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どうなった?Gmail対策 Google側の対策は完全なものとしてみなしてよいのか?

先月に引き続き、2024年6月のEメールのルール改定について、実際に起きていること、現場からの声などリアルタイムでお伝えします。

今月は主に「Google側の対応は完全なものとしてみなしてよいのか?」という点にクローズアップしたいと思います。

たとえば交通ルールについて考えた場合、取り締まりの基準が、だれからも明らかで公正なものでないとルールを守る側は困ってしまいます。

「時速〇〇キロを超えてはならない」というルールがあったとして、その速度を計測するメーターが、取り締まり側・取り締まられる側に共通した計測器でなければ公正なルールではないといえるでしょう。では今回メールのルールについてはどうなっているのでしょうか。

今回のEメールのルール改定は、ご存じの通りGmailが表立って動き出しているものですが、実際には米国yahoo、Microsoft、iCloud などのメールサービス提供会社や、その裏にProofpoint といったブラックリスト提供会社(各企業に対し、自営に役立ててもらうために提供するブラックリストのこと。消費者のブラックリストではない。)などが参画する一大プロジェクトとして動いているようです。

これまでGmailは独自のルールや機械学習を通してスパムメールか否かを判断しているとされており、送信失敗時に返ってくるレスポンスメッセージ(送信失敗の原因を指摘する記載など)も、かなり詳細な独自の記載で返ってくることで有名でした。

しかしながら今回のルール改定に先立ち、Gmailから返ってくるレスポンスが急に変わり「proofpoint のルールにより受信できない」というようなGoogle以外の存在がメッセージの中に記載されるパターンが出てきました。

これらのメッセージにより「やはり裏にはproofpoint がつながっていたんだ」と確信した人も多かったようです。

最近はこういったメッセージも減り、従来の独自メッセージに置き換わってきているようですので、天下のGoogleさんも事前にしっかり用意をして稼働しているというよりも、走りながら航路修正・チューニングを行っているものと思われます。

それ以外にも、今回初めて導入された方も多いと思われる「Postmaster Tools」や「ワンクリック解除(List-unsubscribe)」については、”ルールに従って設定したはずなのに、想定された結果にならない”というお問い合わせも多く、私共でも調査を行ったところ次のことが見えてきました。

1.Postmaster Toolsは正確か?
今回課せられたルールの1つ「迷惑メール率」は、かなり誤解と混乱を招いているようです。

何をもって迷惑と判断するのか、受信者が迷惑と感じたかどうか・・・なんて、完全に主観的なものを物差しとして設定されてしまうというのは、送信側としてはちょっとした難易度ではないでしょうか。

その対応策として、「Postmaster Tools」というGoogle提供のツールを利用し、迷惑メール率を見える化せよ、という指令も合わせて課せられています。この「Postmaster Tools」というツールでは、”送信元が貴社ドメインのメールについて、Gmailからはこう見えていますよ” という評価を見ることができます。

本ツールに関しては「評価が確認できるまでに数日かかる」といった仕様に関する苦情をお聞きすることもありますが、他にも「正しく評価されていない」という誤判定へのお悩みもお聞きします。

例えば次図のような例です。下記の例では、SPF、DKIM、DMARCなどすべて設定できている状態でアライメントも問題ないにもかかわらず「SPF認証成功率 0%」となっています。

実際の配信結果としてはDMARCが成功100%となっているため受信拒否されることはないと思いますが、ドメインの持ち主としては気分の良いものではないのも理解できます。

WEB上で検索してみるとGoogleコミュニティでも同様の誤判定に対する書き込みがあり、あれこれ識者からのアドバイスが続きましたが、最終的には”Google様のみぞ知ることであり、誤判定については諦めるしかない”というような終わり方になっていました。

2.ワンクリック解除(List-unsubscribe)が正しく表示されない?
年始以来、一番お問い合わせが多かったのはこの件です。
ワンクリック解除のための「メーリングリストの登録解除」の機能を表出させるためには、メールヘッダー追記、DKIMの修正、誘導先サイトの用意など、かなり技術的な取り組みが必要なのですが、それらをすべて準備したのにもかかわらず、Gmailにテスト送信してもこの機能が表出しないというお悩みを多数受けました。

お客様のシステム環境を調査した結果、設定が不十分であることもありましたが、完全に準備できていると判断できるものも多く、なぜ機能が表出しないのか全くわかりませんでした。

毎日ほぼ同じテンプレートのメールを大量配信される企業様でも、日によってワンクリック解除の記載が出たり出なかったりする例もあるようです。

▽ワンクリック解除の機能が表出したもの【Gmailでの受信例】

▽ワンクリック解除の機能が表出しないもの【Gmailでの受信例】

この例では、送信元メールアドレス、各種メール認証、メールヘッダー記載なども同じ設定なのにもかかわらず、日によって出方が変わっています。
私共では複数社からのメルマガで比較解析を行い規則性を探しているのですが、なかなか明確な鍵が見つからない状態です。これこそ”Google様のみぞ知る”としか表現できないのが正直なところです。

上記のようなお悩み相談は現在もいただくのですが、多くの方の概念に”Google様の規定は正確であり、曖昧な基準や誤判断などありえない”というものが根底にあるようで、基準は非明確かつ日によって変わるようだから様子見してみて、という回答はなかなか信じてもらえません。

よく考えてみればGoogleからしても今回一からルールを作り出しているのですから、ルール改定後にどんな影響が出るのかなどは、全世界的な実稼働が開始してからでないとわからないのではないでしょうか。ここはさすが米国流というべきか、まずは走り出してみて、そこから改善を重ねてよい状態に持っていくのだ、という姿勢なのだと思います。

どうしても日本人からするとそのような思い切った判断は信じられないのですが。

今回の結論としては、Googleの判定基準は未来永劫変わらぬ絶対基準などではなく(多分)、日々チューニングされ、場合によっては大きく方向転換もする、と考えた方が良さそうです。各結果に私たちは慌てず、原則に従って堂々と対応していればよいと私は考えます。

JECCICA客員講師 酒井 愛子

JECCICA客員講師 酒井 愛子

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