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ふるさと納税に関するファクト整理

先日、総務省よりふるさと納税に関する制度の一部見直しが発表されました。その内容とは、ポータルサイトに対し寄付した人へのポイント付与を禁止するものです。これに対し楽天グループの三木谷会長が異議を唱え、“「ふるさと納税へのポイント付与禁止」に反対するネット署名へのお願い”と題したサイトも立ち上がっています。

ふるさと納税制度はネット上で手続きが行われることが大半であり、寄付に対して返礼品を受け取るわけですので(大部分は地方産品の食材・食品)、ある意味ECと似通ったものです。そのようなこともあり、EC業界に身を置く者として、私はふるさと納税制度の動向を注意深く見ております。今回の件について、制度のありかたに関する議論はこの場は適切ではありませんので、参考までにふるさと納税のファクトについて、以下整理したいと思います。

受入寄付金額と返礼品調達費用
2022年度の全国の受入寄付金の総額は9,654億円です。2019年を除き毎年この金額は前年比で増加しています。したがって2023年度は間違いなく1兆円を突破していることでしょう。一方で返礼品調達費用ですが、寄付金額に対する返礼品の金額の割合は3割以下と定められていますので、2023年度の返礼品の調達費用は3,000億円に達しているものと推測されます。

前述の通り、返礼品の大部分は地方産品の食材・食品です。私は全体の9割程度がそれらで占められているのではないかと思っています。よって単純計算で2,700億円の食材・食品がふるさと納税制度を通じて消費者の手に渡っていることになります。厳密にはECではありませんので、純粋にEC側から見ると、傍らで巨大なお金が動いていることがわかります。

都道府県間での大きな格差
総務省は受入寄付金額と返礼品調達費用について、都道府県別にその実績を公開しています。2022年度を見てみると、トップは北海道で660.5億円。次いで鹿児島県311.7億円、佐賀県266.4億円、宮崎県264.2億円、大阪府254.2億円となっています。反対にワーストを見てみると最下位井は富山県の10.9億円、次いで徳島県12.6億円、山口県15.3億円、奈良県17.9億円、栃木県23.8億円です。北海道と富山県では60倍以上の差があることがわかります。つまり、ふるさと納税制度では地域間格差がとても大きく、魅力的な食材・食品を多く抱える地域が有利ということになります。受入寄付金額が伸び悩む地域は、頭が痛いのではないでしょうか。

支出について
NTTデータ経営研究所の試算では、2022年度の全国の受け入れ寄付金の総額は9,654億円のうち、約25%に相当する2,471億円が仲介サイトの手数料や事務委託料として支払われているとメディアが報じています。これとは別に返礼品調達費用が3割弱程度あるわけですので、純粋に各自治体が受け取る寄付額は全体の半分かそれ以下ということになります。自治体側からすれば、「半分であってもないよりはまし」という思考にはなるでしょうか。諸々経費が掛かることは致し方ありませんが、それにしても、外部流出額がそれなりの金額規模であることは事実であります。

東京都の税金流出額は膨大
東京都には多くの人々が生活しています。よってふるさと納税制度は東京都の立場からすると、税金流出という由々しき事態になっています。東京都主税局によると、これまでに累計で3,000億円上の住民税がふるさと納税制度により流出したと発表しています。このような事態を受けて、23区の区長で構成される「特別区長会」は、「ふるさと納税」制度の抜本的な見直しに関する共同要請を総務大臣あてに発表しています。

東京都の財政事情は地方よりもはるかに良いから問題ないのではという見解もあるかと思います。とはいえ受入寄付金の総額がまだ伸びる勢いです。このままだと流出額は減ることはなかなか想像できませんので、何も変化が起こらなければ、東京都としては頭痛の種になり続けることでしょう。

以上ふるさと納税に関わるファクトを整理してみました。返礼品競争が過熱していますし、前述のように地域間格差が大きいことから、私は今後さらなる見直しが行われるのではと予想しています。そう考えると今回のポイント付与の禁止は今後の制度改定の序章に過ぎないのかもしれません。上述の通り地域間格差はありますが、ふるさと納税制度によって恩恵を受けている地方の事業者は多くいることでしょう。そのような方々にとって今後の制度改定の動きは注目すべきテーマではないかと思います。

ふるさと納税受入額寄付金額と返礼品調達費用の推移(単位:億円)

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 本谷 知彦

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役


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