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EC需要も頭打ち? 経産省調査で見える未来

コロナ禍で物販のECは成長
ネット通販は頭打ちを迎えているのかもしれない。
先日、経産省の「電子商取引に関する市場調査」が発表されて感じた事である。2020年から新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、確かにネット通販は飛躍した。

この中にも書かれているけど『巣ごもり消費によって、ネット通販が底上げされた金額』は少なくとも1兆2000億円であると試算される。また、いわゆる物販のBtoC ECの市場規模は対前年比で成長率は21.71%と大幅増で12兆2333億円となったとある。
しかし考えてみるに、これだけの変化の中で、ネット通販の伸びは、この程度なのかとも言えないだろうか。

生活が変われど物欲変わらず 中身が変化
ちなみに「個人消費」自体はどう変化したのかを見てみよう。これはネット通販に限らずリアルの消費も含んだもので、コロナ禍での人々の行動を示すものであるといえよう。

総務省統計局の家計調査に基けば、2020年においての「1世帯当たりの財(商品)の支出」は153万7000円。この数字は前年とほぼ同レベルであり、それどころか前年比0.6万円増と少し増えている。コロナ禍で外出自粛が進もうとも、日本人における物欲は変わることがなかったわけである。

では何が消費されたのかといえば、ずばり「家電」系で63,710円(昨年は57,304円)で昨年対比11.2%も伸びている。巣ごもり需要を反映しており、中身も冷蔵庫などは全く例年と変わりないのに対して、テレビなどのAV機器といったものが売れているのが特徴だ。

わかりやすいのは衣料・服飾雑貨が昨年対比18.1%減で、これをみても外に出ていない分だけ家の中への投資にまわって、トータルでは日本人の物欲に変わりはなかったという結果になるわけである。

次に顕著に伸びたのが食品。年間平均支出金額は678,550円で昨年対比4.5%増である。これはかなり異例な数字。その証拠にそれまで例年、食品の伸び率は限りなく0%に近かった。間違いなく家で食べる機会が増えたということになる。

現に大手コンビニなどの動きを見れば、コロナ禍に応じて店舗レイアウトの変更を行い、巣ごもり消費に応える冷凍食品や酒類の品ぞろえを増やしていて、一部店舗では冷食の売り場面積を2倍に広げたりもしている。

レイアウト変更した店舗では平均日販が約1万5000円改善するなどもみられているそうで、こうした甲斐あって食品の消費に向かったのは明らかであろう。

食品のEC化率はわずか3%
さてここで最初に話した「ネット通販はそろそろ頭打ちではないか」という話に戻す。今、ここでは食品の個人消費が上昇した話をしたけれど、ネット通販の利用はいかほどか。

そこで、もう一度、経産省の「電子商取引に関する市場調査」でカテゴリーごと「EC化率」をみてみるわけである。EC化率は「小売でECが占める割合」である。

それでいうと、食品の「EC化率」は3.31%に過ぎない。これだけ個人消費が伸びていてもそこでネットが占める割合はわずか3%に過ぎないのである。要は、カテゴリーごと相性があることがわかる。結局、消費が増えても食品においては近隣のスーパーやコンビニを使っていた可能性が高い。

つまり、コロナ禍によりネットでの利用が増えたと言いつつも、人々の生活・習慣は個人消費に強い影響力を及ぼしている。リアルの方が相性がいいものは、ネットができたからといって、簡単にそちらに移行するものではないことが、コロナ禍だからこそ一層よくわかる。

単純なネット化はこれから淘汰される
だから、これからは単純に今やっていることをネット化するだけでは、人々の生活が変わるわけではないので、と寧ろ、今後の参入者は同じ牌の取り合いになって、以前より厳しくなるだけなのである。

では、どうすればいいのか。だが、そのヒントは、例えば、書籍、映像音楽ソフトにある。EC化率が42.97%である。これはネットならではの利点がリアルを上回るからこそ起きている。

ツイッターやブログなどで話の流れで、本の紹介がされて、AmazonのURLが書いてある事は今では当たり前の光景だ。かえって本屋で探すよりも、購入至るまでの動線がわかりやすくスムーズである。

ネットにしかできない価値は本屋の価値を上回っているからこそ、そのシェアを奪い取れたというだけのことである。繰り返すが、月々支払われる給料は増えないわけだから消費の内訳は変わらず、生活習慣が変わらない限り、今のままではネットが伸びることはない。

だから、以前、書いたが、ShopifyがリアルやSNSとの連携を通して「ものを買う」という行為を他の行動に融合させる事を意図しているのは、まさにこの文脈に繋がる。

物販のECには伸び代が確かにある。但し、旧態依然で購入していたネットショッピングは今まで以上に参入者が増える分だけ、競争が激化して、長い目で見ると、気を引き締めなければならないことがよくわかるのである。新たな一手がそれぞれに求められる。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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