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想定力を養うヒント

ペルソナマーケティングという言葉があります。もちろん皆さんご存知の通り、ある特定の人物像を「想定」して、その想定上の「仮想のお客様」をターゲットとして商品やサービスあるいはコンセプトなどを創りあげていくというマーケティング手法です。もちろんこれがいつも正しいとは限らないのですが、ペルソナマーケティングはかなり高い割合で効果的に働いている手法かと思います。またロングテールという言葉があります。これも皆さんご存知の通り非常に多岐に渡る細分化されたニーズやデマンドという意味で使われています。ファッション業界などでは、笹本の様なオジサンには理解しがたい=ある意味では一般的に見ればかなり突飛なブランドコンセプトでどんどん商品創りが行われています。そしてオジサンやオバサンから見れば「アリエナイっ」テイストのファッションが“若手女子”には大ウケしているなど例は山ほどあります。
当然ながら“若手女子“をターゲットとしたコンセプト創りや商品創り店づくりなどでは、最初からオジサンやオバサンは対象外の動物として切り捨てられています。さらに言えば明らかに”若手女子”向けの商品をオジサンが自己消費用のアイテムとして喜々として買い物をしている姿は世間一般として許されてはいないかと思います。(笑)

前述では“若手女子”という言葉を使いましたが、ペルソナマーケティングの中で考えれば  まだまだ曖昧な“属性”(=顧客群に共通する特徴)です。もちろんコンセプトや商品、店舗などの“商品”設計に際しては”属性“レベルの絞り込みでは不十分であり、さらに細分化してほとんど「特定の個人」ともいうべき人物像を作り上げてから、その「特定の個人」が持っているであろうライフスタイルや感性、あるいは嗜好や金銭感覚などを想定して、やっと「その人物に好まれるであろう”商品“」の開発にたどり着くというのが一般的なステップになるのではないでしょうか。

「特定の個人」に対して特化した「個別の“提案“」が、その特定の個人だけではなく、特定の個人と同様のあるいは類似のテイストやライフスタイルなどを好むお客様に支持され、結果として一定規模のマーケットを獲得した例は枚挙に暇がありません。先般JECCICAの会合にご登場頂いたハヤカワ五味さんの例などは「特定の個人」=自分という図式になるかと思いますが、ex.砂糖を使わずドライフルーツだの甘味だけで作ったケーキ屋さんやメルカリで活躍している作家さん、あるいは自分の子供のために有機溶剤を使っていない家具を販売する家具屋さんなど「こだわり」と呼ばれる諸々のポリシーに基づいて販売されているもののほとんどがこの図式の延長線上にあるかと思っています。本題からは若干離れますがマスマーケティングの限界を感じてから久しい昨今は、TVや雑誌あるいは大手百貨店の催事などでも ”C to C寄りのB”とでも表現すべきコンセプトやポリシーを持つ商材が以前にも増して活躍している様に思えます。

もう少し言えばマスマーケティングは言わずもがなですが、すでにお客様を“群”として捉えようとすること自体に限界が来ていることは周知の事実と言っても宜しいかと思います。「ひとりひとり」のお客様が「それぞれ」のライフスタイルや価値観を持ち、それぞれの価値観に対して「様々な満足の形」があり、商品やサービスを提供する販売者側はこれを汲み取って様々な満足の形を提供すべし。個=お客様ひとりひとりを見るべし なのです。
渋谷のファッションビルのカリスマ店員にしても、大手百貨店の外商さんにしてもお客様AさんとBさんに対しては異なる提案、異なる接客をしています。たった今目の前にいるひとりのお客様に対しての、そのお客様のためだけの提案であり、接客であり、最終的にはそのお客様だけへのクロージングになるはずです。たとえば子供のいる家と老夫婦の家とではリフォームの提案も異なるのは当然かと思います。従って予算も異なるしクロージングのキラーワードなども異なるはずです。仮に可動式の壁なので部屋のレイアウトを変更できるというストロングポイントを訴求するに際しては~/お子様の成長に合わせて/お孫さんまで皆さんが集まるときに/変な話ですが仮に介護が必要になった時でも/etc.~部屋のレイアウトを変更できますのごとくお客様ごとに使い分けるのは容易に想像して頂けるかと思います。提案やクロージングについては、「いくつかのパターン」に大別することはできるものの、どのパターンを選択するかについてはやはり「それぞれのお客様を見ながら個別に」対応することとなるでしょう。ここまでは読者の皆様にもご賛同頂けるかと思います。

一方ECには“属性”などのコトバや“平均”顧客単価や“平均”滞在時間、ページ群Aからページ群Bへの遷移率などの様々な指標があります。有益な言葉であり有益なデータではあるのですが、笹本がこれらを参考にする際に1つだけ留意していることがあります。それは、それぞれの数値やコトバなどについて「元々、意味を持つ指標になるのであろうか?」という点です。分かりやすい例で言えば、“平均“顧客単価は1万円でも実際には3千円と1万5千円の2極に、あるいは3極に分かれていた場合、1万5千円群のお客様と3千円群のお客様は、商品の選び方も、不安や疑問を持たれる点も、商品一覧ページから個別商品ページへの遷移率も平均PVも購買率もetc.・・・異なるのではないかと思うのです。高級な時計のお客様と高級なソファーのお客様では、それぞれ求める満足が異なるとは思いませんか。

