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イベントの復活と、次世代ファッションリテイル

復活しつつある大規模イベント
コロナが収束の方向に進んでいるかのように様々な大規模イベントが復活してきています。アメリカで最もプレミアムな音楽のイベントとして有名な「コーチェラ・フェスティバル」は、宇多田ヒカルさんや復活ライブを実施した2NE1などアジア人の出演も目立ち、日本でも話題になりました。また、ファッションの祭典である「メット・ガラ」も2年ぶりの開催となった2021年に引き続き、今年も開催されました。マスク着用義務が解除される国もあり、コロナ禍から少しづつ脱し始めた気配を感じています。このようなイベントが増加するとインフルエンサーの仕事も復調し、ソーシャルメディア上のマーケティングも熱気を帯びていくことでしょう。

一日のスマホ利用時間は4時間に
もはや言わずもがな、コロナ禍で人々がスマートフォンを利用するスクリーンタイムは上昇する一方です。マッキンゼーが2022年5月2日に発表したレポート「State of Fashion Technology Report 2022」では、アメリカの人々は日々平均してスマートフォン上で、4時間弱を費やし、その内ソーシャルメディアに費やす時間が2時間半にも上るというデータが記載されていました。私が想像している数値よりも多い数字で、その中の数割かは無為に過ごしている時間も多く含まれていると思うと怖くもなりました。

さて、私たち日本人のデータはどのくらいでしょうか。やはり、日本人でもスマートフォンのスクリーンタイムやインターネットの利用時間の上昇傾向は顕著でした。毎年、総務省が発表する「情報通信白書」の令和3年度版(2021年)でスマートフォンの利用時間を調べてみると、アメリカの平均と変わらない数値が出ていました。まず、2021年のレポートのハイライトは、『全年代では、平日の「インターネット利用」の平均利用時間28が「テレビ(リアルタイム)視聴」の平均利用時間を初めて超過』したということです。さらに、デバイス別の利用時間の統計を見てみても、スマートフォンの利用時間は全世代で上昇傾向で、特に10代と20代の利用時間が長いことに驚きました。10代のスマートフォンの利用時間は平日で186.8分、休日で247.5分という数値、20代は平日で177.4分、休日で230.7分という結果でした。つまり、10代、20代ともに休日は約4時間もスマートフォンを利用しているのです。睡眠時間や食事や入浴に必要な生活時間を除いたら、一日のうちの約2〜3割をスマートフォン上で過ごしていると言えます。さらにこの利用時間は前年に比べて、平日で平均約30分、休日で平均約50分増加しています。コロナ禍で外出などが制限され、買い物や娯楽といった日常的な消費活動にも影響を与えていることが、利用時間の増加からも分かります。コロナ禍は劇的にデジタル化が進んだため、数値に出さなくても強く実感できていますが、改めて変化の大きさを感じました。

イベント×インフルエンサー「REVOLVEはミレニアル世代とZ世代向けの次世代ファッションリテイル」
さて、冒頭のイベントが復活しつつあるという話に戻りたいと思います。そもそもイベントの復活に興味を持ったきっかけは、Youtubeでインフルエンサーの今年のコーチェラをリポート動画を見たことです。その動画の中でアメリカのECサイト「REVOLVE」のブースが紹介されていました。そのインフルエンサー曰く「Z世代に人気のECサイトで、インフルエンサーであれば誰もが買い物をしたことがある。有名なインフルエンサーが多く足を運ぶので、コーチェラに来たらREVOLVEのブースに絶対に顔を出すべし」と言っており、そこまで影響力のあるECサイトとはどういうものだろうと惹かれました。確かに、REVOLVEのサイトを見てると、水着や露出の高いナイトアウト向けのデザインの洋服など、多種多様なオケージョンに対応するために作られたトレンド感満載の洋服がずらりと並んでいます。

REVOLVEのサイトにも「ミレニアル世代とZ世代向けの次世代ファッションリテーラーです」というコンセプトを記載しています。もともとエンジニアが起業したREVOLVE。それゆえ、アパレルが苦手とされていたテクノロジーやデータ分析といった領域に強みがある企業で、2018年には新規上場を果たしています。テクノロジー領域以外にもソーシャルメディアを活用したコミュニティ創出にも注力しており、2014年からインフルエンサーと一緒に旅をして撮影する #RevolveAroundTheWorld を開始、コーチェラでのRevolveAwardsやRevolveFestivalといったインフルエンサーが主導のプログラムやイベントまでに発展しています。最近ではインフルエンサーのためだけでなく、ブランドやデザイナーのためにもそのプラットフォームを存在することを想起してもらうために、2021年に開催されたニューヨークファッションウィークで「RevolveGallery」というギャラリーを出展するなど、新しい取り組みも実践しています。

今後ECが取り組む課題とは
コロナ禍で急速に進んだデジタル化によって、世界的にECの利用率が上がっています。アメリカ合衆国国勢調査局の報告によると、アメリカのECは2020年で前年比11%増加するとあります。今後コロナが収束するにつれて、売上を落とさずに維持できるのでしょうか。前述したマッキンゼーのレポート「State of Fashion Technology Report 2022」には、今後ファッション業界で重要となるテクノロジーのテーマを5つ掲げています。
1.メタバースリアリティチェック(Metaverse reality check)
2.ハイパーパーソナライゼーション(Hyperpersonalization)
3.コネクテッドストア(Connected stores)
4.エンドツーエンドのアップグレード(End-to-end upgrade)
5.トレーサビリティファースト(Traceability first)

REVOLVEを例にとって見ると、最近はインフルエンサーマーケティングだけでなく、ダイバーシティやインクルージョン、持続可能性と二酸化炭素排出量を削減する取り組みを重要視しています。消費者は、ただ単純に商品や表面的な商品情報やコーディネートなどを見て買うか買わないかの判断をするのではなく、「その商品の背景にある環境問題は?」「ダイバーシティか否かどうか」といったそのブランド・企業が将来を見据えた価値基準をもっているかどうかも重視します。ミレニアル世代がD2Cブランドを好む傾向があるのと同じ事象ではないでしょうか。このような顧客を抱える企業の場合は、ハイパーパーソナライゼーションによる細かな情報提供とコミュニケーションが顧客のロイヤリティを構築し、トレーサビリティによるビッグデータを活用することにより、製品のライフサイクルや持続可能性を理解したりするのに役立つのではないでしょうか。

トレンドを扱うファッション業界には不確実性がつきものです。しかし、テクノロジーを駆使し、自分たちのなかで揺るぎない領域・コミュニティを確立し、成長させていくのが、コロナ禍においても、収束後においても肝要であると感じました。

muraishi

JECCICA客員講師 村石怜菜

株式会社パルコ・シティ シニア・コンサルタント。

日本女子大学被服学科卒。大手専門店企業で接客販売・店舗運営を経験した後、Eコマース支援企業で数々のファッションブランドのECサイトの構築や運用に携わる。現在は、ファッション専門店や商業施設へのECコンサルティングを得意としている。また、クライアント企業のオムニチャネル戦略の計画・実行を支えている。


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