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経済的な配慮をするはずの軽減税率が重荷「ECサイトに影響およぼす消費税引上げ」

7月21日の第25回参議院議員通常選挙を終え、各候補者の公約を拾えば、既に決まっている「2019年10月1日の消費税率引上げ」についての論争が始まっているかも知れません。このコラムをご覧いただくころには、10月1日の消費税引上げはゆるぎないものになっていることと思います。2ヶ月と迫る消費税率引上げは実施されるものとし、準備を進めているものと思います。今回は、10月1日からの消費税引上げがECサイト運営におよぼす影響を整理してみたいと思います。

消費税率引上げの内容は、
国税庁公式ホームページによると、
2019年10月1日実際の消費税率引上げは、

国税庁公式ホームページより抜粋引用
(国税庁公式ホームページより抜粋引用)

注1)令和元年10月1日以後に行われる取引であっても、経過措置により旧税率が適用される場合
があります。消費税率及び経過措置の適用関係については、コード6950社会保障と税の一体改革関係をご参照。

注2)引上げ後の税率は、経過措置が適用されるものを除き、適用開始日以後に行われる資産の
譲渡等について適用されます。詳しくは「消費税法改正のお知らせ(平成28年4月)(平成28年11月改訂)」を参照。

注3)軽減税率の適用対象となる飲食料品の譲渡等は、次のとおりとされています。詳しくは「消費税
の軽減税率制度について」を参照。

① 飲食料品の譲渡(食品表示法に規定する食品[酒税法に規定する酒類を除く。]の譲渡をいい、
外食を含まない。)

② 定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡。

消費税率と地方消費税を合わせた一般的に言う「消費税」が、8%から10%に引上げとなるのが、今回の令和元年10月1日から改正執行される消費税率引上げです。そこで、ややこしくしているのが、飲食料品に適用される「軽減税率制度」です。

消費税の軽減税率制度とは
軽減税率は、「低所得者へ経済的な配慮をする」という目的のもとに特定の商品の消費税率を一般的な消費税率より低く設定するもので、生活する上で日常使われる食料品などが対象です。引上げ前の消費税率8%となります。国税庁は軽減税率を、「いつまで行うのか」については言及しておりません。社会情勢の変化によって終了を宣言するかも知れません。

軽減税率制度対象商品サービス

国税庁は軽減税率の対象になる商品サービスを以下のように公表しています。
酒類を除く食品表示法に規定されている飲食料品と週2回以上発行されている新聞は軽減税率の対象になり、消費税8%に据え置かれます。一方で、酒類、外食、ケータリングの食事などについては軽減税率の対象とならず、現状通り消費税率10%が適用されます。

軽減税率が対象の商品なのか、外食かテイクアウトか、などにより適用サービスなのか、考えつく事例や商品、サービスについて以下にまとめてみました。

軽減税率制度対象商品サービス

店頭でお買い上げいただいたものが、イートインなのか?お持ち帰りなのか?どこか長閑な公園などでいただくのか?お客様の行動予定をおたずねし、レジ打ちをしないといけない!

軽減税率の対象品目の区分が複雑で、
定員:「お客様!この氷食用でいただけますが、クラーボックスの冷蔵用にお使いですか?」
お客様:「最初はクラーボックスに冷蔵用に入れますが、それから水割用として使います。」

さてレジ軽減税率区分はどっち?

2019年10月1日から軽減税率導入に伴い、「区分記載請求書等保存方式」が導入され、2023年10月1日からはインボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入が予定されています。

当面、以下の記載をした区分記載請求書のレシートを発行する必要があります。
・軽減税率対象商品の販売である旨
・商品代金の税率ごとの合計額

当然ながら、レジシステムの改修が必要となり、軽減税率制度開始に伴ってレジシステムメーカーや政府は盛り上がりを見せており「軽減税率対策補助金制度あります」といいますが、システムの改修には関連費用がかかります。「低所得者へ経済的な配慮をする」という目的で制定される軽減税率、小規模小売店などに経済的な負担をかけていると言えます。

ここまでで、なんとなく軽減税率制度の対象品目「アルコール以外の飲食料品」、「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」のお取り扱いのない事業者は、2019年10月1日からの消費税率引上げで「標準税率10%」に修正対応すればよい。とお考えではないでしょうか?消費税課税事業者は、軽減税率対象品目の取扱がなくとも、全て消費税改正、軽減税率制度の影響を受けます。EC事業者は特に販売取扱商品で判断しがちですので要注意です。

