マーケティングとは、流れで読み解き、成功確率を高める科学である!
■マーケティングは「売れ続ける仕組み作り」。
「マーケティングとは端的に言うと何ですか?」という質問をすると、様々な回答が返ってくる。例えば「市場調査・製品開発・プロモーション・4P」等々である。どれも一部正解である。一部と言う事は全体の意味合いが別にあるという事。マーケティングの概念を翻訳した文脈は様々存在するが、それらを最も端的に伝えると「売れ続ける仕組みづくり」と整理できる。売れ続けるとは「私が手掛けたら今回は売れた!」といった偶発的状態ではなく、「誰が行っても売れ続ける仕組みがある」と言った再現性が重要である。言い換えればそうした仕組みを作ることで「顧客に支持されて、顧客自らが選び続けてくれるという状態を作る」ことが可能となる。
■マーケティングは「流れで読み解く」ことがポイント。
マーケティングを実行する際には、大きく3つのパートから整理し考える必要がある。それは「①環境分析(現状認識)」、「②基本戦略(STP)」、「③マーケティングミックス(4P)」という流れ(図①)である。日々の業務を行っていると、往々にして全体像の中における「③マーケティングミックス(4P)」の施策に目が行きがちである。ECサイトで言えば「Product~どんなECサイトを立ち上げる?」、「Price~値付けはいくらにする?」、「Place~顧客に直販して!」、「Promotion~オンライン・オフラインでどのような広告を行う?」と言うことになるが、それら具体策を考える前に「①環境分析(現状認識)」を通じてどこにチャンスがあるかを導き、「②基本戦略(STP)」である「誰に対して?どんな価値を提供するか?(先月のコラムでお伝えした不の字の解消)」を考えた上で、初めて「③マーケティングミックス(4P)」を組み立てることになる。マーケティングは「①⇒②⇒③」の工程を流れで捉え、それぞれの整合性を考えながら行う必要がある。そしてもう一つ重要なポイントは、一連の流れの中で整合性が取れなくなり、つまずいて前に進まなくなった場合には、無理やりこじつけて前に進まず、その前に一旦立ち戻って考え直すことである。
■PDCAを回して成功する確率を高めるために。
「この商品は売れるか?このビジネスが成功するか?」その答えは、やってみないと分からない・・これが実際のところである。しかしビジネスは「勘と経験と度胸」だけで投資をすることはリスクが大きい。「マーケティングを行う目的は何か?」と問われたら、私は「成功確率を高める科学」と答えている。マーケティングの科学とは「事実によるデータに基づいた論理や手法があり、再現性があること。」である。その点でデジタルマーケティングは、こうした科学を可能とするツールが日進月歩で進化し、PDCAを極めて速く行うことが可能となっている。デジタルマーケティングの根幹であるダイレクトマーケティングと言う販売手法。私は約25年前からダイレクトマーケティングの戦略企画に従事してきたが、アナログ時代はカタログ・DM・電話と言ったコミュニケーションツールを活用し、リストは人間が入力すると言った「コスト」を要し、実施した施策を検証して次期施策に活かすまでのPDCAに6か月少なくとも3ヵ月の「時間」を要したが、今日ではそれが極めて「安価に早く」PDCAを回す事が可能となった(図②)。つまり今の姿は私が25年前に理想としていたダイレクトマーケティングと言える。このように考えると、デジタルマーケティングは最新の戦略ではなく、今から50年前に既に確立されたダイレクトマーケティングと言う販売手法がベースにあり、コミュニケーションを図るメディア、情報蓄積するツールがデジタル化されたという整理をすると、分かりやすくなると思う。
■マーケターに必要な「心・技・体」3つの要素とは?
これまで様々なプロジェクトのお手伝いに関わって来たが、卓越したマーケターには共通して3つの要素があると実感している。先ずは「心=①商売を行う気持ちと覚悟」。つまり「新しいビジネス」を行うことに対して、自分自身が商売を行おうと言うマインドを持つ、言い換えれば腹をくくると言うことである。特に大企業の新規プロジェクト成功の第一歩はこれに尽きる。次に「技=②顧客視点での仮設志向」。今起こっているビジネスを取り巻く状況に対して問題意識を持ち、何故そのような状況なのか?顧客の立場に自分自身を置いて、仮説立てる習慣をつけることである。仮説力を持つことは物事への興味関心を持つことであり、創造性を高めることにも寄与する。そして「体=③実行する意思決定」。やるか、やらないか、最後にはリーダーシップが発揮され、それが意思決定に繋がると感じている。成功確率を高める戦略と戦術を構築したら、結果を恐れず自信を持って取り組む。そしてその結果をプラス面もマイナス面も次に活かしていく。それを地道に続ける体力と気力を持つことが、さらなる成功確率を高める結果となる。
■「心技体」を高い次元で保つことが可能なダイレクトマーケティング。
卓越したマーケターに必要な「心技体」を、より高い次元で保つことを可能とするのが、ダイレクトマーケティングと私は考えている。ダイレクトマーケティングは、売り手と買い手がダイレクトにコミュニケーションを図るため、顧客の声がすぐに伝わってくる。その声は様々であり、プラスな面もマイナスな面も即座に伝わる。こう言った環境はまさに商売を行っている醍醐味があり、そして顧客の声から仮説検証も容易に可能となる。そして実施した施策の結果がすぐに出ることは、PDCAをより加速させ、自信を持った意思決定を下すことが可能となる。
■世の中を楽しく動かすことがマーケティングの面白さ。
マーケティングと言うと、論理的で理屈っぽいと思われる方も多いと感じるが、私は38年の経験から、マーケティングは論理性(左脳)と創造性(右脳)が最適に組み合わされて成功するものと実感している。顧客の声や施策の検証を通じた論理的戦略に、ビジネスを行う当事者のセンス・ユニークさを加えて、顧客に様々な価値を提供し、世の中を楽しく動かすことがマーケティングの面白さである。
JECCICA客員講師 鈴木 準
株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント