JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

最新セミナー・イベント情報
お申込みはこちら

韓国ECから見る日本のEC業界の今後、中国ECプラットフォームの台頭から思うこと

なんとなく朝の通勤時に韓国経済の解説ラジオを聞いているのですが、この1,2年のあいだ「人気ECプラットフォームのランキング」がホットな話題の一つとしてよく上がっています。世界的にこのコロナ禍でのECの伸び率は目覚ましいものがありますが、そのなかでも韓国はD2Cの場としてECが主戦場となっているため、EC関連のニュースについて国民の関心も高いものと思われます。

もともと韓国はインターネット導入率やスマートフォンの普及率が高かったことや、クレジットカードや電子決済の導入率も高かったことなどから、年齢を問わずECに対する拒否反応はほとんどなく、毎日のように生鮮食品をECで購入している世帯も珍しくありません。

下記は経済産業省から発表された2022年の国別EC市場シェアのグラフですが、韓国は日本に続いて世界5位のシェアを占めています。中国や米国のシェアから比べると2.5%という数字は小さく見えますが、韓国の人口は日本の約半数、約5100万人であることから比較するとその市場規模はかなり大きなものであることがわかると思います。

◆グラフ:2022年国別EC市場シェア(単位:%)

出典:『令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書』

普通これだけの市場があるとわかれば、世界的ECの最大手Amazonが当然この市場を狙ってくるだろうと想像されますが、実際にはAmazonは過去一度も韓国に進出したことがありません。
その理由のひとつとして、韓国では自国内の独自ECプラットフォームがあまりに強力すぎて、その牙城を崩すことができないと判断されたからではないかといわれています。

もともと日本と韓国の嗜好は似ている点が多く、とくに現在は韓国の音楽、化粧品、飲食など、若い世代への浸透スピードは目を見張るほどですが、ECに関する考え方、求めるものについては日本と韓国で異なっています。

皆さんの記憶にもあると思いますが、2023年3月韓国の最大手ECプラットフォームであるクーパンが日本を撤退しています。
クーパンは、注文日の当日中か遅くとも翌朝には配達される「ロケット配送」を売りにしており、よく韓国の国民性を表す言葉として“早く早く(パルリパルリ)”が使われるほど「早い=良い」と考える韓国人にはピッタリのサービスとして絶大な人気を集めています。

残念ながら日本では配送の問題などもあり人気を得ることができず、早々と撤退してしまいましたが、韓国ではクーパンのほか、Gマーケット、11番街、Qoo10という自国のECプラットフォームがしのぎを削っており、韓国はずっと独自のEC業界を貫き続けるものと思われていました。

ところがこの1~2年の間、その想定を崩し急激に会員数を伸ばし始めた海外ECプラットフォームがあります。それがAliExpressをはじめとする中国ECです。

もともと韓国は中国に対する印象があまり良好なものではなかったことから、中国のサービスの流入はうまくいかないだろうとも予想されていたのですが、コロナ禍を機に急激に利用者が増えはじめ、2023年10月度の各ECモール別利用者ランキングではかつての王者Gマーケットを抜いてAliExpressが3位(月間利用者613万人)に浮上し、大きなニュースとなりました(ワイズアップ社調べ)。

2024年に入ってもその勢いは止まらず、TemuやSheinなどの格安販売を行う中国ECも若い世代を中心に人気を集めており、AliExpress、Temu、Sheinの3サイトの合計会員数が1,000万を超えたというニュースにはかなり韓国内に衝撃を与えました。

韓国経済誌『毎日経済』でも、中国のECアプリ(直接購入、略して「直購」と呼びます)が韓国の消費者を飲み込もうとしている、消費ブラックホールだ、などと警鐘を鳴らす記事が出るほど、韓国のEC市場では中国のECプラットフォームが台頭してきており、経済ニュースではホットトピックとして扱われています。

世界平和的な視点からすると、若い世代が中国に対する偏見を持たないというのは素晴らしいことなのだろうが、経済的には面白くないという気持ちになる、、と冒頭のラジオで解説員がつぶやいていました。

日本も韓国同様、中国に対する印象があまり良好でないという点もあってか、中国から直接個人購入するかたちの中国ECは受け入れられにくいだろうと数年前は思われていましたが、いまSNSを覗けば、若い世代は何も懸念せずにTemuやSheinを利用している投稿を見ることができます。

韓国のニュースは他山の石ではありません。近い将来、日本のEC業界でも中国のECプラットフォームが台頭する日がくるのでしょうか。

JECCICA客員講師 酒井 愛子

JECCICA客員講師 酒井 愛子

 - JECCICA記事, お知らせ, その他, コラム, ニュース

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

Copyright© JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 , 2024 All Rights Reserved.s