3D技術とバーチャル試着
オンラインでアパレルを購入する際に躊躇しがちな理由の一つとして、衣服のサイズやフィット感が自分にマッチしているかどうか不安になる点があると思います。商品が自分に合っているかどうか自信が持てないために購入を見送るか、またはサイズ合わせのために実店舗まで足を運んだり、あるいはサイズが合わずに何度か返品した経験のある人は多いでしょう。このような背景の中、大手アパレルのGapがEコマースのスタートアップ企業Draprを買収したことが最近話題になっています。Draprは、自宅でバーチャルに服を試着して、より良いフィット感を得られるテクノロジーの開発、提供をしています。
Draprは、さまざまな用途の3D技術に取り組んできた3名の創業者により昨年バークレーで設立され、APIによるオンラインストアとの接続、商品データの同期とカタログのデジタル化、カスタマイズ可能なウィジェットによるウェブサイトへのシームレスな統合により、開発者を必要とせず、パーソナライズされた包括的なフィット体験を実現します。Draprによると、実はほとんどの人が自分の正確なサイズを知らないか、数字だけではわからない特定のタイプのフィット感を求めているようです。また、オンラインでのアパレル購入にあたり、サイズ表を利用する人は10パーセント未満とも推定しています。
Draprは昨年の創業ですが、すでに顧客も擁しています。アイロンやドライクリーニングを必要としない、吸湿発散性に優れたシワになりにくい生地を使用したメンズドレスシャツで有名なMizzen+Mainは、新規顧客向けのオンライン体験を向上させるためにシャツの様々なフィット感をより良くイメージできる方法、およびオンラインでのコンバージョン率を高め、平均注文額を増加させる方法を追求し、最終的にたどりついたのがDraprでした。Draprの開発チームは、Mizzen+MainのストアにDrapr Shopifyプラグインをインストールし、Mizzen+Mainの顧客層の多様性をカバーするために作成された600人以上の統計的な男性の体にMizzen+Mainの服をドレープさせ、体型、服のサイズ、ポーズごとに16,000以上のユニークなフィット感を表現したバーチャル試着画像の作成およびウェブサイトとマッチングするようカスタマイズを行いました。プラグインのインストールから実用開始まで要した期間はわずか1ヶ月で、結果として23パーセントのコンバージョン率の向上をもたらしたそうです。
(イメージは、Mizzen+Mainホームページより抜粋)
高度な3D技術により必要なサイズとフィット感を効率的に見つけられることは、オンラインにおけるアパレル購入の障壁を取り除き、返品率の低下、顧客満足度の向上、リート購入の促進、口コミによる新規顧客の獲得等さまざまな効果をもたらします。今回のGapのDrapr買収は、Gapに大きな投資対効果をもたらすことでしょう。
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。