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中古ドメインの危険性とは?旧公式サイトの悪用リスクと企業が取るべき対策

浅田真央さんの旧公式サイトのドメインがオークションに

2026年7月、プロフィギュアスケーターの浅田真央さんが以前公式サイトで使用していた「mao-asada.jp」が、GMOインターネットグループの「お名前.com」でオークション販売されていることが話題になりました。

とくに騒ぎになった理由として、「アフィリエイトサイトに」「SEO対策に」等のドメイン用途を示す紹介文が掲載されていたため、SNSなどでも注目を集めました。

「えっ、有名人の公式サイトで使われていたドメインが、そんなひどい売られ方で売られちゃうの?」という声が多かったのも当然だと思います。

出典:X
出典:X

過去にも本コラムで、ドメインが悪用されているという点で執筆したことがありますが、最近はまた以前とはまたは異なる視点でのドメインの扱い方の注意が必要となってきているようです。

ドメインは売買できるインターネット上の財産

少し意外に感じるかもしれませんが、ドメインについて説明するときに「インターネット上の住所」という表現をしたりするのですが、その表現の通り、ドメインは土地や建物のような固定資産と同じく、登記所のようなところに所有者を登録しておけば所有を主張でき、不要になれば売り買いできるというひとつの財産のようなものといえます。

ただし不動産と違う点としては、不動産が土地や建物という物的効果に限定しているのに対して、ドメインの効果はWebサイトのURLだけでなく、メールアドレスやSNSのIDなどインターネット内での幅広い効力を持つという点です。

もちろん不動産と同じく他人に譲渡することも可能ですし、不動産屋のようなところに対して手放すことも可能です。

今回の件では「お名前.com」がその不動産屋の役割を担っており、“指定事業者”というのですが、この指定事業者においては一定のルールに従えばそのドメインを再び販売することができるようになります。

この「一定のルール」というのが曲者でして、業界共通ルールというものがあるようでない。つまり、そのドメインが以前どんなサイトで使われていたかということや、そのドメインを取得希望の人が何に使おうとしているのかは問われないという特徴があり、ここが今問題になっています。

中古ドメインの価値とSEO目的での売買

この特徴にはもちろんメリットがあります。

手放す人としては、自分が育て上げたドメインを高額で譲渡することもできますし、全く畑違いの人に引き継ぐこともできます。

取得する人としては、キャンペーンサイトや季節的に一時的に開設するサイトなどで、汎用的に利用できてかつ見覚えのあるドメインが使えれば、利用者に安心してアクセスしてもらえるという点に加え、メールドメインとしても有効性が高いという大変大きなおまけもついてきます。

今回の「mao-asada.jp」も、浅田真央さんの旧公式サイトとして使われていたという背景がありますので、同姓同名の方が利用したり、浅田真央さんに関連するグッズ販売などで利用するような、いわゆる安心できる使いかたを想定して販売されていれば問題ありませんでした。

しかしながら今回問題なのは、GMOがドメインを販売するときに想定した購入目的です。

上記したような安心できる使い方を目的とした想定の販売でなく、アフィリエイトやSEO対策を目的としたな販売だったことが大きな問題です。この書き方では、あたかも指定事業者がアフィリエイト利用を推奨しているようにも見えますよね。

新しくサービスやお店を始める人にとって、過去に長らく使われていた評判の良いドメインは今まではSEOの観点から魅力的だと言われています。かなり狡い話ですが、インターネット上には、そのドメインを紹介する記事やリンクが残っていることがあるからです。

自分の知らないところに同ドメインのURLが残っていることでクローラーが勝手に拾ってくれることから、まったく新しいドメインとは違った評価を出してくれる場合があると言われており、過去に優良なサイトで使われていたドメインが「中古ドメイン」として高くオークションで売買されることもありました。いや、いまもあります。

偽サイトやフィッシング詐欺に悪用される危険性

しかし第三者が、このドメインを使って浅田さんとはまったく関係のないサイトを公開したらどうでしょう。以前の公式サイトを知っている人が、「浅田真央さんのサイトだ」と思ってアクセスしてしまう可能性があります。

さらに悪意のある人が、以前の公式サイトを装った偽サイトを作れば、フィッシング詐欺などに利用される可能性もあります。

おまけにこのドメインを使って正規のメールサーバを構築し、認証設定も入れてメールを送った場合、浅田真央さんのファンでなくとも信頼して開封してしまうのではないでしょうか。なりすましではないため取り締まることが困難な、正規のスパムメールが誕生してしまいます。

