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今後、ショップに求められるのは「売る」ではなく「作れる」人?

以前、ネットのショッピングモールの役員に、ネットは様々な革命を起こす中でネット通販が果たす役目についてこんな風にして話してくれたことがあった。

 「ものを書く人に光を当てたのは『ブログ』。ものを話したり表現したりする人に光を当てたのは『YouTube』。であるとすれば、ものを売る人に光を当てたのが『ネット通販』ではないか」。

 ものを売るのが得意な人が戦いあう土俵こそがネット通販である、というのだが、確かにその通り。しかし、それも最近はあまりに皆が「商品を販売できる」ようになり、それだけではダメで、今本当に必要なのは「ものを作れる人」なのではないかと思っていて、その割、ネット通販においてその議論が不足しているようにも思う。
 
マグネットを使った何気ないけど使い道のある発想
 そんなわけで、僕は1月20日〜22日、幕張メッセで、開催された「国際雑貨エキスポ 春」の会場へ来た。要はメーカーやその思いを持った人の声に耳を傾けてみたくなったのだ。

今後、ショップに求められるのは「売る」ではなく「作れる」人

 僕が気になったのが、株式会社マグエバーという会社。面白いのは、「マグサンド」という商品で、名前の通り二つのマグネットが入っていて、それを「サンド」して使うものである。

 例えば、窓ガラスの「表」と「裏」両方にこの「マグサンド」のマグネットをつけて、お互いその力で挟む仕様になっている。そのおかげで、家にタオル掛けがないような住宅であっても、いつでもどこでも挟み込める場所さえあれば、その片方のマグネットについたそのホックを利用し、ものをかけることができるという発想だ。よくお風呂場に、タオル掛けが少ないなどということはないだろうか。そんな場合などは、これひとつで解決してしまうわけだ。

こだわりとお客様の求めるものの均衡に愛がある
 何気なくありそうでなかったこの発想こそが、ゼロイチで何かを生み出す精神の塊であるように思う。マグネットには窓などを傷つけないように、シリコンが覆われていて、この中身のマグネット自体は中国で生産されている。一方、シリコン部分は、マグネットに被膜するためにわざわざマレーシアの工場まで持ち込んでいるそうで、シンプルな構造ながら、こだわりは並ではない。

 そこまでするのはマグネットが錆びやすく、シリコンに小さな穴があれば水分が入り、寿命を短くすることから、「世界を渡り歩いて、マレーシアの工場を探し当てた」と代表取締役 澤渡紀子さん。

 それは、日本で作れないのか、と問えば、「それでは現在の価格1280円(税抜)よりも大幅に高くなるのです」と言って、品質ではないお客様の買いやすさにもこだわる、メーカーならではの愛が垣間見える。

 マグネットの会社でありながら、「暮らしの形を作る」ものづくりにこだわっており、一見するとマグネットの使い道を文具や雑貨の世界に持ちこんで、新たな価値をもたらしている。マグネットへのリスペクトが大きいからこそ、その魅力をさらに最大化させるために、違う“発明”をしてみせた点に拍手を送りたい。

伝統技術への敬意と、若い感性とのハーモニー
 それ以外でも、この展示会では、株式会社アイワ工業が展示していた「グッドグラス」という雑貨が目を引いた。これは台湾で生み出されたグラスであり、株式会社アイワ工業はその日本総代理店であって、肝煎りの新規事業なのである。

 「グッドグラス」は、色のついた飲料水を注ぐと、動物が浮かび上がるというもので、その理由は吹きガラス製法によりグラスの内側が、動物の紋様になるようにハンドメイドで作っているからである。

 思うに、職人の伝統技術をリスペクトし、それをモチーフで取り入れながら、しっかり時代背景を踏まえている。また、楽しい食卓を意識した若手のデザイナーの感覚と感性が冴えている。この辺の着想は見習うべきところがあるように思う。既成概念にとどまっていては、何も始まらないのだ。

小手先では生まれない、ものづくりの魂
 そもそも、アイワ工業は配管などの工法の提案や、工事を請け負う会社であり、全く畑違いな企業であったが、この台湾の逸品にふれ、代表取締役の榊原和彦さん自身が感銘を受け、同社が海外事業部で日本独自の動きも模索して、現地の商品に敬意を示しながら、日本で新たな文化を構築しているのだという。

 その浮かび上がる動物も、いわゆるオーソドックスな犬などのキャラクターだったのが、同社の動きにより、国内の有名キャラクターとのコラボを果たすなどして、伝統と新進気鋭の発想の裾野はどんどん広がっている。

 世の中を変える本気の商品群はいずれも既存の発想に捉われることなく、新しい感性を取り入れながら、何を提案していくかが大事だ。そのことをこの事例は示してくれているように思う。

その店は何をリスペクトしていて何を出す意味があるのか
 以前、美容健康の商品に関わっていたときに、自らが「オリジナル商品を作りたい」というショップから「とにかくアサイー(鉄分豊富な栄養素)を入れたもの、と上司が言っています」とだけ言われたときに、愕然とした想いがある。

 でも、間違いなく、流行りのものをただ取り入れて作ったのでは、到底、ヒットは生み出せないし、その店がその商品を出す意味合いも見えてこない。
 日頃、ショップは「販売すること」のプロではあっても、「ものを作り出す」プロではないからこそ、こうしたメーカーなどの発想やこだわりに学ぶべき点が多いように思う。
 ショップが今よりもっと売り上げを伸ばす、イコールそれは、ものづくり魂を身に付けることではないか。それでは今日はこの辺で。

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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