いくつかの例を挙げたいと思います。例えばリピート来訪者率〇%という指標があったとして、何か月前までの来訪者を「リピーター」とカウントしているかについては全く留意されてない場合などがあります。多くのお客様が複数のセッション(来訪)を経た後にお買い上げ頂いているという事象が見受けられるのであれば、まずはお買い上げに至るまでに/ご決心頂くまでに大体どの程度の期間が必要かを把握する必要があると思うのです。ECのKPIからでは分らない場合にはリアル店頭での感覚値を参考にして、〇か月前までに訪れたお客様をリピーターとみなす という設定があって初めて「次なるヒント」が見えてくるのではないでしょうか。でもまだまだ考察が甘いかも・・・。最終的にはやはり「個」を見る努力をしなければ・・・・。

例えば笹本が宿泊予約サイトを利用する際、大きく分けて2つの購買パターンがあります。最終の新幹線の時間を超えて飲むこととなり当日泊という様な場合には「どこでもいいや」「寝るだけだし安けりゃいいや」的にほぼ即決。デバイスはスマホ。飲み会の途中ではホテルをじっくり選ぶ時間もなく、検索結果の次ページを見ることもなく、3分かけずに予約完了。結果ホテルに行ってみたら電気カーペットと毛布一枚で寝ろというホテルとは名ばかりの宿泊所だったり、ラブホテルだったりも。
多くの失敗した“予約”の経験があるので“事前の予約”の際には徹底的に調べつくします。空調は温度設定ができるのか強弱しかないのか~/~酔っ払って騒ぐ奴がいないエリアかどうかまで・・・数多くのホテルを比較し、部屋の写真や地図などをじっくりとチェックしてから場合によっては数日かけてようやく予約するという様な具合です。デバイスはPC。デスクワークや睡眠などの“快適さ”を念頭において“事前予約”する際には宿泊費と快適さのコスパを鑑みながらの選択なので、宿泊費が「多少高くても」快適さを優先する場合が多分にあります。求める満足が異なるのです。

笹本という同一の個人でもパターンの異なる予約=買い物行動をしているわけですが、上記の2パターンが存在している際に平均PVや平均滞在時間あるいはリピート来訪率、購買率などの指標がどこまでの意味を持つのか疑問に思います。当日泊予約の際にはサイトへの再来訪もせずPVは最小、購買率的には100%となる客であり、事前予約の際には数日かけての複数セッション、滞在時間もPVもたぶん10倍ではきかないでしょう。予約サイトから見ればPVを増長させ、セッション当りの購買率を低下させているユーザーのひとりとも言えます。
ヒートマップなども突き詰めて考えるとやはり全体像どまりかと思います。仮に100人の来訪者の内で会社案内を見た人は2人しかいなかったとします。会社案内へのリンクはユーザーがたどり着きにくい最下段にあり、ヒートマップが示唆する指標としては単純に考えれば「重要ではない」コンテンツ。でもとっても見にくい場所にあるリンクをわざわざ探して会社案内を見に行った人の人物像=「個」を考えると・・・実店舗に行ってみたいと思っているほどの優良顧客であったり、大口の引き合いを検討している“ビジネス“のお客様であったり、商品も価格も納期も「納得した後」に念のため売り手の信頼性をチェックしたいと思ったクロージング直前のユーザーであったり・・・。

他の様々な指標においても、【 切り捨てた少数派の方に優良顧客が含まれている可能性 】は少なくありません。直帰ユーザーでさえ優良顧客である可能性があるのです。例えば1点物の高級品などについて、高いけど欲しい/欲しいけど高いというステップで逡巡されているケースなどでは「まだ売れていない」ことを確認するために間隔をおいて商品ページに直行し直帰するという行動を繰り返すようなパターンが挙げられます。消費者としては自分自身が経験したことがある行動にも関わらず、平準化された指標を目の前にすると「お客様ひとりひとり」の姿を考えることを忘れてしまいがちになるではないでしょうか。
もちろんドラッグストアなど、ほぼ全てのお客様が同様のデマンドを持ち、商品価格帯も近く、同様の満足を期待している業種であれば平準化された指標はとっても有益です。一方で法人客と個人客、数千円のお菓子から数百万円の高級品など多岐に渡る商材を持つショップの場合には、様々な 様々な 様々なお客様像とニーズの「最大公約数的な部分」の分析のみに留めるのが適切かもしれません。一度アクセスログから離れてみませんか。お客様が見えてくるかもっ。笹本は数年前から実践中~♪

JECCICA客員講師

JECCICA特別講師 笹本 克

全国各地で有名ネットショップを輩出。自治体・関連団体にもEC関連の講演や講師を務め、DeNA、Yahoo!Japanショッピング事業部へのレクチャー、ドリームゲート起業講座の他、コンサルサイトの累計約600社、多業種でのコンサル実績も豊富。


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