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2023年 年頭所感 雨宮雄一

新春を迎え、謹んでご挨拶を申し上げます。

2022年の日本においては、COVID-19の感染者数は高止まりしつつも各種の行動制限が緩和され徐々に日常を取り戻してきた1年でした。
特に夏以降は再び外国人観光客の姿も見られるようになり、街にも活気が戻って来たように思います。

一方、世界情勢としては、ロシアによるウクライナへの侵攻を契機としたモノ・ヒト不足による物価高、それに加えて各国の金融引き締めに伴う景気悪化など、厳しい環境が続いた1年であったと言えます。

EC業界に目を転じてみると、経産省の2021年度「電子商取引に関する市場調査」における「物販系分野のBtoC-EC市場」は、予想通りコロナ禍前の成長率程度(年率8.61%)となりました。
コロナ禍バブルは終焉し再び安定成長軌道に戻りました。
2022年のデータは現時点では不明ですが、私は成長率が鈍化してきていると分析しています。
ECモールやECショップ、あるいはカートベンダーなどの前年比を見ると苦戦している様子が読み取れます。
日常を取り戻す中で、旅行・飲食・エンタメ消費あるいはリアル店舗での購買など、コロナ禍で急減した需要への回帰が起こっている裏返しなのでしょう。
2023年はこれに景気悪化も加わり、EC業界にとっては厳しい環境になるのではないかと考えています。

このような中で注目している動向を3つ挙げたいと思います。

1つ目は、D2Cブランド立ち上げの簡易化です。
ここで2つのエピソードを紹介します。
1つ目は、ある会社が北欧から日本未発売の商品を輸入し日本でEC中心に販売する、という案件です。
4月に「ある商品の輸入販売を検討し始めた」という相談を受け、6月にSNSアカウント開設、7月の終わりにはサイトでの予約販売、8月に出荷を開始しました。
インスタの活用、Shopifyでのサイト構築、後述するロボット物流なども導入し怒涛のスピードでスタートさせました。
数年前だと、ビジネスモデル設計から始まり物流準備なども含めるとスタートまでは1年近く掛かっていたと思います。
2つ目は、私の知人(大学生)がオリジナル化粧品ブランドを立ち上げた、という案件です。
もともと化粧品に興味のあった知人は、自分の理想を追求した商品を開発したいと大学の仲間を誘ってチームを作りました。
商品開発コンセプトに共感するOEM先が見つかりサンプル作成まで漕ぎ着けます。
そこからまずはSNSで友人・知人を中心にブランド認知を図り、次に商品開発資金をクラウドファンディングで募り、今はチームメンバーがShopifyで販売サイトを構築中です。
チーム作りから販売サイト構築まで1年も掛かっていません。
このように特にECであれば「アジャイル型」で事業を進められる環境やサービス、ツールが整っています。
今後もものすごい勢いでD2Cブランドが立ち上がっていくものと考えています。

2つ目は、「売らない店」の出現です。
「売らない店」とは、顧客へのブランドや商品の認知を目的として商品は展示するが販売はしない店です。
顧客は気に入った商品をECで購入する一方、出店サイド(メーカー等)は顧客(訪問者)のデータを得る、というビジネスモデルです。
数年前からショールーミングというキーワードで注目されるようになり、2022年は先駆者のb8taに加え大手百貨店やZOZOが「売らない店」を相次いで出店しています。
我が社のクライアントは販売も併設するポッポアップ型のストアに出店しました。
目的はブランド認知と会員獲得、同時に訪問者の属性分析でしたが、当該店舗へのトラフィックが想定以上に少なく思ったような成果は得られませんでした。
まだ、ユーザー側での「売らない店」の認知や理解が低いのかも知れません。
ただし、2023年は「売らない店」がもっと注目され、ECショップやD2Cブランドにとっての重要なマーケティング手段になるのではないかと想定しています。

3つ目は、物流の進化です。
2022年の夏に我が社は「ギークプラス」というAI物流ロボットの会社と提携して物流受託事業を開始しました。
amazonの倉庫と同様に、掃除機のルンバのようなAIロボットが棚をピッカーの前まで運んでくる、という仕組みです。
従来型倉庫だと、倉庫内での自社スペースの確保(契約)から出荷開始まで少なくとも数か月を要していました。
更に、物量可変型契約が増えたとはいえ、一度確保したスペースや物量はなかなか変更しにくい実情があったかと思います。
ロボット物流は、ピッカーの動きの効率化を通じた省人化を武器として「物流立ち上げの迅速化」「波動対応」を強みとするソリューションです。
ECの物量は増加する中、物流2024年問題として業界の働き方改革が始まります。
その解決策のひとつとして、ロボット物流が大きなトレンドになっていくのではないかと考えています。

年頭所感を書き始めて約10年が経過しますが、上記の通りEC関連の進化はより加速している感じがします。

以下は、毎年唱えている呪文ですが、、、

このような時代だからこそ、「基本を磨く」ことと「進化をする」ことに邁進しなければなりません。また、ショップを支えるサービス提供者側は、ショップの「本質的課題」を解決する一手を提案する必要があります。

JECCIAとしては、「基本」を大切にしながらも「進化」出来るEコマース人材を育成していくべく、引き続き努力していく所存です。

最後になりましたが、皆様方におかれましては、この一年が希望に満ちた躍進の年になりますよう心からお祈り申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。

雨宮雄一プロフィール写真

専務理事 雨宮雄一

フォーセンス・パートナーズ(株)代表取締役
パートナー 公認会計士
元HMVジャパン代表取締役社長
元ローソンHMVエンタテイメント取締役
大手監査法人・外資系コンサルティングファームを経て2006年、経営コンサルティング会社 フォーセンス・パートナーズ設立。現場まで入り込み指導するハンズオン型サービスをモットーに、多数の大手流通企業の経営改革を支援。

2008年から3年間、HMVジャパン(現ローソンHMVエンタテイメント)の代表取締役社長を務め、同社の Eコマースシフトを主導。また、ローソンHMVエンタテイメントでは取締役としてEC・CRM・IT部門を統括。

ネットとリアルを融合させた大規模ECの運営に精通。加えて、EC事業のM&Aにも当事者・アドバイザーとして多数関与。EC領域では戦略から運営まで一貫してアドバイス出来る数少ないコンサルタント。

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