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楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol⑱ABS世代の承認欲求を満たす「ワクワクマーケテイング」

「承認欲求」と人間の生きがい
私の母親は83歳で名古屋に一人暮らししています。幸い元気に自活していますが、その秘訣は、体操教室の「カーブス」に月15回ノルマを課して8年通っていることです。以前の私は、単に母親が健康に気を使って運動して良かったと思っていただけでした。しかし昨年ある時、彼女のやる気スイッチ(モチベーションの源)がどこから入るのか不思議に思い、改めて話を聞きました。すると母親はクラス最年長であり、年下の会員さんから「私たちのお手本は鈴木さんよ。鈴木さんが頑張っているから私たちも頑張れるのよ!」と笑顔で言われるそうです。半分お世辞と分かっていても自分が認められて必要とされ、まだまだ人や社会の役に立っているのだと実感できる。これこそが彼女の原動力となり笑顔で幸せな日々を送っているのです。

笑顔と人間の幸せ、そして生きがいの関係とは?
ジェロントロジー(美齢学)には「成功と幸せの違い」が記されています。それは人・モノ・金でビジネスが成功したからといって必ずしも幸せであるとは限らない。幸せとは「相手の笑顔が見られること」である。あなたにとって大切な人(お客様)を笑顔にしてワクワクさせると自分も笑顔になる。するとストレスが軽減されて心が健康になる(精神美が向上する)と説いています。私はこの考え方の背景にある「認められる=承認欲求」は、世代を問わず人間が生きがいを持つ大きな欲求(ニーズ)と捉えています。

マズローの5段階欲求説にある高次な心の欲求
アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、人間の欲求は5段階あると唱えています。第一から第三段階の「生理的欲求⇒安全欲求⇒社会的欲求(帰属欲求)」は生きて行くために必要な低次な欲求であり、第四・第五段階には高次な心の欲求である「尊厳欲求(承認欲求)⇒自己実現欲求」があります。(※図①)

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この中で承認欲求は上から二番目、そしてその上に自己実現欲求があります。人が生きるほどに美しく輝くことが出来るのは、人に認められること。更には自己実現に向かって成長し、周囲に「笑顔のシャワー」を巻き起こすことなんですね。

ABS世代の復活ディスコが意味するもの
ABS世代の復活ディスコもまさにそう。同じ時代を同じ空間で過ごした仲間達が、長年の時を経てタイムマシンに乗って時間旅行したような気分になり、脳内にはハッピーホルモンである「ドーパミン」が分泌されます。そこには仕事でもなければ家族でもない、一人の男性・女性として、更には人間としての承認欲求が満たされる「笑顔あふれる」ドキドキ・ワクワク・ハッピーな空間があるのです。こうした体験を求めるABS世代は、高度経済成長期に生まれ、1980年代バブル期に向けて日本経済の黄金期を駆け抜けた世代であり、絶えず消費の最前線でライフスタイルやカルチャーを形成した、他の世代よりも、とりわけ「承認欲求」は強いことが特徴です。

SNSはまさに承認欲求を満たすコミュニケーションツール
こうしたABS世代は、普通にスマホを使い、ECでお買い物をします。デジタルを普通に使いこなす日常生活は今までのシニアと大きく異なる点であり、彼らのSNSと言えば「フェイスブック」が広く普及しています。ディスコに来る人達も写真をあちらこちらで撮影し、投稿してシェアをしています。昔から周囲の信頼出来る人からの「口コミ」は大きな影響を及ぼしますが、SNSの恩恵で今では誰もが全世界に発信出来るようになり、その結果として更なる「承認欲求」が満たされるようになった訳です。
特に女性はやはり積極的。私の知人女性もフェイスブック更にはインスタグラムに自分のヨガ教室の写真を掲載し、Webサイトに誘引したり直接メッセージで問い合わせを図り、趣味が高じてプチビジネスを行う人は珍しくありません。承認欲求から更に高次元な「自己実現欲求」を満たすことが出来る時代に進化したのです。

自由時間を満たすライフスタイルをどう提案するか?
今年になりABS世代の男性・女性に対して定性調査(グループインタビュー)を複数行いましたが、子育てが終わった女性たちは皆、自分自身がやりたいことや目標が明確で、生き生きしていましたが、男性たちは今後の生き方に関して先が良く読めない、定年後に何をすれば良いのかイメージがつかない・・と人生に霧がかかったようなムードでした。
そしてここに興味深い2つの時間比較があります。「95,000時間」と「125,000時間」です。これは「生涯労働時間と定年後自由時間」の比較です。生涯労働時間は、大学卒業して62歳までの40年間を休日除き「毎日平均10時間」働くと約95,000時間になります。それに対して定年後自由時間は、現在の日本人男性の平均寿命に照らし合わせて、定年退職後に63歳から82歳までの20年間「毎日平均17時間(睡眠時間7時間)」活動すると約125,000時間になります。(※図②)

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つまり朝早く起きて出勤し遅くに帰ってくる、そんな忙しく働いていた人生の時間よりも、定年後の自由時間のほうがはるかに長いのです。今後は働き方改革や寿命の更なる延びでこの時間差は長くなります。
調査の結果や私の周囲の声を聞いても、女性たちは自分のライフスタイルをイメージしている方は多く、そうしたニーズに対する「モノ」は選択しやすい状況にあります。一方で男性に対しては先ずはライフスタイルである「コト」の提案から入り「モノ」を提供する、そんな二段階のコミュニケーションが必要です。
このように考えると、バブル期の恩恵を受けたABS世代へのビジネスやマーケティングを成功させるポイントは、承認欲求や更には自己実現欲求を満たす「コト」が出来る、そんなライフスタイルがイメージ出来る「モノ」を提案して体験を促す。そしてその体験は笑顔あふれる生きがいある「トキ(時間)」を過ごすことが出来る。更には「モノ・コト・トキ」はSNSで拡散されビジネスや市場規模を拡大する。こうしたコミュニケーションを図って潜在意識を蘇らせ、需要創造(潜在ニーズの掘り起こし)を喚起するシニアマーケティングに注目が集まると感じています。(※図③)

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ライフシフト時代の「ワクワクマーケテイング」実践を!
医学・生物学・脳科学・心理学・社会学などが学際的に学べる「ジェロントロジー(美齢学)」では、人はワクワクすることで老化の進行を遅らせることが出来ると伝えています。健康寿命を延ばし、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めるコトとは、人がワクワクすることです。ただワクワクは自分一人だけワクワクするのではなく、幸せの意味合いにあるように、大切な人を笑顔にしてワクワクさせると自分も笑顔になる。そうした時間や空間が大切であり必要です。
「人生100年時代の未体験ゾーン」を控え、先進諸国は日本の高齢社会の動向に興味関心を持って見ています。これからの日本は欧米と同様に「真のオトナ」が活躍できる社会に進化させ、60歳を過ぎても前向きな人生を送ることが出来る、そんな世の中に政治も経済もシフトするべきです。
そして顧客には「いつまでも前向きで生きていけそう!」と言った「ムード」を創ることは大切。そのムードが「ワクワク」です。
成熟市場・飽和市場と言いますが、それはあくまでも「モノ」を売るという視点で考えるからだと常々思います。モノを買うことで得られる価値は何か?そのニーズの根源をたどると、いつの時代でも人間が「ワクワク」することを通じて「ハッピー」になることは普遍的です。
これからのABS世代に向けて、更には他の世代も含めて「ワクワク」した時間や空間、モノやコトをどのように提案して人間を「ハッピー」にするか?こうしたマーケティングをECの市場においても、もっともっと発信して欲しいと思います。

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ディスコで「ドキドキ・ワクワク・ハッピー」なトキをSNSでシェアするABS世代

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 鈴木 準

株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント

マーケティングコミュニケーションコンサルタント。「顧客視点でのマーケティング」を信条とし、生活者の価値提供を最重要視したマーケティングコミュニケーション領域の、コンサルティング&プランニングを手掛ける。


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