スポーツ施設のオンラインショップで成功する秘訣とは
新型コロナウイルス感染拡大防止策として、スポーツ施設の利用を制限している処は少なくない。それにより、売店やレストランの利用が減少している。
新型コロナウイルスとの闘いが続くなか、対面での販売方法を選択せざるを得ないリアル店舗では売上げが厳しくなると予想され、社会的にもオンラインショップの需要が高まっている。スポーツ施設も、売上を伸ばすための新たな販路を開拓するために、そして売店の商品や人気メニューを販売するために、オンラインショップを始めてはどうだろう。
オンラインショップ開店のコストが気になると思うが、「STORES(ストアーズ)」や「BASE」(ベイス)などのEC(電子商取引)支援サービスを利用すれば、無料または格安で簡単に開設できる。
だが、お客様をオンラインショップに呼び込むには、サイトデザインのクオリティも重要なので、専門業者にアウトソーシングするのもよい。近年は、業者間での競争が激しく、安く発注できるケースも多い。おそらく数十万円程度の予算でお客様の購買意欲を高めるクオリティの高いデザインにすることもできるだろう。自社のホームページ制作・更新を既に外部に発注している場合は、低予算で引き受けてくれることが多い。
ほかにも、商工会議所などの公的な機関に相談すると、EC事業の専門家を無料または格安で派遣してくれるので、活用することをお勧めしたい。
ショップ開設の目的や目標、方針を明確に
オンラインショップの開設が決まったら、最初に策定しておきたいのが、「ビジョン」、「ミッション」、「コンセプト」の3点。つまり、どのような目的・目標・方針をもとに開店・運営するのかを、明確にしておく必要があるということだ。売店の商品の販売を伸ばすことなのか、レストランの名物料理を多くの人に味わってもらいたいのか。目的や方針によって、サイトの作り方も変わってくる。これは企業経営にも通ずる考え方であり、これらが定まっていないと、オンラインショップに限らず、成功することは難しい。
次に、オンラインショップを運営するにあたってどのような役割・担当業務が必要なのか、表を参考にして考えてほしい。
専任のEC事業担当者をおいて、すべての業務を担当してもらえればよいが、それが難しい場合は、複数のスタッフに従来の業務に加えて表の役割を兼務してもらうことになる。扱う商品の種類や数に応じて、チームの担当人数を決めてほしい。
会員をターゲットに実店舗との相乗効果を
次に、購入ターゲットを明確にした上で、扱う商品のラインナップを決定する。
一見オンラインショップの方が幅広い世代に訴求できるように思えるが、どの世代・性別も閲覧するオンラインショップはほとんどない。お客様の顔が見えないため、商品選ぶためにターゲットを絞ることが重要となる。一方、実店舗はお客様の顔が目に見えるため、「どの購買層が、どの商品に関心があるか」を調査しながらターゲットを広げることができるし、顧客ニーズも把握しやすい。
その点、スポーツ施設は売店とオンラインショップのメリットをそれぞれ利用できる。つまり、スポーツ施設をよく利用する会員や常連客をメインターゲットに設定するのが効果的で、強みだと考える。
売店では、スペースの関係上、お客様が望む色やサイズがピッタリと合う商品の在庫がないかもしれない。そういう時にオンラインショップを開設していれば、タブレット端末を使ってその場で商品を選んでもらい決済・配送の手続きまで完了させられる。ある靴屋では、実店舗には展示品のみで販売商品は一切なく、その場でサイズや履き心地を確認してもらって注文を受け、商品はすべて配送というスタイルをとっているところもある。定期的に来場する会員であれば、自宅で商品を選んでオンライン注文し、売店で受け取ることもできる。オンラインショップをうまく活用すれば、売店の売上げを伸ばすことにも繋がる。
オンラインショップを開設したら、オムニチャネル戦略を取り入れてお客様を呼び込もう。オムニチャネル戦略とは、チラシ、ホームページ、新聞、メルマガなど、様々なメディアを用いる(「オムニ」=「すべて」)ことで、効果的なマーケティングやプロモーションを行う手法である。その1つとして近年では、SNSなども大いに活用できる。たとえば、ツイッターでオンラインショップや入荷した商品を紹介したり、フェイスブックでショップへ誘導することもできる。紙媒体にはQRコードを記載しておけば、簡単にオンラインショップにアクセスすることもできる。
また、集客(特に新規)に欠かせないのが、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)だ。これは、一般的に「Google」や「Yahoo! Japan」などの検索時に、自社や自社ショップなどを上位にランクインさせる技術やノウハウのことだ。SEOを活用して、検索時に人の目につきやすくしてみよう。まずは、主要な検索エンジンである「Google」のクローラー(プログラム)の巡回先に登録したり、共通するジャンルのWebサイトと相互リンクを張ったり、サイトマップを登録してみよう。
また、「Google Analytics」などのアクセス解析ツール(無料)を活用すれば、顧客行動を分析できるので、自社オンラインショップにとっての強みや足りないところが分かり、効率的な改善方法を見つけやすい。
目的に応じて物販サイトを活用する
ここまで自社サイトでのネット販売を想定して話をしてきたが、売上を早期に立てやすい方法として、大手通販サイト(Amazonや楽天市場など)への出店がある。大手通販サイトへの出店すれば、閲覧数は格段に上がる。ただし、ネット販売のみで大きな収益を上げたいということであれば検討すべきだが、あくまで副次的な利益を追求するのであれば、無理に出店する必要性は低い。というのも、大手通販サイトでは、他業種から参入する競争相手も非常に多く、同じ商品あるいは類似商品であれば、利用客のほとんどが最安値の店舗からの購入を考えるからだ。ネット販売をメイン事業にしている企業も多く、それらの企業と価格で競うには、最安値あるいはそれに近い値段設定をせざるをえなくなる。自社の知名度アップを目的に出品(出店)するというのであれば、その効果も期待できるが、単に収益を上げることが目的ならば費用対効果は低いため、あまりお勧めできない。
なお、レストランで提供している名物料理など他では販売していないオンリーワンで、お客様の心を掴むものであれば、販売効果は期待できる。しかしレストランで提供してる料理をネットショップで販売する場合は保健所から許可証が必要な場合があるので注意が必要。
今回の新型コロナウイルス拡大により、オンラインでの注文に対する需要は高まっており、今後もますますオンラインショップ利用は増加していくと予想されるので、またとないチャンスでもある。ぜひ、スポーツ施設もネット販売を活用して、新たな収入源を確保してほしい。
JECCICA特別講師 小宮山 真吾
EC得意分野/経営革新からIT戦略的活用
全国1位、全国高評価講師・講習全国商工会連合会「経営革新塾」あなたの売るを劇的に変える独自の実践型コーチングを取り入れクライアント問題解決から高い評価と実績。