透明化法について知る(第3回)
透明化法 は、特定のECモール(amazon.co.jp、楽天市場、Yahoo!ショッピング)を利用して商品を販売する事業者(以下「事業者」といいます。)とECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)との取引関係(出店契約など)を、より透明で公正なものにするために、ECモール提供者に一定の義務を課している法律です。
本コラムでは、読者の皆さまのビジネスに関係する透明化法について、わかりやすくQ&A形式で解説させていただきます。今回は、第2回に続き、ECモール提供者が事業者等に対して行う情報の開示について、よくある質問を交えてご説明します。
(過去のテーマ…第1回:透明化法について知るメリット・透明化法が規律している対象、第2回:ECモール提供者による提供条件の開示)
Q 透明化法に基づき、ECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)は、特定の行為を行う場合、事業者に対して情報の開示をしなければならないとのことですが、具体的にはどのような場合ですか? |
A 大きく分けて以下3つのパターンが定められています。
①ECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)が事業者に対し、取引条件によらない取引の実施を要請するとき、取引の一部を拒絶するとき、そして、売上金の支払を留保するときには、その「内容」を事業者に通知しなければなりません。また、通知を行うときには、原則として、これらの行為を行う「理由」も開示しなければなりません。
②ECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)が事業者との関係で取引条件の変更を行う場合には、その「内容」と「理由」を通知しなければならず、さらに、当該通知は、原則として、「事業者が当該変更に対応するための作業・調整に要すると見込まれる合理的な日数を確保した日」までに事前に行わなければなりません。なお、そのような作業・調整が不要な場合でも「15日前」までに通知しなければなりませんが、この場合には、事業者が変更内容について同意したときは15日間が経過したものとみなされます。
③ECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)が事業者との関係で取引の全部を拒絶する場合には、その「内容」を通知しなければならず、原則として、「30日前」までに、「理由」とともに通知しなければなりません。
Q 上記①のパターンのうち、“取引の一部を拒絶するとき”とは、例えばどのような場面ですか?例外的にその「理由」が通知されないのは、どのような場合ですか? |
A ECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)が、事業者が販売している特定の商品について、商品自体に問題があるなどの理由で当該商品(のみ)を販売できない状態にする場面が典型例です。上記のような場面等を取引の一部拒絶と捉えています。この場合、一部拒絶の「内容」を事業者に通知しなければならず、また、原則として、当該一部拒絶行為を行う「理由」も開示しなければなりません。
上記①のパターンで、どのような場合に例外的に「理由」を開示しなくてよいかは、透明化法の省令に規定されています。例えば、通知の相手方(事業者)が反復して取引条件違反を行い、ECモールの事業の運営に支障を生ずるおそれがあると認められる場合が挙げられます。そのような事業者に一部拒絶の「理由」を開示すると、ECモールのルールを潜脱する手がかりとなる情報を与えてしまうためと考えられます。
Q 上記③のパターンである“取引の全部を拒絶する場合”とは、例えばどのような場面ですか?例外的に「30日前」に通知されなかったり、その「理由」が通知されないのは、どのような場合ですか? |
A ECモール提供者(アマゾン、楽天、ヤフー)が事業者との契約を解除する場合が典型例です。契約解除以外にも、ECモール提供者による処分には様々な内容がありますが(例:退店処分、アカウント停止処分)、事業者が引き続き、ECモールの重要な機能を利用することができるか、ECモール提供者との関係で利用者専用の連絡手段を利用することができるか、などの事情を総合的に考慮し、取引の全部を拒絶していると評価される場合があります。このような場合には、原則として、30日前までに、理由とともに、その内容を通知しなければなりません。取引の全部拒絶は事業者に大きな影響を与えることから、その前に、事業者がECモール提供者に事情を説明したりする機会を確保することが目的と考えられます。
例外的に、「30日前」の通知なく直ちに取引の全部拒絶を行うことが認められる場合として、例えば、サイバーセキュリティを確保するため、又は、詐欺その他不正な手段を用いた侵害行為や公序良俗に明らかに反する行為に対応するため、速やかに取引の全部拒絶を行う必要があると認められる場合や、通知の相手方が反復して取引条件違反を行い、ECモールの事業の運営に支障を生ずるおそれがあると認められる場合などが挙げられます。後者の場合などには、「理由」の通知も不要とされています。
弁護士 角田 美咲
長島・大野・常松法律事務所
2018年弁護士登録。企業のコンプライアンスや不祥事への対応を行っている。
経済産業省で透明化法の運用を担当(2021年4月~2022年12月)。