ネットショップの運営工数削減「RPA」と「チャット」
バックキャスティングの菅原です。
2018年は、東京以外で宮城県・山形県でセミナーを行いました。
日本全国、深刻な人材不足はまだまだ続いるようです。
ネットショップ運営のリソース不足を外注利用でまかなっている店舗さんも多いですが、先日「RPA」というシステムを導入し始めた店舗さんがいらっしゃいましたのでご紹介いたします。
RPAとは?
RPAはまだまだ聞き慣れない言葉だと思いますが、「Robotic Process Automation」の略で、「ロボティック プロセス オートメーション」日本語で訳すと「仮想知的労働者」です。
職場における業務をコンピューター上で再現するAIや、AIが反復することで学ぶ「機械学習」の技術で、人に代わって事務作業を行います。
本来、担当者がPCに向かって入力やマウス操作で行ってきた定型の処理業務をRPA側に登録しておけば、担当者に変わってRPA側がPC側ソフトやブラウザ、クラウドなどいろんなアプリケーションを使いながら処理業務を行うことで、人的負荷の軽減・経費削減が期待できます。
ネットショップ運営の現場でのRPA活用
ネットショップの現場であれば、『大量注文のメールを受信し添付されたExcelを確認、そこに記載された注文リストの商品を一つずつWeb上のフォームにコピペ(コピー&ペースト)し、卸元へ発注する』といったルーチンワークをRPAで自動が出来ます。
このルーチンワークの中に、在庫数を確認してから発注するとか、品番を調べて記載するとか、間違いのないようにダブルチェックをするなど、単純作業ではあるものの人の力だけで行うには、年間で相当な工数・時間・人件費を要してしまいます。
これらの業務をRPA側にきちんと学習させることができれば、人力による対応はなくなり、注文件数が増えてもRPA側が365日24時間、人の代わりに業務を行うことが可能です。
RPA導入の効果
前述のRPAを導入した店舗さんは、試験的に一部の発注業務をRPAで運用を始めました。
今までは、担当者一人が発注業務を行うと30分近く要していましたが、RPAでの発注業務では7分で完了しました。
この業務が毎日発生するとなると、1日23分→1週間で115分(約2時間)→1ヶ月で460分(約7.6時間)に相当します。つまり、1ヶ月で1営業日分の労働時間をRPAの活用で自動化することが可能になり、他の業務へ集中することが可能になります。
店舗さん曰く、まだまだ精度を上げたり微調整を行う必要はあるものの、他の業務にも展開していけば、大幅な作業工数・時間の削減につながるとのことでした。
EC業界向けのRPA導入は、まだまだレアケースですが、今後の市場発展にとても期待が出来ます。
顧客対応の業務効率化
2018年9月末より、楽天市場で「R-Chat」がリリースされました。R-Chatとは、楽天が店舗向けに提供するWeb接客ツールで、店舗と消費者がLINEでやり取りするようにチャットを利用して店舗や商品についての問い合わせ、確認などが行える機能です。
2017年から楽天に出店している一部の店舗でテスト導入を行い、転換率・注文単価の向上につながったと楽天側が発表しています。
Web接客サービス自体は、2014年頃からいろいろなサービスが出ています。チャット機能だけでなく、販促用のクーポンの表示や、会員登録に向けたポイント付与やABテストの実施など、高機能なWeb接客サービスが続々と出ています。
その半面、費用面で高額になりがち(トラフィックに応じた課金パターン)で、中小企業での導入へは踏み出せないケースが多かったです。楽天のR-Chatは「チャット」に絞った機能で月額3,000円から導入できるため、従来のWeb接客サービスと比べれば、費用面ではかなり抑えられます。
まだまだ導入店舗は増えていませんが、楽天出店者向けにサービスを開始したことで、ネットショップ運営でチャットを活用するケースは2019年には増えてくることでしょう。
ネットショップの現場でのチャット活用
ネットショップ運営での顧客対応手段は、LINE@アカウントを作成してLINEによるチャット対応を行っている店舗さんも増えていますが、現在はメール・電話が主流です。
電話対応の場合は、店舗スタッフ1人に対し、顧客1人しか対応できません。
メール対応の場合は、一度に複数の顧客を並行して対応できますが、稀に迷惑メールフォルダに入ってしまったり、年齢層の若い顧客の場合はメール利用に対して消極的な方が多く、メールでコミュニケーションに難有りの場合もあります。
一方チャットの場合は、有人対応であればメール対応同様に一度に複数人数の対応を並行して行うことが可能です。一般的には、一度に3人ぐらい、慣れてくれば5人ぐらいの顧客を並行して対応することが可能と言われています。
リアルタイムで対応可能なチャットですが、顧客のチャットに対して返答を「考える・調べる」ことも必要です。有人対応では店舗運営の知識や経験が問われるため、導入すれば必ず顧客満足度が上がるという訳ではありません。
ネットショップ運営におけるチャット対応でとても重要なことは「チャットボット」の活用です。
チャットボットによる顧客対応
「チャットボット」とは、「チャット」と「ロボット」をかけわせた造語です。顧客にチャットで自由に文章を書かせるのではなく、店舗側で設定した選択肢を選ばせ、その選択肢に対して自動返信するものです。チャット業界で有名な事例として、アスクルが運営する個人向け通販のLOHACOの例を用いてチャットボットを紹介します。
LOHACO – お客様サポート https://lohaco.jp/support/index.html
このページにアクセスすると、LOHACOのマナミさんが対応します。もちろん架空の人物です。
「注文方法について」「領収書について」「注文直後の変更・確認について」「配送料について」という選択肢が用意され、『注文方法について』を選択すると今度は「LOHACOでの購入の仕方が分からない」「支払いについて」「Tポイントについて」「配送について」「領収書について」「商品の返品について」と、『注文方法について』に対しての具体的な選択肢が自動でチャットに出てきます。
このように、顧客から問い合わせがある「よくある質問」に対して、チャットボットで対応して、カスタマーサポートの対応負荷を軽減します。私が聞いた話では、このチャットボットの導入で顧客の問い合わせのうち30%近くをマナミさんで対応しているとのことでした。
スマートフォンの普及により、閲覧デバイスがPCからスマートフォンの方が増え、閲覧時間も「スキマ時間」を中心にネットショップが見られるケースが増えています。それ故に最近のユーザーは「文字を読まず、ページを見る」ような閲覧行動が増え、店舗側が作成した「よくある質問」「店舗案内」などのコンテンツを読まずに、店舗側へ問い合わせするケースが増えています。
繁忙期やセール時に、顧客への問い合わせ対応に時間を要したり電話がつながらないことで、顧客のストレスがたまり競合店舗へ流出してしまう可能性があるので、ネットショップ運営者様には、ぜひ積極的にチャットボットの活用を行っていただきたいです。
2019年以降は、EC業界のチャット活用がもっと発展することと思います。
公的機関や金融機関でもチャット活用が進んで行けば、世の中がもっと便利になるのではないでしょうか?今後のチャットサービスの発展に期待しています。