。。ご紹介できない事件も多いです。トマト事件やいくら事件、サーモン事件もありましたし、薬機法に絡んで捕まってしまった社長も何人も知っています。億の罰金を支払った会社もあります。夜逃げは10件以上ありますし、出資するよと言われてお金を使いすぎて倒産した会社もありますし、レモンガス社のようにいきなり決済を止めた会社もあります。SSLがある日突然ルートが変わってSSLが通らなくなったことも有りました。モールからいきなり退店させられたお店も多くあります。それは法律よりもモラルの問題も多くあり、法律の改正を知らなかったために起きた事件も多くあるのです。

2023年現在、ECに関わる法律はたくさん出来てきて、法律自体もダブっているところも多くあります。特定商取引法と民法改正を両方確認しなければならないことも多々あります。商材によっては、景品表示法や食品表示法、薬機法などいろいろ確認する法律やガイドラインがあります。今もいろんなサイトを見ると、かなりヤバそうなコピーを使っているお店が多いです。「究極の・・・」なんてよく表示するな、捕まるぞと思います。

昨今、特に課題になっているのは消費者庁に関係する、この優良誤認表示です。これは制作会社として特に気をつけなければならない点です。特定商取引法も改正されてどんどん厳しくなっています。おそらく今後も法律の改正が続くと思います。それは業界がまだまだ伸びていることもありますが、海外ではもっと厳しい法律やガイドラインが続々と出ているためです。2024年問題となっている物流問題もあります。法律が変わるとECサイトの構築にも影響出ますし、EC運営にも大きな影響が出てきます。法律の話をすると関係無いよというEC事業者が多いのも間違い有りません。2022年6月の特定商取引法改正があった時も、「分かった。修正した特定商取引法表示のページをコピペすれば良いから、そのECサイト教えて!」と言われたときには愕然としました。こういう甘い考えは早く捨てたほうが良いと私は思います。

川連一豊プロフィール写真

代表理事 川連一豊

そろばん2級 書道6段 ヤマハデジタルプロコース卒業
浜松南高校普通課卒業  愛知大学法律経済学部卒業
学生時代より音楽活動を行う。1988年ヤマハ世界大会出場
ベストキーボードプレイヤー賞2年連続受賞などTVCM、TV番組、CGの制作に関わる。
インターネットでは楽天市場 2003年ジャンル賞受賞
楽天にて、モバイル講師  HTMLメルマガ講師
他ネットショップに関わる講師多数
2004年6月30日までソフトプレン株式会社営業課長
ネット店舗の店長兼任
2004年7月1日 独立
2004年8月11日 有限会社SAVAWAY設立
2009年9月ネットショップのおもてなしを出版
2012年システム流通総額1500億円を突破
取引数3500社以上のネットショップ、ネット通販企業
50名以上のECコンサルタントを輩出

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