JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

最新セミナー・イベント情報
お申込みはこちら

クリック単価の高騰とAI運用の功罪。広告運用は原点回帰へ

ここ最近、「検索広告は成果が出にくくなった」という声を耳にする機会が増えてきました。かつては、悩みや欲求を直接的に表現する“検索行動”に対して広告を届けることで、高い確度で成果を出せる手法として重宝されていた検索広告ですが、Google広告の仕組みが大きく進化する中で、その扱い方も以前とは大きく変わってきています。

その変化の中心にあるのが、「インテントマッチ」と「P-MAX」です。

■ インテントマッチとは
Google広告では、登録したキーワードと検索語句が完全に一致していなくても、ユーザーの検索意図が一致しているとGoogleが判断すれば、広告が表示される仕組みになっています。これが「インテントマッチ」です。

たとえば、「パワーストーン」というキーワードで入稿している場合でも、インテントマッチを利用すると、「2月 誕生石」や「アメジスト」といった語句でも広告が配信されるようになります。つまり、広告の表示対象キーワードが「パワーストーン」以外にも自動的に拡張されていくわけです。

5年以上前までは、「配信範囲が広がりすぎてコントロールが難しい」という理由から、部分一致の入稿は限定的に使われる傾向にありました。しかし近年は、AIの精度向上により暴走するケースが減り、Googleの公式発表でも「基本的にはインテントマッチで入稿すること」がベストプラクティスとされています。

このインテントマッチによって、配信の幅が広がるというメリットがある一方で、新たな課題も生まれています。特に、ニッチなキーワードで地道に成果を上げていた中小広告主が、突如としてクリック単価の高騰に直面するケースが増えてきました。

■ ニッチキーワードのクリック単価の高騰
たとえば、ある地方のECサイトが「昆布茶 ギフト」という比較的ニッチなキーワードで安定した集客を行っていたとします。以前であれば、このようなキーワードに入札する競合は少なく、比較的安価に広告を配信できていました。しかし最近では、インテントマッチの影響により、大手企業が「お歳暮」や「健康食品 プレゼント」などのビッグワードで設定したキャンペーンが、意図せず「昆布茶 ギフト」にまで配信されるようになっています。

こうした状況になると、ニッチなキーワードにも大手アカウントの広告が表示されるようになり、広告オークションの競争が激化します。結果として、それまで安定していた中小広告主の配信ボリュームが減少したり、CPCが跳ね上がってしまうのです。

■ クリック単価の高騰に拍車をかけるP-MAX広告
さらに厄介なのは、Googleがこうした「AIによる露出面の拡大」を積極的に推進している点です。

象徴的なのがP-MAXと呼ばれる広告です。あえてシンプルに説明するならば、「広告配信の調整をすべてAIに任せるモード」といったところでしょうか。

P-MAXでは、インテントマッチ以上に広告露出拡大の自由度が高く、そもそも広告主がキーワードを指定することすらありません。広告の調整がAIに委ねられるため、大手企業の広告が意図せず「昆布茶 ギフト」のようなニッチなキーワードにも表示されてしまい、クリック単価の高騰がさらに進むことになります。

■ 検索広告は次のフェーズへ
こうした状況に直面した広告運用者が「検索広告はオワコンだ」と感じてしまうのも無理はありません。ですが、個人的には、検索広告そのものが終わったのではなく、「考えなくても成果が出る時代」が終わったのだと捉えるほうが適切だと考えています。

実際、今でも検索広告で成果を出しているアカウントは少なくありません。その多くが、以下のような視点で運用を行っています。

・キーワードをAI任せにせず、あえて完全一致を活用して意図しない拡張を抑えている
・ファーストパーティーデータ(顧客リストなど)を活用し、セグメントごとに配信戦略を設計している
・「誰に、どんな文脈で刺さるか?」を丁寧に考えたクリエイティブやLPを用意している

時代に逆行するような「1キーワード1LP」といった細かい運用の重要性も、最近は上がっているように感じます。

■今こそ原点回帰を

AIや自動化が当たり前になった今、広告の設定自体は誰でも簡単に行えるようになりました。その一方で、細やかに設計されたアカウントと、ただ「回しているだけ」のアカウントとの差はますます広がっています。

検索広告は今もなお、ユーザーの明確な意思に直接触れられる、非常に価値のある広告手段です。今、本当に求められているのは、「AI任せの雑な運用」ではなく、ユーザーのことを深く理解し、検索広告を通じて丁寧に接客をしていくような、ある種の原点回帰なのかもしれません。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 矢崎 宏一郎

(株)ISSUN チーフマネージャー
得意分野/WEB広告 EC販売支援
WEB広告のなかでもAI系広告を得意とし、事業規模に合わせた集客戦略でD2Cの売上を2年で10倍にするなどで、日本上位3%の代理店であるGoogle Premier Partner認定に貢献。


 - JECCICA記事, お知らせ, その他, コラム, ニュース

JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会

Copyright© JECCICA ジャパンEコマースコンサルタント協会 , 2025 All Rights Reserved.s