楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol.52 ブランドとは何か?①
ブランドは印象を創り上げる
今回はブランドについて考えてみたいと思います。そもそもブランドとは何から始まっているのか?ブランドの語源は、牧場の所有者が自分の家畜などに「焼印」を施し、他者の家畜と区別するために行われた行為を表す、北欧の言葉に由来していると言われています。そして家畜のみならず、ワインの樽やチーズにも生産者名が刻印されるようになり、これらは創業者・所有者・生産者などを示すためのものでした。その後、アメリカの経営学者フィリップ・コトラーは、ブランドを次のように定義付けしました。
『ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせである。』
つまりブランドとは「名称・ロゴ・キャッチコピー・デザイン」など、他社と区別するための要素を使った特定な「銘柄」を指します。その銘柄とは顧客の認識の中で、商品本来の「機能価値=有形価値」に加え、機能プラスαの「情緒価値=無形価値」を持つ、顧客にとって時間やコストをかけてでも得たい「意味のある価値=何らかの思い入れ」であり、端的に言えば「印象」と整理できます。従って「ブランディング」とは「印象創り」と言えます。「ブランド」と言えば、「高級商材+ロゴ=ブランド」みたいなイメージがありますが、印象ですから、どんなモノやサービス、小さな企業でも「ブランド」を持つことが可能です。
似て非なる言葉「製品・商品・ブランド」
この3つは何が異なるのか?よく質問を受けることがあります。漢字を見ると分かりやすいのですが、先ず製品は「製造した品」と書きます。これは、モノでもサービスでも何らかの新製品(プロダクト)を開発した段階を指し、まだネーミングやデザイン、価格も決まってないので、世の中に出せる状態ではありません。そして次の商品に繋がりますが、「商いを行う品」と書きますので、その言葉通り価格やネーミングなどが決まって、新商品として発売できる段階を指します。では新商品はブランドか?と言えば答えは否です。ブランドとは先ほどの定義通り、商品本来の機能に加え、何らかの印象を抱く状況であるため、ブランドは時間をかけて育てていく訳です。【図①】
何らかの印象を創るには、機能価値に加え「情緒価値」が必要ですから、先ほどのネーミングやロゴ、デザイン等、これらを組み合わせたクリエイティブな要素を駆使して、ブランドを創り上げていく訳です。
では何故「情緒価値」が必要なのか?それは今日の成熟した社会では、機能が良いのは当たり前であり、機能面だけで比較をすると、顧客は同じように見えてしまうため、機能プラスαの顧客にとって価値ある印象が必要だからです。
顧客は何故ブランド品のバッグを買うのか?機能だけで比較したら同じである1万円のバッグと、10万円のブランド品のバッグ。この9万円の差である情緒価値、つまり自身にとって価値ある印象に差額である9万円の対価を支払う訳です。
様々な階層に分けられるブランド
一口にブランドと言っても、幾つかの階層に分けて3つに整理することが出来ます。先ずは「製品ブランド=プロダクトブランド」です。先ほどの話は製品ブランドの例です。ある特定なモノやサービスである製品そのもののブランドであり、例えば自動車であれば「クラウン・カローラ・プリウス」などは製品ブランドです。
次に「企業ブランド=コーポレートブランド」です。クラウン、カローラやプリウス等を製造している会社は「トヨタ自動車=TOYOTA」であり、これが企業ブランドです。そしてもう一つは「事業ブランド」です。トヨタ自動車の高級車ブランドである「レクサス」は、トヨタ自動車の事業ブランドとして整理することが出来ます。【図②】
先ほどもお話ししたように、今日の成熟社会では「ブランド」がとても大切であり、ブランディングは、小さな会社の小さな製品でも十分に可能です。そのあたりの背景や、ブランドの利点を次回お話しします。
JECCICA客員講師 鈴木 準
株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント