楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol⑬ 具体的施策(4P):プロモーション戦略③
ダイレクトマーケティングのルーツと価値
ダイレクトマーケティングは「レスター・ワンダーマン」により1958年に提唱され、彼は日本において1985年に電通との合併会社である「㈱電通ワンダーマン(現在の電通ダイレクトマーケティング)」を始動させた。私は電通ワンダーマンに1990年代に勤務しワンダーマンメソッドを学ぶと同時に、日本のダイレクトマーケティングのルーツでもある、1970年代日本で販売されていたアメリカの雑誌「リーダーズ・ダイジェスト(リーダイ)」の通信販売広告。そしてクレジットカードの「アメリカン・エクスプレス」日本参入に伴うプロモーション。こうしたマーケティングを手掛けていた電通ワンダーマンの先輩に基本セオリーを丁寧に教えて頂いた。
その後アナログ通販からEコマースに拡大し、更には今日インターネットの活用で、殆どの事業会社がダイレクトマーケティングに関わっていると言っても過言ではない。その根底にあるのは、戦後日本市場のプロセスと媒体、そしてテクノロジーの進化が密接に関係している。日本国内市場では顧客シェアを高めることが目標となっているため、必然的にダイレクトマーケティングが多用されている。
そうしたダイレクトマーケティングの強みは「双方向で効果測定が可能」これが一番の価値であり、デジタル化された現在では効果測定からのPDCAは、アナログ時代より「劇的に安価で早く出来る」ことが大きな強みである。
PDCAを加速するダイレクトマーケティング
マーケティングマネジメント更には事業戦略全体でPDCAは欠かせないが、ダイレクトマーケティングで一番の魅力は、PDCAを繰り返すことで「成功確率が高まる」ことであると確信している。(※図①)
私は1990年代の電通ワンダーマン時代から、ダイレクトマーケティングのプランニングやコンサルティングに従事したが、成功している事例に共通しているある要因は「必ずセオリーに忠実である」こと。
チャートに記したPDCAサイクルを実行し、プロモーションを実行した後の効果測定でKPI・KGIの目標達成度合いを把握し、数値だけではなく成功要因・失敗要因を究明し、成功要因は拡大、失敗要因は修正を企て次のトライアルに入る。
過去お手伝いした大手企業の通販参入で、中小事業者の方は「大手企業だから成功したんでしょ?」とコメントされることが多いが、確かに意思決定すれば多額のコストを投下することは可能であるが、KSF(キー・サクセス・ファクター:成功要因)を見つけるまでは、こうした細かいPDCAを回していた。
PDCAに欠かせないテストとロールアウト
製品開発する際には基礎研究をして様々な検証を行い、その後市場導入する製品へとブラッシュアップを図る。プロモーションもそれと同じで、先ずは仮説の上で「おそらくこの方法がいいであろう!」と言う案をテストで小規模展開し、その結果を見て拡大する方がリスクは圧倒的に低いことは間違いない。(※図②)
店頭販売の商品は、昔は名古屋や広島でテストマーケティングなんて古き良き時代があったが、今では各メーカーいきなり本番で体力消耗戦になっている。その点でEコマースの世界では、ダイレクトマーケティングの「テストとロールアウト」で、リスクヘッジをしながら成功確率を高める事が出来る。
テストで先ずは検証することは大きく3つ。
① ターゲット
② 訴求ポイント
③ クリエーティブ
この3要素が基本。そしてルールは必ず「どの要素を比較するか?」を明確にする必要がある。複数要素を一緒にテストすると、どちらの要因が影響してレスポンスが高いのか(低いのか)が分からなくなるためである。
この3つが明確になって更に検証したい要素は、
④ タイミング
⑤ メディア
1週間の中でも接触機会が高い低いはレスポンスに影響する。季節的な要因も入るし、顧客は今日要らないが、1か月後には欲しくなる時もあるため、「④タイミング」を検証することも重要な要因である。そしてターゲットにより効率的に到達する「⑤メディア」の拡大を検討する。この順序で行うことが基本となる。
テストの検証要素はレスポンスから得られる「定量情報」と、顧客からのヒアリングから得られる「定性情報」である。(※図③④)これらを明確にすることで成功確率を高めることとなる。
RFMとプロモーション
顧客管理の一番ベーシックな手法「RFM分析」。(※図⑤)そもそもこのRFMと言う順番は、ゴロ合わせが良いからRFMではなく、顧客を維持するプライオリティの順にRFMとなっている。つまり顧客を維持してファンにさせるには、日数を遠ざけないことである。
例えばデパートで100万円の時計を購入したけど年に1回しか来店しなかったAさんと、毎週地下の食品売り場で平均5000円の買い物をして年間24万円購入するBさん。どちらがお店にとって末永くお付き合い出来るお客様か、確率的に判断するとBさんと言える。
つまり最終購買日を遠ざけないように頻繁に購入頂ければ回数が増えて、結果的に購入金額も増えるというセオリーが「RFM分析」の基本である。そして多くはRFM分析と組み合わせて、それぞれのグループに対応したプロモーションを行う。(※図⑥)
これこそが顧客一人一人のプロフィールや指向性を把握して行うダイレクトマーケティングのコミュニケーションである。
※次回はVol⑭は、「顧客を理解し幸福にすることが本質」と題して、マーケティングの本質をおさらいとしてお伝えする。
JECCICA客員講師 鈴木 準
株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント
マーケティングコミュニケーションコンサルタント。「顧客視点でのマーケティング」を信条とし、生活者の価値提供を最重要視したマーケティングコミュニケーション領域の、コンサルティング&プランニングを手掛ける。