2022年春に公募開始になった補助金について
このコラムが掲載される5月中旬は、昨年度話題になった「事業再構築補助金」の第6回公募が始まり、「小規模事業者持続化補助金」の第8回受付、IT導入補助金2022」の1次受付が終了間近であると思います。本年度はこの3つの補助金の特別枠から「コロナ」という文字が取れておりますが、新たに「特別枠」が出来ております。
今回はこの3つの補助金について説明いたします。どの補助金を申請するのも電子申請となりましたので、GビズプライムIDが必要です。アカウント未取得の方はお早目に申請してください。取得に2週間くらいかかります。
事業再構築補助金について
初年度だった昨年度は予算1兆2000億円でしたが本年度予算は6000億円程度みたいです。この補助金は認定支援機関と協業で事業計画書を作成するのですが、それでも採択率は40%に届きません。私は昨年度この補助金に携わりましたが理由がいくつかあります。
①そもそもの事業再構築類型設定に無理がある。
この補助金は「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」と5つの類型があるのですが、この類型の「新分野展開」と「業態転換」は、事業計画書で定める製品等の新規性要件、市場の新規性要件、新事業売上高10%等要件(新たな製品等(又は製造方法等)の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となること)等)を満たす計画であることが必要となります。「事業転換」と「業種転換」は10%要件ではなく、再構築する事業が会社の売上高構成比で最も高くなる計画を策定しなくてはいけません。現実的に売上が低下している会社が、再構築で始めた新規事業が3~5年後にこのような形になるとは思えないケースが多いということです。つまり向き不向きな事業が存在します。類型の5つの違いをよく理解して、申請準備を進めましょう。
②資金繰りや返済計画を無視した計画が多い
再構築補助金だからといっても一時的に事業資金は全額資金調達を行う必要があります。この補助金は金融機関が認定支援機関を兼ねているので、採択されてから補助事業終了まで「つなぎ融資」を行うケースが多いのです。しかしこの補助金は建設費が認められているため、補助金の交付決定を待たずに事前着手を行う事業者が圧倒的に多かったです。中には不採択だったけど事前着手を申請したので、申請出来る限り申請をつづけた企業も多かったです。これは良し悪しもありますが、そもそもの事業計画と資金繰り計画に整合性が厳しい、採算性や投資後の事業の成功率を審査員が検討して無理だと判断されたら当然不採択になります。またどの時点で損益分岐点に到達しているかも審査員はじっくり計算しているので事業の新規性だけでは採択されません。しかし、補助金金額が大きいのでその中でのECサイト構築は非常に有効ですし、新事業で販売する商品のテストマーケティングとして事業計画に盛り込むケースも多く見受けられました。販売する商品が新規の商品であれば事業計画に構築費用が盛り込めます。補助金額は「通常枠」の場合は以下の通りとなります。
従業員数 | 補助金額 | 補助率 |
20人以下 | 100万円~2000万円 | 2/3 |
21人~50人 | 100万円~4000万円 | 2/3 |
51人~100人 | 100万円~6000万円 | 2/3 |
もし不採択になっても、事務局に問合せすれば採点内容とランクを教えてもらえますよ。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
小規模事業者持続化補助金について
この補助金も新年度から大幅ルール改正です。特別枠が出来ています。
申請類型 | 補助上限型 | 補助率 |
通常枠 | 50万円 | 2/3 (成長・分類強化枠の一部の類型において、赤字業者は3/4) |
成長・分類強化枠 (賃上げや事業規模の拡大) | 200万円 | |
新陳代謝枠 (創業や後続候補者の新たな取組) | 200万円 | |
インボイス枠 (インボイス発行事業者への転換) | 100万円 |
「特別枠」の詳細は以下となります。
類型 | 概要 |
賃上引上げ枠 | 販路開拓の取組みに加え、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30万円以上である小規模事業者 ※赤字事業者は、補助率3/4に引上げ&加点 |
卒業枠 | 販路開拓の取組みに加え、雇用を増やし小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大する小規模事業者 |
後続者支援枠 | 販路開拓の取組みに加え、アトツギ甲子園においてファイナリストに選ばれた小規模事業者 |
創業枠 | 産業競争強化法に基づく「特定創業支援事業の支援」を受け、販路開拓に取組む創業した小規模事業者 |
インボイス枠 | 免税事業者であった事業者が、新たにインボイス発行事業者として登録し、販路開拓に取組む小規模事業者 |
「特別枠」の「インボイス枠」の補助上限:100万円。その他は補助上限200万円となります。課税事業者のインボイス対応を見据えた補助金に関しては、IT補助金通常枠をご検討ください。
※本年度からウェブサイトやECサイト等を構築、更新、改修するために要する経費は③ウェブサイト関連費として②広報費から独立しています。ウェブサイト関連費は補助金交付申請額の1/4を上限とします。またウェブサイト関連費のみによる申請はできません。つまり、通常枠の場合は補助金交付申請額の最大が50万円なので、その1/4の12.5万円しか申請できません。ここが大きな変更点(改悪点?)ですので注意が必要です。
https://r3.jizokukahojokin.info/
IT導入補助金2022について
本年度もこの補助金は「通常枠」と「特別枠」の2つに大別されます。
本年度から少額ですが、パソコンやタブレットといったハード費用が認められています!
特に、「デジタル化基盤導入類型」で「ITツール」のEC機能と決済機能の2機能のITツールであれば50万円~350万円の補助額となり、ECベンダーには追い風になるものと思われます。この背景として。小規模事業者へのWEB補助は終焉に来ており、コロナ禍の中でEC進出を検討している中小企業の後押しが始まっているものと解釈できます。
ただ、事業申請期間が5月と6月締め切りですので、ITベンダーとしてツールの登録をご検討されている方は急いで申請する必要があります。通常型は時間に余裕があります。
https://www.it-hojo.jp/
JECCICA客員講師 渡辺 太志
(株)アイズモーション専務取締役/プロフィットシステム常務取締役
コンサルタントとして企業の経営戦略から組織開発までトータル支援が可能。SNSを活用した集客・販促により宣伝広告費の圧縮を行い、経営改善に繋げるシステム作りのコーディネートを得意とする。