課題はどこにある?「コンサルタントの視点」
JECCICA NEWS VoJECCICA特別講師 笹本 克
ECサイトには様々な指標があります。
たとえばアクセスログだけでもリアルのショップに比べれば信じられないぐらい充実したデータ(KPI)を取ることができます。
お客様の顔は見えないECサイトではありますが、これらのデータを充分に活用すればお客様の気持ちをも汲み取ることもできるのです。
しかしデータを漫然と眺めているだけでは何も生まれきません。
今回は様々なデータから「お客様の声を聞く」手法について、ごく一部ではありますがコンサルタントの視点をお伝えしようと思います。
以前にもこのコラムに書きましたが、笹本は「CVR(購買率)向上=集客増」という公式をとても大切にしています。
CVRが向上すれば、費用の高い広告媒体を使うことができるようになります。
検索広告を例に簡単に説明すると、競合する同業者であれば集客用KWも大体一緒であり、粗利率も平均顧客単価もほぼ同じレベルのはずです。
この構造をもつ場合、CVR2%のショップは競合するCVR1%のショップの「2倍のクリック単価」まで出すことができます。
従って、笹本の場合コンサルティングの初期の場合にはUU数(来訪者数)は全く気にしていません。
サイトのクォリティーを練り上げてCVRが向上すれば「UU数」は「後からいくらでも買える」からです。
実は、笹本がまず最初に注目するのは来訪者の検索キーワードです。
この検索KWから、「どんなお客様が」「どんなデマンドを持って」「どの様な商品やサービス」を探そうとしてこのショップに訪れているのかを把握するのが絶対条件だと思っています。
リアル店舗に置き換えて考えてみれば「当たり前」のことですが、売り場づくりは「どんなお客様が来ているか?」を把握することこそが最初であり最大の課題ではないでしょうか。
スーパーの惣菜コーナーを例にとれば、ご年配のお客様の比率が高い地域の店舗は、肉厚のステーキよりもさっぱりとした魚を豊富に置いたりします。
学生街の大衆食堂であれば「大盛りメニュー」をウリのひとつにしたりします。
まずはご来訪頂いたお客様の姿を見て、そのお客様の「求めているモノ」(=商品とは限りません)を「そのまま提案」することがCVRや平均顧客単価の向上の「基本中の基本」です。
一例を挙げますね。 仮に検索KWが「財布+黄色」であったとします。
当然ながら黄色い財布を探しているわけですが、ここからさらにもう一歩踏み込んで「お客様のデマンド」を仮説で良いからブレイクダウンしてみます。(このあたりからがコンサルタント的な視点となりますが。)
この場合のお客様の「ご要望」の仮説を列挙してみると、
- まず、黄色であること が第一条件であり、
- どこのブランドなのか? は今のところ、どうでもよく、
- 二つ折なのか長財布であるか も今のところ、どうでもよく、
- 本革かどうか もあまり関係がなく、
- 価格帯について も特に決まってもいないし、(安いに越したことはないけど、奮発して高い財布を買った方が金運が良くなりそうだし商品と価格のバランスを見て…)
- たくさんの種類の黄色の財布 の中から、選びたい。(リアルのお店でも多少は置いていると思うけど、あえてネットで…)
というところかと思います。 この仮説がほぼ的を得ているとした場合、ひとつの「課題」が見えてきました。
ショップの商品ナビゲーションが、
- ブランド別
- 価格帯別
- 二つ折/長財布などの形状別
という分類だけであった場合、この様なお客様のご要望に対して「そのまま提案」するコンテンツにはたどり着かないということです。
このお客様のご要望に沿った形で「そのまま提案」している「コンテンツ」は、参照Aや参照Bではなく、参照Cや参照Dになるのではないかと思います。
一例ですが、検索KWというデータから「課題」を見つけ出してショップを改善しCVR向上に繋げて行くステップをブレイクダウンしてみました。
「課題」を見つけ出すための分かりやすい例として、検索広告で集客するところからお買い上げ完了までの流れの中でチェックポイントを列挙しますね。
ケースバイケースではあるのですが、ざっくり申し上げると、
▪︎クリック率が低い
広告表示KWの絞り込み(サブキーワードのブラッシュアップなど)
広告コピーの再考(ターゲット&コンセプトの再考に繋がることも)
▪︎クリック数が低い
広告表示KWの再考(検索数=市場規模のチェック、他のKWはないか?)
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▪︎直帰率が高い
この段階で、検索広告表示KWと広告コピー(ターゲット&コンセプト)は一定の評価と考えたい。
検索KWから推察されるデマンドと「コンテンツ」がきちんと合致しているかを(前述の財布+黄色のごとく)仮説を立てて考察視認性の確認、テーマカラーやレイアウトの大改造
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▪︎商品一覧ページでの途中離脱
「ご要望に沿った形」で選べるかどうか、一覧性機能の向上(ex.財布+黄色)
サムネイルのサイズやレイアウトの改善など視認性の改善、商品群の暗喩の活用
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▪︎商品ページでの離脱
商品の訴求力の改善(画像+テキスト)
競合他社の価格チェック プライシングの再考
メンテや保存法、使い方食べ方洗い方など商品付随情報の充実
スペックに感性的表現の追加(ex. 3.40GHz/HDD 2TB/メモリ 8GB → 動画編集もサクサク動く)送料返品規定の内容と訴求度のチェック
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▪︎カゴ落ち
決済方法の拡充
入力ユーザビリティー向上や信頼感醸成などいわゆるカゴ落ちの改善
一般的にはこんな感じになるかと思います。
実際には様々な要素が複合的にからんでいて、そう簡単ではないのですが(苦笑)データから課題を見つけてToDoに落とし込む「視点」の一例まで。
JECCICA NEWS Vol.34 掲載
JECCICA特別講師 笹本 克
自治体・関連団体にもEC関連の講演や講師を務め、DeNA、Yahoo!Japanショッピング事業部へのレクチャー、ドリームゲート起業講座の他、コンサルサイトの累計約600社、多業種でのコンサル実績も豊富。l.34,サイト,ショップ,理解,納得,認知