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楽しく分かるマーケティング:その⑮「戦後日本経済とマーケティングの変遷」

【戦後の復興からマーケティングの導入まで】

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今回は戦後の日本経済、国内市場における時代背景と、マーケティングの変遷から、今日「何故デジタルマーケィング」、「何故EC」なのかを解説する。
太平洋戦争が終焉した昭和20年8月。東京を始めとした人口集中する都市部は空襲で殆どが焼野原となり、人々は食料も住まいも無い中から約10年の僅かな期間で戦後復興を図った。
昭和30年に財団法人日本生産性本部(現、公益財団法人)のアメリカ視察団が帰国した後、当時の経団連会長が記者会見して日本へのマーケティング導入を主張。その翌年には電通が月刊「マーケティングと広告」を創刊、以後産業界に広くその関心が高まる。

【市場拡大期(高度経済成長期)のProduct Outとマスマーケティング】
私の生まれた昭和35年、当時の池田内閣は「所得倍増計画」を宣言。戦後15年のこの年から日本市場は高度経済成長期に入る。昭和30年代前半の庶民の三種の神器は「電気冷蔵庫・電気洗濯機・白黒テレビ」である。昭和34年皇太子ご成婚パレードに合わせ白黒テレビは普及しはじめ、昭和39年東京オリンピックの際にテレビは殆どの世帯に普及する。そして昭和40年代に入ると庶民の欲求は3C、「クーラー・カラーテレビ・カー(自家用車)」となる。

当時は殆どの製品は市場導入期から成長期で日本市場は拡大期。特にメーカーは迅速な生産と供給を求められ、コミュニケーション戦略(プロモーション・広告)はテレビの普及に合わせテレビCM黄金時代。それまでの新聞・雑誌・ラジオにテレビが加わり、いわゆる「マスコミ4媒体(マス媒体広告)」が確立され、新しい製品を販売する際には、テレビCMを初めとしたマス媒体で広く認知させ、店頭に誘引してモノを買ってもらう仕組みである。

当時のCMと言えば商品名を連呼するシンプルで、如何にインパクトを高めて認知度を高めるか?をテーマとした表現が多い。そして時代背景も大きく反映されている表現も多く、森永エールチョコレートの「大きいことはイイことだ!」とダイナミックな印象の音楽家山本直純さんが叫んだり、日産サニーの「となりのクルマが小さく見えます」と、隣の1000CCのカローラよりも、うちの1200CCのサニーの方が大きい事を訴求したり、当時の経済が成長し所得も向上し、暮らしが豊かになっていく様子をわかり易く訴求している。

昭和30年代から40年代(1950年代後半~1970年代前半)の日本市場は同じモノへの欲求を持つ「大衆=マス」に向けて、画一的な製品をマスメディアで「作れば売れる」、そしてモノが豊かになっていく。

マーケティングは「Product Out」、いわゆるマスプロダクト・マスマーケティングで市場(マーケット)自体を拡大する時代であった。

【市場成熟期のMarket Inとセグメントマーケティング】
昭和45年に大阪で日本万国博覧会が催され、戦後日本市場は完全に復興宣言する。

その年に時代の転換期をメッセージ化したテレビCMが放映される。富士ゼロックスの「モーレツからビューティフル」。この年から始まった銀座の歩行者天国で当時流行のヒッピー姿の男性が先のメッセージの幕を手にして歩くという表現。モーレツとは高度経済成長期に会社のため家族のため残業もいとわず働いた戦士の例えとして言われた「モーレツ社員」のこと。ビューティフルとは自分らしく美しく新しい生き方を考えましょうと言う提案。高度経済成長期は、がむしゃらに働いてお金を稼ぎモノを購入したことで、多くの生活必需品は普及することとなり、この頃からは成熟市場で如何にしてパイを奪い合うか、が大きなテーマとなる。

ちょうどこの頃は団塊世代が世帯を持ち「ニューファミリー」と言う言葉が生まれ、マイカー・マイホームを持つことが憧れとなり、当時の日産スカイラインは「ケンとメリーのスカイライン」と称して、これまではクルマの機能性を訴求する表現から情緒性つまりライフスタイルを提案する手法に切り替えている。いわゆるイメージ訴求(情緒訴求)が一般化する。

そして80年代に入ると「モノからコト」と言うキーワードから、モノを買ってどんなコトを楽しむかが大きなテーマとなる。楽しい・面白いコトが興味の的となり、時代はバブル景気と相まって、「トレンド」を作りだし好景気で金余りの顧客を狙う、戦後日本市場の黄金期。勿論世界市場でも「ジャパン・アズ・ナンバーワン(原題は昭和54年の出版物Japan As Number One)」の称号が得られた時代である。

