モノが売れなくなった理由
ECサイトの売上改善を行う際、UI/UXの改善や広告・宣伝、ブランディングなどの視点でどうしたら売れるかを考えますが、その前にモノ・サービスが売れない理由、売れなくなった理由を明確にしてみることも重要だと考えています。
私は若い頃からファッションが大好きで、セレクトショップで販売もしていたこともあり、EC関連の仕事を行うようになってからは、ファッション系EC事業にも携わってきたため、ファッション市場の変化を強く実感しています。
そこで、ファッションという商材を例に、売れなくなった理由をあらためて考えてみました。
20年前、ユニクロなどの低価格ブランドの服とセレクトショップや百貨店で売られている服は、デザイン、シルエット、素材、すべてが異なっていました。はっきり言うと昔のユニクロの商品はダサかったのです。それゆえに「ファッショナブルではないと思われて恥ずかしい」というネガティブな意味で「ユニバレ」という言葉が使われていたと記憶しています。
オシャレな服は、ファッション誌で取り上げられるようなセレクトショップや百貨店のブランドでしか買うことができませんでした。
現在、黒の無地ニットやストレートのパンツなどのベーシックなデザインの商品は、百貨店においてある商品もユニクロや無印良品の商品も、素人にはほとんど区別ができないほど見た目は同じになっています。素材や作りなどは、この価格でこのレベルの商品ができるなんて。と驚くことさえもあります。
そして、これらの低価格で見た目の良いデザインの商品が、駅ビル、近所のショッピングモールで、もちろんネット通販でもいつでも気軽に購入できます。
このような状況において、低価格商品でもかまわないという人が増えたのは当然のことで、最近の人達は本物の価値が分からくなった。などと言う人は、逆に今の時代の価値観、マーケット環境を理解できていないのではと思います。
ネット普及によるモノ・サービスの低価格が売れなくなった要因と言われることが多いですが、低価格化はあくまでも現象の一つで、実際には、ネットの普及により人々が容易に得ることができる選択肢(情報、モノ、サービス、価値観)が供給過多とも言えるほど増えたため、目の前にある無数の比較対象の中でユニークさと優位性を即時に訴求できない商品・サービスが選ばれなくなったのです。
商品・サービス単体の視点で商品企画を考えるだけでなく、顧客が比較する対象の中に置かれた状態で選ばれる理由を作らなければいけません。
そしてその比較対象は同業態だけでなく、他の業態、商品・サービスも対象になり、選ばれる時と場所もこれまでよりも広く変化したことを認識することが大切です。
「若者の◯◯離れ」を売れない理由にしているうちは、昔は良かった的な思考停止状態。売れていた実績がある企業ほど、最近の低単価商品よりうちの商品は品質も高く、実績もある。だから売れる。という考えに縛られ、結果いい商品だけど売れない(選ばれない)という状況に陥る危険があります。
これまで上手くいった事や得てきた知識から一旦離れて、今の顧客をとりまく環境をあらためて研究・把握し、自社の商品が選ばれる理由を企画することが、売上の改善、新たな売上作りに必要なことだと考えています。