年頭所感 理事 天井秀和
新年あけましておめでとうございます。
旧年中は、当協会への格別のお引き立てを賜わり誠にありがとうございました。
皆様のご支援、ご協力のもと、無事に新春を迎えることができ心から感謝申し上げます。
昨年は、私が注力している東南アジアのEコマース市場では、春先からとても大きなニュースが相次ぎました。
まずインドネシアで4月、Eコマース事業に関する外資規制が大幅に緩和され、東南アジア最大の2.5億人のBtoC市場の門戸が開放されました。
それまでインドネシアではEコマース事業は外資による投資のネガティブリストに明記されており、小売業に対しても東南アジアの国々の中でも
非常に厳しい外資規制をかけていた国だったので、非常に驚きました。
これに呼応するように、非公式ながら、アマゾンがインドネシアに参入するというニュースがもたらされました。まるで、待っていたようなタイミングです。
時期をほぼ同じくして、こんどはアリババが、東南アジアで最も勢いのあるモールサイトであるLazadaを買収するというニュース。
もとよりアメリカにおけるアマゾンやebay、中国におけるアリババやJDのような安定的勝者が東南アジアにはまだ存在せず、
モールが国ごとに乱立していて戦国時代の様相を呈していましたが、これをもって東南アジアを舞台にアリババとamazonの戦いの火蓋は切られたのです。
各国のEコマース市場拡大にかける意気込みは非常に強く、インドネシアおよびマレーシアの両政府は、
アリババのジャック・マーに自国のEコマース政策の顧問就任を依頼。ジャック・マーはこれを受諾し、
Lazadaを手中に収めるのに加えて、東南アジアのEコマース政策の中心に陣取ってしまいました。
このままジャック・マー率いるアリババが、東南アジアのEコマースを牛耳ってしまうのか、
勢いのあるLazadaがさらにシェアを伸ばすのか、各国の有力財閥が底力を発揮するのか。
両国の今後の政策展開や大手企業の動向には、今後数年は目が離せそうにありません。
他にも、韓国ロッテがベトナムにモールサイトを開設したり、
三井物産が、インドネシアの財閥が運営する巨大プロジェクト「マタハリ・モール」に出資したりと、
大資本によるシェア争いのニュースは枚挙に暇がありません。
ただし、明るいニュースだけでもありませんでした。
特に、楽天がシンガポールを中心に展開してきた東南アジアのEコマース事業から完全撤退したニュースは、非常に残念でなりません。
昨今、中国向けの越境ECが多くの関心を集め、販促手段や運用代行、物流に至るまで多様な戦略ニーズに応えられるようになりましたが、
現段階ではまだ、東南アジア向け越境ECはハードルが高いままです。
ebay、Qoo10のようなグローバルモールでは、国籍、出荷元、出荷先の国を問わず出品が可能ですが、
東南アジアのほとんどのモールはサイト運営が国ごとに分かれていて、それぞれで現地法人名義や銀行口座がないと契約ができず、
また日本からの越境出荷も認められていません。
楽天の撤退により日本の企業は、日本語で契約ができ、サポートも受けられ、越境で商品を出荷できる数少ないモールを失ってしまったのです。
しかし2017年は、いよいよアマゾンがシンガポール、インドネシア、マレーシアでサービスを開始するとの観測が強まっています。
アマゾンはアジアでは日本と中国とインドでのみEコマース事業を運営しており、東南アジアには未上陸でした。
これまで東南アジアのモールサイトは国ごと、会社ごとにバラバラに運営されていますが、
アマゾンのプラットホーム上で商品コードが統一されたり、国をまたいで成熟した同一の競争環境が提供されることの影響は計り知れないものです。
日本の出品者アカウントから東南アジア各国への越境出荷やFBA直接納品が可能になる日も遠くないでしょうし、日本の皆さんにとっては追い風の方が強いかもしれません。
ネット通販ビジネスを通じて東南アジアに販路を開拓しようとする日本の事業者の皆さんにとって、今年は特に重要な年になることは間違いありません。
この大きな流れに皆さまと一緒に取り組み、共に大きく成長し、大きな成果を挙げられるよう、今年も頑張ってまいります。
皆様方の益々のご隆盛とご健勝を心からお祈り申し上げます。
一般社団法人ジャパンイーコマースコンサルタント協会 理事 天井秀和