楽しく誰にも分かるマーケティング:Vol.55 BtoBマーケティング②
BtoBビジネスの特徴
BtoBビジネスはBtoCビジネスに比較すると、その多くは一回あたりの取引額が大きく、また一回導入された後に満足度合いが高ければ、継続的取引きが見込まれ、安定的な収益に繋がります。またビジネス対象となる業界で代表的な成功事例を作ることが出来れば、その事例を水平展開することにより、取引先と更なる収益が見込まれるところがBtoBビジネスの特徴です。この実現に欠かせない二つの存在を「リファレンスユーザー」そして「ティーチャーカスタマー」と言います。
リファレンスユーザーとは?
「リファレンスユーザー」とは、自社が販売するモノやサービスの代表的なユーザーである取引先企業を指します。モノやサービスのターゲットとなる業界で影響力を持つ、ネームバリューのある取引先企業が導入して成功事例を作ることができれば、それを水平展開して更なる新規顧客の取引企業を増やすことができます。例えば、ある金融業界でリーダー企業が新たなシステムを導入して実績を出せば、同一業界の他社も同じシステムを入れる可能性は高くなります。あるいは医療業界で、影響力の強い開業医の様々な事例は、多くの開業医が参考にします。そして異なる業界でも、同じ課題であれば、どのようなソリューションが機能して成功したかという話は、とても興味関心があり参考にします。
ビジネスの現場で、課題を解消する新たなモノやサービスを導入する際には、前回お話ししたDMU(Decision Making Unit=モノやサービスの購入意思決定に関与する人々、ターゲットのこと)となる上司をはじめ、社内の関与者を説得する必要があるので、ビジネスパーソンは事例に興味関心を持ちます。こうした理由から、「リファレンスユーザー」が重要であることが分かります。
ティーチャーカスタマーとは?
「ティーチャーカスタマー」とは、自社の販売する新しい・サービスをいち早く導入してくれる取引先企業が、そのモノやサービスを活用して、新たな要望や不足部分をフィードバックしてくれる、まさに教えてくれる取引先企業を指します。
この場合は、取引先企業から得られる利益は極めて少ない、あるいは採算度外視がほとんどです。その代わり、その取引先企業から得られたあらゆるノウハウで水平展開ができれば、より多くの取引先企業と大きな利益が得られます。「ティーチャーカスタマー」が協力する理由は、いち早く該当するモノやサービス、つまり課題を解決するソリューションを手に入れ、運用のノウハウまで獲得できれば先行優位を獲得することができるからです。それによって競合他社が同一のソリューションを導入し、運用ノウハウを獲得するまでに、一歩も二歩も先に進めることが可能となります。つまり先行優位な逃げ切りです。
新たなモノやサービスのリリース直後は、当然のことながら知名度も導入実績もないため、多くの企業からの認知を獲得しながら、ターゲットとなる企業のニーズを満たす、モノやサービスを育成して訴求する必要があります。そのためにも「ティーチャーカスタマー」は重要な存在です。
プロダクトライフサイクルの導入期に効果的
「リファレンスユーザー」や「ティーチャーカスタマー」を早期に獲得できれば、新規の取引先企業獲得や、自社の売りたいモノやサービスの改善といった双方が可能になります。その段階を踏まえて、より多くの取引先企業へ導入し、拡大していくフェーズへ進むことができます。
その際のポイントとして、モノやサービスにはプロダクトライフサイクル(図)によって、獲得できる企業の層が異なります。「リファレンスユーザー」、「ティーチャーカスタマー」は、プロダクトライフサイクルの導入期において獲得すべき企業が前提となるでしょう。同時にこうした企業は、業界の中でも「イノベーター」や「アーリーアダプター」でもあります。こうした考え方は、BtoCマーケティングと同じくBtoBマーケティングも、プロダクトライフサイクルで獲得できる企業に対して、適切なマーケティング活動を行うことがマーケティングの効率化、利益最大化につながっていきます。
JECCICA客員講師 鈴木 準
株式会社ジェイ・ビーム マーケティングコンサルタント