楽しく誰にも分かるマーケティング：Vol㉘次世代シニア：ＡＢＳ世代の魅力的市場とは？

今年から前期高齢者となる新たな市場
昨年から私が発信している、２０２０年より前期高齢者に突入する昭和３０年代に生まれた「ＡＢＳ世代」では、市場（顧客）のセグメントに関して「ＡＢＳ世代：市場基本４分類」として顧客の特徴を整理しています。今回はこのお話をお伝えします。

市場基本４分類は、次の二軸から整理しています。先ずは「行動軸」で、外交的（オープンマインド）か、内向的（クローズマインド）かで分けています。外交的な人は、積極的に外に出かけて交友関係を拡大する傾向にあり、大勢が集まる場での活動を好みます。新しいコトに対してのチャレンジも積極的です。一方で内向的な人は、個人や少人数の仲間など既存の関係性の維持が中心です。プライベートな場での活動を好み、従来からの固定観念が強く、新しいチャレンジに対しての照れもあり、保守的で慎重です。

そしてもう一つが「心理軸」です。ＡＢＳ世代の特徴は、戦後高度経済成長期に生まれ育ち、７０年代カルチャーや８０年代のバブル期を経験したことで、表に出たい、自信をアピールしたい「承認欲求」というキーワードをこれまでお伝えして来ましたが、その強弱での分類です。

承認欲求が強い人は、自分がどう見られるか、人からの印象や自身のキャラクターを気にかけます。承認欲求がそれほど強くない人は、人からの見られ方より、本人の納得感や、気持ちの折り合いがポイントです。
この縦軸と横軸で、４分類を整理しています。

ＡＢＳ世代の４分類とその特徴
１つ目は「スタータイプ」です。活動的でお洒落、友達も多く、まさに復活ディスコに遊びにくる人達で、ＡＢＳ世代の代表的セグメントと言えます。消費意欲も旺盛で、自分のやりたい事を「自律的に見つけ出す層」です。そしてその活動を友人も交えてＳＮＳで発信することに積極的で、ＡＢＳ世代のインフルエンサーとして一番期待できる層です。

２つ目は「隠れた影響者タイプ」です。積極的に交友関係を広げないものの、自分自身の関心事情報には敏感で、スタータイプ同様にＳＮＳの発信を積極的に行うタイプです。趣味のお披露目の場の提供などが効果的ですから、様々なモノ・コトの領域毎におけるマニア（オタク）を、インフルエンサーとして押さえておくと有効なタイプです。リタイヤ後には趣味が高じて「スモールビジネスを始めて生きがいを感じる」可能性があります。

３つ目は「頼れる仲間タイプ」です。自分から目立ちたがりはしないものの、仲間内で存在感ある頼れる縁の下の力持ちで、面倒見が良く世話好きです。同窓会の事務方を積極的に行ったり、昭和時代のお見合いおばさんのような存在。仲間内で困った時に「こんなのあるよ！」的に提案するタイプなので、様々な新ネタを持つことで周囲に影響を及ぼす可能性があります。
４つ目は「小市民タイプ」です。子育てや会社勤務から解放されたものの、今から新たな交友関係は面倒。それでいて膨大な余暇時間（会社員時代よりもはるかに多い自由時間）をどう過ごそうか模索しており、やりたい事が見つからないと暇を持て余して「老後難民」になる層です。個人がプライベートで没頭できるモノ・コトの提案が有効で、特に「男性は若い頃やっていた、やりたかった活動」に積極的に反応する可能性があります。

人生１００年時代やアフターコロナの潜在市場を掘り起こし
以上「ＡＢＳ世代：市場基本４分類」ですが、現状は承認欲求が強く外交的な人は比較的女性に多く、その逆は男性に多い傾向にあります。しかしＡＢＳ世代は冒頭述べた生まれ育った背景から、「強い承認欲求や好奇心が潜在的に眠っている」人は多く、人生１００年時代の新たなライフスタイル創造で市場は多様化し、スマホやＳＮＳ、そしてＥＣでの購買を図ることで、ＥＣ市場における新たなビジネス拡大の可能性があります。

そうした観点から考えると、スタータイプや隠れた影響者タイプの顕在層のみならず、潜在意識にアプローチするモノ・コト、「自分軸=自分らしさ」の発見につながる提案と本人の気づきを通じて、市場は活性化する可能性があります。

これまでのシニアと違い、「デジタル」が通用するＡＢＳ世代だからこそ、人生１００年時代、そしてコロナ禍で浸透した新しい生活様式を取り入れた「ブルーオーシャン市場創造」の、鍵を握ると感じています。

■ＡＢＳ世代　昭和３０（１９５５）年から４３（６８）年生まれで現在５１歳から６５歳の、若者時代にバブルを謳歌した世代

写真えとき
基本４分類の傾向（現状）を把握した上で、今までにないライフシフト時代の前向きな提案を！