ドメインを手放した後も、その名前が持っていた“効力”まで消えるわけではないというのが、ドメイン再利用のもつ最大のデメリットです。

こうした問題は、有名人のサイトだけで起きているわけではなく、過去には、自治体や行政機関などが利用していたドメインが、サイト終了後に廃止され、その後第三者に取得されるケースもありました。

ドメインの再取得ルールと指定事業者の責任

今回の「mao-asada.jp」の件では、ドメインを販売したGMO側の対応も注目されました。

同社は、ドメインは特定の企業や個人が永久に所有するものではなく、ルールに従って廃止されたものは第三者が取得できる「共有資産」だと説明しています。そのため、「浅田真央さんの旧公式サイトだったから」という理由だけで、取得希望者への提供を拒否することはできない、という考え方です。

そもそもドメインの権利者はどのようにきまるかという点ですが、「.jp」ドメインの総合管理者であるJPRS(株式会社日本レジストリサービス)ではシンプルに先着順であると定めています。

出典:JPRS「汎用JPドメイン名登録等に関する規則」
出典:JPRS「汎用JPドメイン名登録等に関する規則」

つまり、先着順以外の問題で取得が断られることは原則的にないということになっており、GMOの主張とも一致します。

一方で、同社の販売ページに掲載されていた「SEO対策に最適」「アフィリエイトサイトに」といった表現は現在修正されており、ルール的には良いとしても倫理的にさすがにこれはまずいよね、と自浄作用が働いたのではないでしょうか。

今回の件について、Xでさくらインターネットの田中社長も苦言を呈していますが、弊社も「.jp」ドメインの指定事業者として著名なドメインを複数扱っている都合上、ドメインを契約更新しないという連絡があった際の取り扱いにはかなり注意しています。

ドメインの取得の支障になるのが「先着かどうか」しかないという現在の原則ルールである以上、安全なインターネットを保持させるためにも、ドメインの再利用については注意する必要があり、まず我々指定事業者各社が倫理的に取り組まなければならないところです。

サイト閉鎖時に企業が注意すべきこと

では、旧ドメイン保持者側には何も問題がないのかというと、そこも考えるべきところだといえます。

ドメインは自分で育ててきた財産でもあるので、財産を売るのは自由で構いませんが、それが悪用された場合には自分の価値を下げることにも直結します。最悪の事態としてフィッシングなどの犯罪を起こされた場合は、犯罪の片棒を担いだようにも見えてしまいます。

今回の問題になったのはWebサイトのドメインですが、皆さんもサイトを閉鎖したり、ドメインを変える必要性が出た時には、今回のことを是非思い出してください。ドメインが長く使われていればいるほど、多くのお客様に利用されていればいるほど、そのドメインを手放すことは犯罪につながりやすいのは確かです。

サイトを閉鎖するときには、「Webサイトを閉鎖する」「サーバを解約する」という行動だけではなく、そのドメインを使っているものをすべて整理して、悪用された場合の事態も考えてみることが重要です。対処方法として、サイトを閉鎖した後も、数年~永久的にドメインを保有しておくという選択肢をされている会社もめずらしくありません。

ドメインには企業の歴史と信頼が蓄積されている

Web上のサービスを閉じるとき、私たちはつい「終了」という言葉だけで考えてしまいます。そんなときは、インターネットの世界では、サイトがなくなってもドメインは解約しても存在し続ける、ということを思い出してください。

そこには、これまで積み重ねてきた記事やリンク、検索結果、ブランドイメージ、そしてメールアドレスなど、目には見えない資産がたくさん紐づいています。だからドメインは、単なる「URL」という文字の羅列ではないことを忘れないでください。

長く使ってきた企業のドメインは、会社の歴史と信頼を反映する物差しでもあります。

今回の「mao-asada.jp」のニュースは、そんな当たり前のようで忘れがちなことを、改めて教えてくれた出来事でした。

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客員講師

酒井 愛子

株式会社リンクにてLinuxサーバの提案営業を担当しつつ、2016年よりメール配信システム「ベアメール」の立上げを行う。現在、営業の傍ら、各ECカート会社様、ショップ様のメールやサーバインフラに関するコンサルティングを行う。趣味は銭湯巡りとはしご酒。

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酒井 愛子

株式会社リンクにてLinuxサーバの提案営業を担当しつつ、2016年よりメール配信システム「ベアメール」の立上げを行う。現在、営業の傍ら、各ECカート会社様、ショップ様のメールやサーバインフラに関するコンサルティングを行う。趣味は銭湯巡りとはしご酒。

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