2025年 年頭所感 ECMSジャパン小松
新年明けましておめでとうございます。新春を迎えるにあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。
昨年、私が身を置く国際航空貨物業界は、アジア発欧米向けの運賃が大幅に上昇した1年でした。一昨年に低迷していた半導体関連の貨物需要が回復したこともありますが、やはり大きかったのは中国発の越境EC関連貨物による影響でした。日本でもお馴染となった「SHEIN」の中国発全世界向け航空貨物量は1日あたり約5000トン、「Temu」は約4000トンといわれ、単純計算ではこの2社だけで日本発の航空貨物総量の3倍以上の出荷をしていることになります。この様な大量の貨物需要が一気にアジアの航空貨物スペースを占有する一方で、航空機メーカーの機材生産は追いつかず、運賃の大幅上昇へとつながったのです。
もちろん、中国の越境ECのみならず、日本の越境ECも大幅に増加しています。越境ECというワードも以前は、限られた業界の方にしか通じませんでしたが、今では多くの方に浸透してきました。また、個人がメルカリやヤフオクに出品した商品が、海外の消費者に購買される事例も一般的になってきました。私は、この越境EC関連ビジネスの伸長傾向は今年も間違いなく継続すると考えています。そこで、今年も越境EC x物流という観点で、越境EC事業者の皆様に期待すること、また、押さえておくべきポイントを私の年頭所感として述べさせて頂きたいと思います。
まずは、期待することです。これは、毎年申し上げているのですが、皆様に更に積極的に海外へ打って(売って)出て頂きたいということです。上記の例の様に日本国内のC to Cプラットホームに出品された商品を海外消費者が気軽に購入できる仕組み作りが進みました。今年はさらに踏み込んだ大きな計画がいくつも進行しています。今後は各企業がこういった仕組みを活かし、越境販売するB to C市場が益々大きくなっていくと確信しています。また、円安の状況下、日本へのインバウンド旅行者が増加しています。日本旅行で知った商品のリピート販売や定期的にお届けをするサブスク販売など、地方都市の中小企業が簡単に海外へ販売できる仕組みも増えてきています。越境販売のハードルが下がった今こそ、是非それらを活かしてチャレンジ頂きたいと考えています。
次に押さえておくべきポイントを2つご紹介したいと思います。
まず1つ目は物流コストの上昇です。上述の通り国際物流費用は上昇しており、国内の物流費用も2024年問題や物価上昇で高騰しています。上昇するのは市場の流れなのですが、ポイントはその中で如何に競争相手より物流費用を安く抑えるかです。海外の消費者の多くは、配達までのスピードよりも輸送費用の安さを重視するとのデータが多くあります。たとえ明日に到着せず、来週に到着予定でも、自国内で購入するより安く日本の高品質な商品を入手できるところに魅力を感じているのです。他社が国際郵便で輸送しているなら、それより安く輸送する手段を見つけることが、自社商品を買ってもらう重要なポイントになります。
2つ目は、各国の越境EC制度の動向を注視することです。越境ECの輸送は各国の個人輸入制度や税制に大きく左右されるのですが、今年特に影響が懸念されるのがアメリカの800ドル問題です。現在、アメリカでは個人が1日に輸入する貨物の価格がUSドル800までは免税で輸入できるとの免税枠ルールがあります(輸入ライセンスが必要な一部の商材を除きます。)。ただ、これがアメリカ国内の小売業の発展を妨げているとして、この免税枠を安い金額に下げるための準備が進んでいます。当然ですが、輸入時に課税されてしまうと商品の価格競争力は落ちます。また、トランプ新政権では、対中国に関税の引き上げを明言しており、この動向も注視する必要があります。一方で中国は、昨年12月に個人輸入で一度に輸入できる金額を人民元1,000元から2,000元に引き上げ、ルールを緩和しています。この様に各国の越境EC制度は、経済状況や地政学的原因によりこまめに変更が行われており、越境EC販売に直接的な影響を与えることがあります。販売したい国の動向や情報をタイムリーに入手して、今後どの地域にどんな商材を販売するかを見極めることが大切です。
以上のように、越境ECビジネスを取り巻く環境は日々変化していきますが、今年もこのマーケットで微力ながら、業界発展の一助になるべく邁進して参りたいと思います。
最後になりましたが、本年がEC業界の皆様にとって、良い年となります様 心よりお祈り申し上げ、年頭のご挨拶とさせて頂きます。