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成功企業の視点は違った─ワークマンと資さんうどんのスケール戦略を読み解く

小さくまとまらず大きく出る
 大切なのは「小さくまとまる」ことではなく、「どうスケールさせるか」を考えること。成長を遂げる企業は、そもそもの視点が違うのかもしれません。ワークマンと資さんうどんの経営陣の話を聞き、そのことを痛感しました。

 ワークマンは作業着からスタートし、機能性を強みに成長してきました。トレンドに左右されず、4〜5年売れ続ける商材を開発することで安定した販売を実現。さらに、流行を追わないからこそ、繁忙期を避けて工場に生産を依頼し、大量生産によるコスト削減を実現しました。その結果、高機能かつ低価格の商品を提供し続けてきたのです。

 そして近年、ワークマンプラスや#ワークマン女子を展開し、ブランドのイメージを一新。この戦略により、さらなる注目を集めました。

 特に#ワークマン女子の成功が秀逸だったのは、その裏側にある在庫が従来のワークマンと同じである点です。つまり、看板を変え、店舗の雰囲気を女性向けにリデザインし、コーディネート提案をすることで、同じ商品を別のターゲットに向けて販売する新たな売り先を確保したのです。

ワークマンcolorsで真逆の展開へ
 その後、ワークマンは「ワークマンColors」という新しい店舗を立ち上げました。この動きによって、ブランドの方向性が変わったように思います。参考にしたのは、SHEINなどのマーケティング戦略です。徹底した市場分析のもと、500個程度の少量生産で服を展開し、これまでとは異なるラインを生み出しました。

 この時、正直、僕は疑問に思いました。#ワークマン女子で効率よく売れているのに、なぜ「ワークマンColors」?

 #ワークマン女子での成功事例があるにもかかわらず、なぜ新しいラインを立ち上げる必要があったのか?

 ところが最近、ワークマンの執行役員・大内康二さんと話し、気づきました。ワークマンは、虎視眈々とカジュアルファッション市場を狙っていたのです。大内さんによれば、その流れが徐々に浸透し、#ワークマン女子でもオリジナル商品を作るようになったとのこと。

 なぜなら、売れることでデータが蓄積されるからです。そのデータを活用すれば、より精度の高い商品開発が可能になり、オリジナル商品を生み出す土台が整うのです。

#ワークマン女子終了の衝撃
 ここからが重要なポイントです。これらの商品が充実してきた最近、彼らはなんと「#ワークマン女子を無くしていく」と宣言しました。
 そして、その名前はワークマンColorsへと統合されていくのです。つまり、#ワークマン女子で培った女性向けカジュアルファッションの品揃えを、トレンドに敏感な旧ワークマンColorsの洋服と合わせ、ひとつのブランドへとまとめたのです。
 
戦略も明確です。少量生産のトレンドアイテムをアイキャッチにして消費者の目を引く。その一方で、実は#ワークマン女子で作られていた「長期間売れ続けるカジュアルアイテム」を安定して販売し、ここで利益を確保する仕組みを作り上げました。
 
この結果、トレンドカジュアルの新たなジャンルが誕生し、それはもはや作業着とは別のラインとして独立していくことになります。まさに、スケールを意識した流れと言えるでしょう。

資さんうどん、小さくまとまらない
 最近、話題を集めた「資さんうどん」も、スケールを意識した戦略を進めています。特に象徴的なのは、すかいらーくグループの傘下に入ったことです。これは業績不振によるものではなく、明確な成長戦略の一環でした。
 変化が始まったのは、2018年に佐藤崇史さんが社長に就任してから。資さんうどんは長年、「北九州の味」として親しまれてきました。しかし、その地元密着型の経営が、全国展開の足かせになっていたのも事実です。

 コンサル出身の佐藤さんは、まず社内の意識改革に着手。従業員との対話を重ねながら、強みである「出汁と特製麺」にフォーカスし、味の再現性を高めることで、全国展開への道を切り開いたのです。
どこでも同じ味を再現できる店運営

 また、どこでも同じ味を提供できる仕組みを整え、スケール戦略をさらに加速させました。
 その鍵を握ったのがデジタルの活用です。自動案内システムを導入し、待ち時間を短縮。オーダータブレットを活用することで業務の効率化を図りました。さらに、動画を活用した販促によって新商品の認知度を高め、スムーズな店舗運営を実現したのです。

 では、店舗の数が増えていくと、次に何が必要になるでしょうか。

 それは物流です。すかいらーくグループの傘下に入ることで、全国の物流や生産インフラを活用できるようになり、一気に拡大するための基盤が整いました。

「作業服の会社だからそれで十分」「地元の味だから全国では通用しない」。もし、彼らがそう考えていたら、今の成功はなかったでしょう。コアとなる企業価値があるからこそ、それをスケールさせることができる。

 多くの企業にも、その可能性が広がっています。適切な戦略と仕組みがあれば、その味は全国へ、さらには世界へと届くはずです。いざ、大海原へ。
今日はこの辺で。

JECCICA客員講師

JECCICA客員講師 石郷 学

(株)team145 代表取締役


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