JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

最新セミナー・イベント情報
お申込みはこちら

飲食業とチップ

飲食業界にて、パンデミック前後で大きく変わったと感じる点にチップがあります。チップは、レストランで受けたサービスに対するお礼のような意味合いがあり、税抜きの総額に対して15パーセントが一般的なチップの割合で、高級レストランや期待以上の良いサービスを受けた際は、18~20パーセントを支払うのが通常でした。個人的には、チップは受けたサービスに対する正しい評価を表すことができるいい制度だと思っておりました。しかし、パンデミックを境に、このチップに対する考え方が大きく変わったと感じます。一つはチップを支払う対象が増加したこと、二つ目はチップの割合が増加したことです。

以前は、レストランでテーブル席について、そのテーブルを担当するサーバーのサービス内容に応じてチップを払ったものですが、最近はそのようなサービスを受けないファーストフードのようなレストランや、テイクアウトに対しても、POSやオンラインの注文/支払いシステムでチップの加算がデフォルトで表示されることが多くなりました。このようなシステムは、それまでテイクアウトサービスを行っていなかったレストランのオンライン注文をはじめ、パンデミックの最中に急増しました。テーブルサービスと異なり、特別なサービスを受けているわけでもないのに、どうしてチップ加算の表示があるのだろうと不思議に思いますが、システム的にその表示が組み込まれていることから、チップを払わなければという気持ちになってしまう消費者は多かったと思います。

次にそのチップの加算額ですが、総額の”15パーセント/20パーセント/25パーセント”、”20パーセント/22パーセント/25パーセント”といったように、請求書やチェックアウト画面に表示されるチップの割合が増加しております。もちろん、”他の額の選択”や”カスタム”から自分で割合や額を指定できるのですが、計算が面倒なことから与えられた選択肢から選ぶ消費者は多いと思われます。物価の大幅な上昇によるメニュー単価の上昇により、チップの対象となる総額が増加することに加え、加算される割合も増加すると、消費者にとってはダブルの痛手ともなります。

チップはあくまでもサービスに対する消費者の感謝の表れでもあり、また、パンデミックの際はそのような困難な状況下でも、食事を提供してくれるオーナーやスタッフへの感謝からある程度のチップを払うのも厭わない慣習がありましたが、現在のシステムではなんとなく高額なチップを強制されているようにも見え、正直あまり感じのいいものではありません。

事実、2023年のピュー研究所による世論調査によりますと、アメリカ人の24パーセントが現在のシステム制度に賛成しているのに対し、反対は40パーセントということから、全体的に好意的に受け止められてはいないようです。また、成人の約7割が、5年前よりも今日ではチップを払うことが求められる場所が増えているとも回答しております。

チップは伝統的に、州ごとに決められた最低賃金を補うものとして有効ですが、今やカリフォルニア州の最低賃金は時給16ドルとなっており、本当に今のような高額なチップ制度が必要なのかと感じてしまいます。

JECCICA客員講師 渡辺泰宏

JECCICA客員講師 渡辺泰宏

カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。


 - JECCICA記事, お知らせ, その他, コラム, ニュース

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

Copyright© JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 , 2024 All Rights Reserved.s