Eコマースで購入した商品の返品
オンラインショッピングのネガティブな面として、送料の高さと返品の煩わしさがあります。送料に関しては、2008年にFreeShippingDayが設けられ、当時は無料配送が一般的でなかったことから、メディアの注目も高く、数百のショップが参加し、売上増大に貢献していました。翌年の2009年には750以上のショップが参加、公式サイトwww.FreeShippingDay.comを通じて350,000以上の販売が行われ、3度目の2010年は、ホリデーシーズンで3番目に高い売上を誇るまで普及しました。
ちなみに、2011年には当時のオンラインショッピングの目標ハードルとなっていた単日10億ドルを突破しています。最近は、購入金額や期間限定等に応じた送料無料サービスを提供するショップも増え、現在のFreeShippingDayサイトは、2017年に開始した割引クーポンサイトとしての位置付けが強まっていますが、FreeShippingDayはオンラインショッピングの普及に十分貢献したと思われます。
一方、消費者の75パーセントが返品をしたことがあるというUPSのデータにあるとおり、”サイズが合わなかったり、気に入らなければ返品すればいい”といったような返品文化がアメリカでは根強い中、実店舗での購入と異なり、オンラインショッピングでの返品プロセスは、ショップへの返品リクエストに始まり、返品のための梱包、返品帳票への記入やラベルの印刷、配送業者への持ち込みなどの面倒なプロセスに加え、配送費用や返品費用等の負担などから、返品をしたくてもしない消費者も多々おり、それがオンラインショッピングのもう一つのネガティブな側面になっているとも言えます。
そのため、返品を容易にするためのサービスが、各方面から対策が講じられてきております。
以前のレポートでご紹介したことのあるHappyReturnsもその一つですが、2017年に始まったNationalReturnsDayの設定も容易な返品対策の一つであります。最初のNationalReturnsDayは2017年1月5日に設定され、UPSだけで130万パッケージの返品があったそうです。
3回目のNationalReturnsDayは今年の1月2日に設定され、まだ正式な数字はでておりませんが、前回(2018年12月19日)よりもさらに26パーセント増加の190万パッケージの返品がインバウンドパッケージとして倉庫などに戻ると予想されています。
返品を容易にするために、UPSは既存の4,700以上のUPSストアに加え、9,000近くのアクセスポイント、40,000近くのドロップボックスを設置して対応しています。
FedExもUPS同様、小売チェーン店舗やドラッグストアなどをアクセスポイントネットワークに追加し、平日夜や週末でも返品を受け付けております。
BlackFridayやCyberMondayが、ホリデーシーズンにおけるアウトバウンドのロジスティクスにとって大きなイベントであるのと同様、NationalReturnsDayは返品管理部門にとって、ビジネス規模に関係なく、販売システムでの再処理、再パッケージ、リストックなどによりホリデーシーズン後の大きなイベントとなります。
また、最近はAmazonでも返品プロセスを大幅に向上させております。
アメリカ国内で1,100店舗展開している小型百貨店のKohl’sとのパートナーシップにより、Kohl’s内にあるAmazonReturnのドロップオフ場所にて返品ができるようになりました。
ここでは、返品用の梱包をする必要がなく、Amazonへの返品リクエスト後、商品をそのまま持ち込むことにより、梱包をはじめ、返品ラベルの印刷などはKohl’sが行ってくれます。
また、Kohl’sに商品を持ち込み返品手続き終了後、数時間以内でAmazonWalletへの返金が完了することもとても便利と感じます。
返品プロセスは顧客経験を左右する大きな要因ともなります。
UPSによる最新のオンライン購入に関する調査によりますと、購入客の73パーセントが、全体的な返品体験がそのブランドやショップから再び購入する可能性に影響を与えると述べています。
また、68パーセントは返品体験がブランドやショップに対する全体的な認識を形成すると答えています。
返品は次なる販売へのステップともなりますので、返品まで考慮したEコマース戦略が求められます。
JECCICA客員講師 渡辺泰宏
カリフォルニア在中チーフエグゼキュティブ、戦略ビジネスコンサルタント。日米の顧客に対し、新規ビシネス戦略立案および解約、新規パートナー開拓、コーポレートマーケティング、オンライン、ソーシャルメディア、モバイルマーケティングの戦略立案、EC市場動向分析及び商会等の戦略的コンサルティング。