ECサイトからショッピングカートがなくなる日
ショッピングカート。
もちろん急にはなくならないと思いますが、そろそろ新しいものが出てきてほしいという願いも込めて…。
ECシステムを個別に開発していた時代
通販やEC関連の仕事をするようになって20年ほど経ちます。
最近ではほとんどやらなくなりましたが、10年くらい前まではECサイト、ECシステムはかなりの部分をスクラッチで構築していました。もちろん全くの新規構築ではなく導入事例を応用しての追加・修正ではありました。パッケージを呼ばれる製品もいくつかありましたが、EC事業者様のニーズに合わせてかなりのボリュームの開発作業を行っていたものです。
たとえば、
ご利用者様の属性によっての決済方法の表示
Flashでショッピングカートを構築したビジュアルなカート
定期購入や定期配送
合わせ買いのためのレコメンド表示
購入商品の配送まとめ
百貨店の中元・歳暮のようなギフト専用カート
プロモーション単位の個別商品単価設定
プロモーション専用カート
ご利用者様からの問い合わせ対応のためのCRM
名寄せシステム
商品によって必要なオプション選択を行うBTO
などなど…
個々の機能に関して詳しく触れることはできませんが、当時は独自性や多様性、差別化というキーワードで日々切磋琢磨していたような気がします。
いまではほとんどの機能が一般のECパッケージにも内包されていると思います。必要な機能は基本機能に盛り込まれ、時代とともに淘汰されたのもは必要なくなりと、おそらくは合理性、経済性や標準化のほうが優先されてきた結果なのだと思います。
ショッピングカートを考える
ECサイトの構成といえば、いわゆるプロモーションサイトやランディングページを除けば、TOPページ、カテゴリーページ、商品詳細ページとそしてショッピングカートとなります。
ECサイトへの誘導方法やECサイト自体の見せ方は多少変化してきているように思いますが、ショッピングカート自体はあまり発展が見られません。
そもそも購入したい商品を一時的に保持しておくための機能だからでしょうね。
また利用者の誤操作防止のためにあまりにも簡単に購入できないように二重三重にチェックをかけてきた歴史がありますね。機能が増えて、決済方法や配送方法も多様化してくるとより操作性に難がでてきます。そろそろ新しい概念の購入方法、購入導線の必要性を感じます。
リアルショップにおいてもショッピングカートは存在します。
スーパーマーケットに代表されるように、店舗が広く商品点数の多い店舗には必要かと思います。しかしそれ以外のお店ではあまり見かけませんよね。
特に高級店といわれるところではあまり使われていないように思います。
ECのショッピングカートはECシステムの創世期にリアルの概念をそのままシステム化したアイデアのまま、あまり進化していないような気がします。
新しいECの概念とは
一時期、ECの進化にはとてもめざましいものがありました。すべての業界でEC化率が話題となり、いつリアル店舗を超えるかがテーマとなり、オムニチャネルのキーワードが普及するとともにECがリテール全体を牽引するものと思っていましたが…。
実際にはどうでしょう。
やはりリテールを牽引するのはリアルショップであり、利用者との接点も含め様々なチャレンジを行っているのも今はリアルショップのほうがが多そうですね。
事業者様の投資意欲もECは減るばかりのような気がします。
当然ながら、リアルとECの融合・統合は必要だと思います。
しかしECそのものはリアルにはない、リアルには求められないECならではのものを追求していく必要があると思います。
リアルショップと同じテイストで商品を陳列していくのではなく、スーパーマーケットと同ようにショッピングカートに商品を乗せていくのではなく…です。
昨今、ECを取り巻く環境はかなり変化してきました。
SNS、チャットコマースやライブコマース、AIの普及などは様々な希望と想像をかきたててくれます。しかし、もっと便利に、もっと簡単に、もっと早くというニーズもあります。
さらにショッピング自体の目的もあります。ショッピング自体を楽しむ、商品の機能と比較を楽しむ、何しろ早く買いたい、納期よりも金額が安いほうがよい。
購入する商品によっても違いがあると思いますが、その個々のニーズに応えられるサイト構成と購入導線が必要なのではと思っています。
次世代ECシステムはおそらく買い物かごに乗せる時代ではなくなっていると信じたい。
それがECサイトからショッピングカートがなくなる日だと思っています。
JECCICA客員講師 和田 務
株式会社シーズファクト代表取締役社長 クライアントサイドに立ったITコンサルティングを経営、業務改善、物流といった幅広い視点から行い、企画から運用・保守まで全てのフェーズでのプロジェクト支援が可能。複数のITベンチャー企業の設立・経営に参画し、幅広い人脈を生かしての新規ビジネスの企画、アライアンス提案も行う。