拡大するAmazonの物流
新型コロナウィルスによるパンデミックにより、Eコマースが大幅に売上を伸ばしておりますが、拡大するEコマースにおいて顧客満足度を左右する大きな要因の一つとして物流があります。
物流の理由による配送遅延は、特に注文が大幅に増加するホリデーシーズンで頻繁に発生していました。過去に何度かこのような遅延を経験したAmazonは、第三者による配送遅延の防止を目指し、現在では自社で膨大な物流ネットワークを構築しています。
Amazonにおけるおおまかな商品の配送プロセスは、全世界で175ヶ所以上あるフルフィルメントセンターから仕分けセンターに商品が移動され、ここからAmazonの貨物機や配送トラックに加え、UPS、USPS、FedExなどの運送業者が使われます。注文顧客へは各運送業者が配送しますが、最近は各地でAmazon Primeのマークのついた配送バンを見かけるようになりました。
これらの配送バンは、Amazonが仕分けセンターから各地域にある配達ステーションに移動した商品を、Amazonのデリバリーサービスのパートナーが各顧客に配達するものです。このパートナーはDSPと呼ばれ、アメリカ、カナダ、イギリス、スペイン、ドイツに800以上存在します。
ところで、子会社を含みAmazonがどのくらいの貨物機、配送トレーラー、配送バンを保有もしくはリースしているか想像がつきますでしょうか。諸々のデータを見ますと、次のような数字になっています。
– 貨物機 (Amazon Air): 51機 (さらに19機発注中)
– 配送トレーラー: 20,000台
– 配送バン: 30,000台 (さらに電気自動車を 100,000台発注中)
物流専門のFedExは650機、UPSは267機の貨物機を保有しており、これらに比べてAmazonはまだ小さな数字ではありますが、それでもEコマースベンダーと考えればいかに多くの貨物機を保有しているのかわかります。これらの貨物機は、現在3ヶ所まで増強予定のハブ空港も合わせて30以上の空港で運行しております。
また、配送トレーラーを見ますと、小売業界で激しく競争するWalmartの保有トラック数は6,000台ですので、実にAmazonはその3倍以上を保有していることになります。
ところで、電気駆動の配送バン100,000台の発注先はRivianという電気自動車のスタートアップ会社で、Amazonも7億ドルの投資をしております。フルフィルメントセンターなどを含め、いかにAmazonが物流戦略を重視し、多大な投資をしているのかよくわかります。
AmazonのEコマースシステムの応用から発展し、クラウドコンピューティングサービスの第一人者となったAWS(Amazon Web Services)同様、Amazon Airを含むAmazonの物流もいずれ他社に対するサービスの提供をしていくかもしれません。Amazonは、小売、EコマースのAmazonではなく、一大コングロマリットと言えそうです。
(貨物機の写真はAmazonのホームページより抜粋、配送バンは筆者撮影)
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。