当時の広告は日産セフィーロの「くう・ねる・あそぶ」や、三共リゲインの「24時間戦えますか?」などまさにバブル景気を表現し、面白ネーミングやCIブームと広告業界は隆盛を極めた。しかしバブルは結果的に平成3年(1991年)2月で終焉する。
昭和50年代から平成初期(1970年代後半~1990年代前半)の日本市場は、異なるニーズを持つ市場を括り「細分化(分衆)=セグメンテーション」して、それぞれの市場に最適なモノを提供していこうと言う「Market In」の考え方が普及し、製品や広告は差別化戦略(競争戦略)を施すことで、市場(マーケット)のシェアを獲得する時代であった。

【市場飽和期のCustomer Centricとワントゥワンマーケティング】
バブル崩壊後には土地価格下落から金融機関破綻、そして様々な現象のグローバル化も相まって日本経済は大きな転換期を迎える。こうした時代に国内市場は完全に各業界市場飽和期を迎えて、生き残りをかけた戦いが始まる。

平成4年(1992年)ある書籍が発行される。スタン・ラップ&トーマス・コリンズ著「個人回帰のマーケティング」である。私は93年この書籍を読んで衝撃が走った。

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それまでプロモーションと言えばマスメディアを中心に使い、「認知だ・理解だ・差別化だ」と企画を組み立てていたが、もうこうした施策はある意味で限界値であり体力の消耗戦だと感じていた。そんな疑問を持つ頃に手に取ったこの書籍を見て、商売の原点は「顧客一人一人に最適な対応を図る」ことを再認識する。この頃「ワントゥワンマーケティング」と言うワードが注目され、それぞれのお客様を大切にする「顧客の囲い込み」に私は興味関心が湧き、ダイレクトマーケティングを学ぶこととなる。

しかし当時のダイレクトマーケティングはコストと時間がかかった。個々に対応するメディアはダイレクトメールと電話であり、一人当たりにかけるコストは高い。DMは2日から3日の時間を要する。そんな時代を一気に変えたのは90年代の後半から普及したパソコンとインターネット、そして携帯電話である。

インターネットはまさに個々に最適なコミュニケーションを「即座に安価で」出来るメディアとして急成長し、携帯電話はやがてスマートフォンとなり携帯端末で何時でも何処でも簡単にインターネットアクセスが可能となった。またIT技術の進化で様々な顧客管理や分析ツールも普及し、顧客一人一人への対応が容易に出来るように進化した。

通信販売はこの流れから1990年代後半に、今までの大手ゼネラル通販からメーカーの単品通販(サプリや化粧品、食品など)や、各ローカルエリアの小売店通販などの参入で市場規模が急速に拡大し、その後アナログ通販からネット通販へのシフト、そしてアマゾン・楽天が急速に成長していく。

同時にメーカーのコミュニケーションも、マスメディアとインターネット、そして街頭や店舗と言った「タッチポイント」をクロスしてアプローチすることが進化する。こうした流れから今日では「デジタルマーケティング」と言うワードが一般化した。

平成のおおよそ30年間(1990年代後半以降)の日本市場は、市場の飽和状態も相まって顧客一人一人へのアプローチと言う商売の原点、個人回帰のマーケティングが浸透し、何よりもお客様中心に考えて「価値と満足」を提供する「Customer Centric」の考え方が基本となり「顧客シェア(一人の顧客からどれだけ支持されるか?)」の獲得が大きなテーマとなる。

このテーマを解決するかのように「デジタルテクノロジー」が進化。

こうした時代背景からデジタルマーケティングの名のもと、コミュニケーション・プロモーション手法がデジタル化してEコマースの市場規模も拡大する。

【これからはアナログとデジタルの融合で人間をよりハッピーにする時代へ!】
フィリップ・コトラーは2017年に「マーケティング4.0」を提唱する。その中身とは一言でいえば「ヒト」が中心であること、「ヒト」がつながって「共感」し、社会や世の中を変えていくということである。

人間が持つ本質的な高次な欲求である「承認欲求や自己実現欲求」を満たすため、令和の新時代は昭和で培ったアナログな人間の考えと、平成で培ったデジタルのテクノロジーが融合し「劇的な科学反応」を起こすことで、より顧客をハッピー(幸福)にすることがこれからの時代である。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 鈴木 準

株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント

マーケティングコミュニケーションコンサルタント。「顧客視点でのマーケティング」を信条とし、生活者の価値提供を最重要視したマーケティングコミュニケーション領域の、コンサルティング&プランニングを手掛ける。


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