2024年 年頭所感 石郷学
新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になり、誠にありがとうございました。
新しい年を迎える今、日本企業に必要なことは、何でしょう。「世界を一つ」と捉えて、勝負をしていくことなのかなと思っています。
先日、BEENOS代表取締役 直井聖太さんと話す中で、なるほどと思いました。SHEINやTEMUが台頭しているけど、「これは『越境EC』なんです」と。SHEINなどは、アメリカでヒットしているものの、製造は中国で行われています。
大事なことは、今までは世界の工場と言われて、下請けだったのが、自ら販売するようになったということです。下請けであれば、それは発注元のメーカーの意向に左右されます。例えば、国の関係性がその発注に影響することだってなくはありません。
ところが、自らブランドとしてアメリカで販売し、ダイレクトにアメリカの顧客と繋がれば、もはや顧客が求めている以上、安定して売り続けることができます。
そして、彼らは免税の仕組みを上手に活用しているのも見逃せません。扱う額が小さい場合、通関業者もそれをいちいち、承認していたら手間がかかるので、免税の対象となります。そこに着目したSHEINなどは「だから、安く売る」わけです。
その一件あたりの関税を免除してもらえれば、各国内と変わらぬ競争力を手にすることができるからです。これらの対策のため、免税の改訂を、シンガポールなどが行っている通り、国内企業は脅威に晒されます。
つまり、本来「越境EC」はその国独自の個性を持った商品だから海を渡り、他国で購入される。それが常識でした。しかし、彼らは別にその国でも変えるような日用品を「越境EC」で販売している。その実態こそが転換期であり、受け止めるべき現実です。
それに引き換え、日本企業はどうでしょう。
実は、それに絡んで直井さんに「意地悪な質問かもな」と思いつつ、こう聞いたのです。なんだかんだで、「越境ECで存在感があるのはリユース」であり、新品の数はまだ少ないのではないでしょうか。
ここからが本質的な話で、やっぱりそれを彼は認めながらも、日本企業における課題を自分たちの使命に置き換えていたのが印象的でした。
特に、ホビー商品然り、「買いたい商品が新品にない」から「リユースを買っている」という実態が少なくない。つまり、新品を出している企業は、越境ECをやっていないから、機会損失をしていることになります。
もう一つは、これだけインバウンドが戻ってきて、実際、そこでも新品を買っているのにも関わらず、結果、それらの商品のマーケティングが海外を意識したものではない。だから、結局、海外の人から選択されないという現実です。
これなどは、日本が「世界を一つ」に見ていないことを象徴する事実であり、そこに課題があります。ただ、考え方を変えれば、リユースでの売れ方をヒントにして、新品を売り出すチャンスもありそうです。売れていないわけではなく、可能性があります。
日本がこれから迎える、少子化云々を悲観するより、まず、世界を相手に収益を上げて、国の力を上げて、豊かな生活を作っていくことが大事なのではないでしょうか。中国を見れば分かる通り、放っておけば、海外の企業が侵食して、日本企業の価値を失いないかねないからこそ、その奮起が必要なのだと思うのです。
皆さんにとって、素敵で“豊かな”一年になりますように。
JECCICA客員講師 石郷 学
(株)team145 代表取締役