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EC-CUBEの取締役COOになって思うこと。

こんにちは、恩蔵(ONZO)でございます。7月号以来、約4ヶ月ぶりのコラムです。先日行われたJECCICA10周年パーティーで、ご挨拶させていただいた皆様ありがとうございました。あらためてJECCICAの信頼度そして人脈力はすごいなと感じました。

さて。個人的にはというと、この4ヶ月で環境が大きく変わっております。
世界と日本をつなぐ越境ECビジネスを展開する株式会社Maddler及びMaddler USA LLC.は継続経営していますが、それとは別に、あそこか!と言われる方も多いかと思いますが、7月よりEC-CUBE(株式会社イーシーキューブ)で取締役COOを務めています。グロース上場企業であるグループ親会社の株式会社イルグルムに属し、兼務出向という形でJoinしております。

私にとって基幹開発側は初めての経験です。2004年からECの世界に来て以来、ほとんどが運営側でしたので。OSSというオープンソースの形態をとっているのでより未経験領域です。JECCICAのパートナーでもあるGMO-PGさんのような決済代行企業と連携を取るのも初めてです。今でもわからないことがたくさんあります。

このコラムでEC-CUBEの宣伝をするつもりはなく、ローンチ17年という年代を超えて使われてきて、紆余曲折ありながらも日本で一番選ばれ続けているECオープンソース企業にJoinしたことにより、今までとは異なる側から見るECの世界に気付けたので、そこを今回は書きたいと思います。

社に入る前の一番の疑問は、
・ローコード・ノーコードの時流の中でなぜEC-CUBEが生き残っているのか
・そして、OSSはどのようにして成り立っているのか でした。

一度でもEC-CUBEを使ったことがある方ならご存じかと思いますが、EC-CUBEと他社との一番の違いはOSS(オープンソースソフトウェア)です。
楽天・Yahoo!のような出店モールでもなく、BaseやShopifyのようなコマースプラットフォームでもなく。

EC-CUBEはデフォルト機能でもそのままECサイトとして利用できますが、基本はカスタマイズを行うことで性能を発揮します。カスタマイズ前提なので要望に応える自由設計が可能です。モールや通常のECツールではなかな対応出来ない販売方法を行う店舗や企業から求めらることがほとんどで、スタートアップから大企業まで推定35,000店舗以上に利用されているECオープンソースです。
そしてそれをなんと無料配布しています(!)イーシーキューブ社が基幹を無料配布し、外部の開発ベンダーがサイト構築をし、必要なプラグインを導入し、決済企業を決め、店舗がECサイトとして運営します。とんでもないビジネスモデルだな・・と思いました。
※OSSとは、無償または最低限必要なコストで公開されたプログラムソースコードで、自由に利用や改変、再配布ができるという特徴があり、よく知られているOSSにはJavaやPHP、Firefoxなどがあります。

社に入ってみて一番の驚きは、社員が少数精鋭。基本開発経験があるメンバーが多く、OSSという特徴の影響もありますが他社のような営業はいない。代わりに日本全国に存在する社外の”コミュニティ”がキューブ社員の代わりに営業活動や開発、毎月の勉強会、脆弱性の報告まで行っています。

EC-CUBEはソースコードを公開しているオープンソースですが、イーシーキューブ社自体がセキュリティチェック含め、本体開発をとりまとめ、長年に渡り運営を続けています。その本体が起点となって、キューブ経済圏がアメーバのように広がって、OSSという特殊な世界を皆で盛り上げようとしていたのです。

”推し”が日本全国にいる。これだけ外部に支えられている企業はEC界外でもほとんどないのでは・・これには本当に驚きました。

ちなみに、”イーシーキューブ”は社名・”EC-CUBE”はサービス名です。

僕の疑問、特にノーコード時流の中でなぜEC-CUBEが生き残っているのかの答えは、圧倒的な差別化でした。
コマースプラットフォームは拡大するがカスタマイズが・・ここの問題に答えられるのがOSSでした。

欧米はシステム(ツール)に業務を合わせ、日本は業務に合うシステムを探すというのを記事で読んだことがあります。どちらが良いかということではないのですが、実際お客様と話していて、自社の業務をスムーズに継続するためのシステム選定に苦戦している声をよく聴きます。そのペインに対して、EC-CUBEの自由なカスタマイズ性は非常に有益でした。個別対応の市場は大きくなると予想していて、特に大手企業クラスはパターンオーダーの必要性を強く感じています。
EC-CUBEは単品販売とか普通に商品を販売する場合には、あまりパフォーマンスを発揮できません。何かしらのカスタマイズが必要なところで輝きます。そしてOSSなので、カート依存がなく、顧客データや資産を企業(店舗)側が自社内に保有することができる。
得意不得意がはっきりしてる。この差別化が今も求められている理由でした。

新しい世界を知って、あらためて感じたことがあります。
OSSだろうがプラットフォームだろうがSaaSだろうが、それは正直どっちでもよく、お客様の課題解決をすることが何よりも大切で、それが事業成長に繋がるんだと。それに気づき、当社はプッシュ型よりプル型案件が多くを占めるので、外部からのリクエストに応える専門部署を設立し、様々な要望に即時対応できる環境を作りました。またEC-CUBE本体の定期的なバージョンアップも施していて、インボイス・特定商取引法の法改正などにも対応済。最新は2023年10末にリリースされた4.2.3系で、主に複数のセキュリティ強化機能及び脆弱性関連がアップグレードされてます。

昔はシンプルにEC-CUBEに先行優位性があったと思います。EC市場そのものも右肩上がりの成長を辿ったので参入プレイヤーも増え、当社も過去脆弱性のご指摘もあり、なかなかの競争市場となりました。

ただこれからの時代は競争ではなく共創です。JECCICA10周年パーティーでも、事業ジャンル問わず「共創」という言葉がとても多く出ていたと記憶しています。今後、より複雑になっていく可能性のあるEC設計。そもそも、物販だけの枠を超え始めている中、サイト構築における選択肢が広がっているのはEC市場にとって、とても素晴らしいことだと思いました。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 恩蔵 優(おんぞう まさる)

得意分野 / 大中小規模コマース運営、事業創造、越境EC、グローバル物流、HRBP人事
1976年生まれ、日本大学法学部卒業。 起業やIPOを複数経験し、スタートアップから大企業まで第一線で戦い抜いてきながら小規模ながら個人投資家としての側面も持ち合わせる。
(株)ネットプライスをきっかけに2005年からEC界に入り、ITに物販の知識を組み込み、バイヤー及びマーチャンダイザーとして注目される。
その後広告代理店・アパレル・EC・グローバルSNS企業等のMGR・CxOを歴任。
オンライン・オフライン関わらず20年以上モノに関わり、国内仕入れから越境ECまで熟知するマルチプレイヤー。


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