消費税改正後は、
〔申告・納税〕
軽減税率が適用される売上(仕入)と標準税率の売上(仕入)をそれぞれ計算し、明確に分けて記帳・集計し、申告の際の税額計算は、軽減税率が適用される取引の1年間の合計と標準税率適用分の1年間の合計を分けて計算しなければいけません。

〔商品管理〕
軽減税率対象品目と分かるよう、区分した商品管理や、適用税率が分かる請求書(レシート)等を発行しなければいけません。

軽減税率対象品目の取扱いがなく売上部分で軽減税率が適用される売上がなくても、職場でのコーヒーや茶葉など、福利厚生などで軽減税率が対象となる品目を1年間で1つでも購入し、経費として計上するならば、税率ごとに(区分経理)記帳しなければなりません。

それでは、「消費税引上げでECサイトにおよぼす影響」というか、EC事業者が対応すべきことを整理してみます。

EC事業者は、ECサイト運営に関わる以下の確認作業をします。
1)販売商品、仕入商材を「標準税率」と「軽減税率」に区分け、商品ページには「標準税率」と「軽減税率」を正しく適用した販売価格を表示する。
2)納品書を発行する場合は「軽減税率」の商品を明記しなくてはならない。また、「標準税率」と「軽減税率」の販売金額を、それぞれ記載する
3)軽減税率の対象品目の売上や仕入が発生する場合は、売上と仕入の取引を帳簿に記載する際、取引ごとに「標準税率」または「軽減税率」を区分して記載・保存する。
4)「軽減税率」と「標準税率」に区分した上で、税率ごとに消費税納付額の割戻し計算を行う。
5)税務署に登録した「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」を保存する。

「飲料・食品ジャンル」ではない!と消費税軽減税率制度の対応を軽視するのは禁物です。

キャッシュレス・消費者還元事業
中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援する「キャッシュレス・消費者還元事業」について紹介します。「キャッシュレス・消費者還元事業」は、2019年10月1日の消費税率引上げに伴い、需要平準化対策として、キャッシュレス対応による生産性向上や消費者の利便性向上の観点も含め、消費税率引上げ後の一定期間に限り、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポイント還元を支援するものです。本事業は経済産業省より採択され、 当省監督のもと一般社団法人キャッシュレス推進協議会が事務局業務を運用しているものです。

本支援事業を実施しポイント還元することで、EC事業者・消費者双方にメリットを与え、消費喚起を後押しするとともにキャッシュレス化を推進します。

消費者還元の仕組み

消費者還元の仕組み

経済産業省PDF資料より

キャッシュレス・消費者還元事業に登録されたキャッシュレス決済事業者の「決済手段」や「入金タイミング」などからプランを検索し、プランの詳細を確認しキャッシュレス決済事業者を選び、プランに申し込みます。ECモールに出店している場合は、モールが採用している決済手段のプランに申込み補助を受けます。各モール申込期限があり、楽天市場7月25日までYahoo!ショッピング 7月26日まででした。締め切り以降の申込みは、遅れての参加も可能ですが、還元事業に参加すると、各モールから補助をうけることができます。

【楽天市場の場合】
事業期間(10月1日から2020年6月30日予定)内の楽天市場でのクレジットカード決済の注文に対して以下の補助があります。
ユーザには:利用のクレジットカード会社のポイントが購入金額の5%付与されます。(楽天カードを利用の場合は楽天スーパーポイントが付与されます)。
店舗には:クレジットカード決済利用料が税込3.25%以下に引き下げになり、さらに1/3が後で補助金として還付されます。

【Yahoo!ショッピングの場合】
1)期間中はクレカまた及びPayPay支払の決済手数料が実質2.16%以下
2)対象注文の購入者様に決済額の5%のPayPayボーナスまたは、PayPayボーナスライト還元。
3)店舗は集客力upに繋がります。

【Amazonの場合】
7月23日現在、amazonからは正式なアナウンスがなく、
キャッシュレス消費者還元事業のWeb. http://cashless.go.jp/に、登録決済事業者のリストが随時更新されていますが、7月19日更新公表されているリストには、amazon pay などアマゾン関連の事業者は含まれていません。しかし、Amazonの「キャッシュレス消費者還元事業」8月1日登録開始する予定とのことです。この会報誌発行時には、開始されているものと思います。

キャッシュレス消費者還元事業については、ある程度の売上規模にでないと、手続き以上のメリットを感じないかも知れませんが、消費税引上げの対応は、消費者にとってもメリットあることなので、早々に準備しておくべきと思います。

JECCICA特別講師

JECCICA特別講師 松橋 正一

楽天、ヤフー、amazon、自社サイトなどECサイトの運営経験を基に、数々のショップを構築サポート。大規模ECサイトの効率的な構築、データ処理システム構築を得意とする。


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